発表

3A-026

被援助志向性とストレス,不安の関連について

[責任発表者] 日下部 典子:1
1:福山大学

問題と目的
 大学生のメンタルヘルスを考えるうえで,日常生活におけるストレス軽減は重要である。ストレス軽減の有効な方法の一つとしてソーシャルサポートがあげられるが,これまで大学生はもちろん幅広い年代を対象とした研究で,抑うつ傾向が高い人ほどソーシャルサポートが抑うつ傾向の軽減要因であるにもかかわらず,サポートを利用していないことが明らかとなっており,有効な介入が求められる。ところで,ソーシャルサポート希求行動にかかわる要因の一つに被援助志向性があり(田村・石隈,2001),「被援助への抵抗感」,「被援助への懸念」が高い人ほど,援助を求めにくいことが分かっている(たとえば日下部,2018)。大学生の場合,学業,進路,対人関係(友人・家族・教員との関係など)等様々なストレッサーがある。学内でのサポートの場として,たとえば学業の悩みであれば教員があげられる。また多くの問題に関して,学生相談で専門家であるカウンセラーの支援を受けることも可能である。しかし,友人,家族などサポートネットワークが充実しておらず,かつ専門家へのサポート希求行動をとることが難しい学生も多く存在する。このような状況を改善する一つに,サポート希求に関連のある被援助志向性を検討することは有用であると思われる。すなわち,被援助志向性への介入が,ストレス軽減おやうつ予防の一要因になると考えられる。しかし,被援助志向性に関わる要因は明らかになっているとは言い難い。そこで本研究では,被援助志向性にかかわる個人特性として,不安及びストレスコーピングを取り上げ,個人特性との関係を明らかにすることを目的とした。

方 法
 対象者 大学生52名(男性29名,女性23名),平均年齢20.77歳(SD=1.00)。
 実施時期 2019年4月。
 質問紙の構成 年齢,性別,生活形態,アルバイトをしているか,部活・サークル活動をしているか等をフェイスシートで尋ねた。被援助志向性尺度(日下部,2017)13項目を一部改変し,5件法で回答を求めた。ストレスコーピング尺度(日下部,2017)25項目について使用頻度を4件法で回答させた。不安についてはSTAI日本語版A-trait(清水・今栄,1981)20項目を用いた。

結果と考察
 回答者の67%が家族と同居しており,28%が一人暮らしで,47%が週1日以上アルバイトをしていた。心身の不調が起きた時の情報源として77%がインターネットと回答しており,「問題や気になる症状が起きた時の利用施設」としては「学生相談」との回答が23%と最も高く,次いで「総合病院(21%)」,「精神科や心療内科のクリニック(14%)」と続いた。「どこも利用しない」と回答した者の中で,その理由としては「近くにない」と「自分で何とかできる」が多かった。これらの回答から大学生が心理的な問題解決の場として学生相談を認識していることが明らかとなった。
 被援助志向性尺度の下位因子の平均値は,「第1因子 被援助への肯定」が3.20(SD=.66),「第2因子 被援助への抵抗」が3.00(SD=.90),「被援助への懸念」は3.47(SD=.47)であり,被援助への懸念が最も高いことが明らかとなった。またストレスコーピング尺度の下位因子の平均値は,「第1因子 問題解決行動」は1.80(SD=.59),「第2因子 サポート希求」は.92(SD=.87),「第3因子 回避行動」は1.84(SD=.51),「第4因子 気ぞらし」は1.52(SD=.72),特性不安の平均値は1.66(SD=.51)であった。以上の結果から,本研究の対象者は被援助への懸念が高いことから,ソーシャル・サポートを利用できていない可能性が示された。また,回避行動と問題解決行動の得点が高いことから,問題解決がうまくいかなかった場合,回避コーピングを選択し,その結果ストレス反応が高くなることが示唆されたが,この結果についてはさらに調査が必要であると考えられる。
 3尺度の各下位因子間の関係を明らかにするために,Pearsonの積率相関係数を算出した結果,被援助志向性尺度の「第2因子 被援助への抵抗」はコーピング尺度「第1因子 問題解決行動」との間に有意な弱い正の相関関係が,また被援助志向性の「第1因子 被援助への肯定」と「第2因子 被援助への抵抗」は特性不安との間に有意な中程度の正の相関関係があった。以上の結果から,自分で問題解決しようとする学生ほどサポート希求をしないことが示された。問題が自分の解決能力の範囲内である場合は特に問題ではないが,すべての問題がそのようにいくとは限らない。特に人間関係の問題など,自分だけでの解決が困難な場合,サポート希求しないことはストレス反応増大の可能性が考えられる。また特性不安と被援助志向性との間には関係があることが明らかとなったが,被援助への肯定と抵抗にも正の関係がみられるという矛盾した結果となり,不安が高いことが援助要請行動に結びつくことがあると同時に,行動回避と関連する,相反する行動との関連が示唆された。今回は調査対象者が少なかったこともあり,今後さらに調査をする必要がある。

引用文献
日下部 典子(2018).妊婦を対象とした被援助志向性尺度の開発 福山大学人間文化学部紀要,18,76-82.
田村 修一・石隈 利紀(2001).指導・援助サービス上の悩みにおける中学校教師の被援助志向性に関する研究-バーンアウトとの関連に焦点を当てて- 教育心理学研究,49,438-448.

キーワード
被援助志向性/ストレス/特性不安


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