発表

3A-032

社交不安が注意解放におけるバイアスへ与える影響
ー表情に着目してー

[責任発表者] 河原 剛:1
[連名発表者・登壇者] 佐藤 裕#:2, 境 泉洋:3
1:広島大学, 2:徳島大学, 3:宮崎大学


 【問題と目的】
 社交不安者における注意バイアスの特徴として,外界の脅威刺激へ優先的に注意を向けることが挙げられる(Gilboa et al.,1999)。伊里・望月(2012)は,注意バイアスを測定する従来の実験手続きでは先行刺激が,ターゲット刺激の提示前に消失するという問題を指摘している。これは自動的に注意の解放を生じさせている可能性があり,能動的な注意の解放におけるバイアス(以下,注意解放バイアス)の検討ができていない。
 本研究では大学生を対象として,社交不安が注意解放バイアスに与える影響を検討する。伊里ら(2012)を参考に,注意解放バイアスを測定可能なギャップ・オーバーラップ課題を本研究の目的に則したものに改変し用いる。
 【仮説】
 社交不安高群は,脅威刺激から能動的な注意解放の困難を示すと考えられる。よって,①社交不安高群では喜び表情と中性表情提示時より怒り表情提示時のギャップ効果が大きくなる②社交不安高群・低群において喜び表情と中性表情提示時のギャップ効果に差は見られない。一方で,社交不安高群は,社交不安低群に比べて怒り表情提示時のギャップ効果が大きい
 【方法】
実験参加者:スクリーニング調査において 社交不安に関するBFNE得点が上位25%の社交不安高群,下位25%の社交不安低群を実験参加者とした。
 さらに,実験実施直前に社交不安(BFNE),抑うつ(SDS)による質問紙を実施し,基準値から外れたデータは分析から除外した。その結果,分析の対象となったのは社交不安高群10名(男性3名,女性7名,平均年齢20.00±1.05歳)と社交不安低群6名(男性1名,女性5名,平均年齢20.33±1.03歳)であった。
実験:修正版ギャップ・オーバーラップ課題
 先行刺激には,男女2名ずつの怒り表情,喜び表情,中性表情を使用し,ランダムに提示した。ターゲット刺激としてドットを提示した。先行刺激を提示した後,ターゲット刺激の出現を予告するbeep音が鳴る。ギャップ条件では,先行刺激が消失し,ターゲット刺激が左右どちらかにランダムに提示される。また,オーバーラップ条件では先行刺激が消失しない点で異なる。beep音は,ギャップ条件における先行刺激の消失がターゲット刺激の出現の予告となることを統制するためのものである(Pratt et al.,1999)。実験参加者はターゲット刺激が左右どちらに提示されたかをキー押しで判断する。条件はランダムで行われ,怒り表情96回,喜び表情96回,中性表情96回の計288試行を実施した。全試行を3ブロックに分けた。


 【結果】
群間差:年齢,BFNE,SDSの各変数において対応のないt検定
を行った。BFNE,SDSに差が見られた(BFNE:t(14)=9.17,p<.000;SDS: t(15)=2.17,p=.002)。SDS得点に差が見られたことから,以降の分析ではSDSを共変量とした分析を行った。
修正版ギャップ・オーバーラップ課題:
 オーバーラップ条件における平均反応時間(ms)からギャップ条件における反応時間(ms)を引いた値をギャップ効果得点とした。ギャップ効果得点を従属変数とし,社交不安(高群・低群)×表情(怒り・喜び・中性)の2要因分散分析を行った。その結果,社交不安×表情の交互作用は有意でなかった(F(1.37,26)=1.98,p=.18)。また,社交不安,表情の主効果も有意でなかった(F(1,13)=.53,p=.48;F(1.37,26)=1.13,p=.32)。以上の結果をFigure1に示す。
 【考察】
 注意解放バイアスに関して,社交不安の高低,および表情間におけるギャップ効果得点の差が見られなかったことから,本研究の仮説は支持されなかった。
 本研究では,社交不安による群分けを行ったが,同時に抑うつの群間差が認められている。抑うつにおける注意解放バイアスを検討した伊里ら(2012)によると,抑うつ低群ではポジティブ刺激から能動的な注意の解放の困難がみられ,一方で抑うつ高群ではポジティブ刺激に対する能動的な注意の解放が有意に早いことが明らかにされている。これには抑うつにおけるポジティブ刺激からの回避が関連しているとされ,社交不安高群におけるポジティブ刺激への注意解放バイアスが相殺された可能性が考えられる。 【主な引用文献】
伊里綾子・望月聡(2012)感情喚起語からの注意解放におけるバイアスと抑うつ傾向の関連 感情心理学研究,19,81-89.
本研究は徳島大学研究倫理審査委員会の承認(受付番号:168)を得て実施している。

キーワード
社交不安/注意解放バイアス/ギャップ・オーバーラップ課題


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