発表

3A-024

「ダメ。ゼッタイ。」ではなぜダメか
―ゲーム障害の子供たちはなぜ我々の支援を嫌がるのか―

[責任発表者] 三原 聡子:1
[連名発表者・登壇者] 原田 隆之#:1
1:筑波大学

問題と目的
 インターネットの急速な普及により,オンラインゲームへの嗜癖は各国で深刻な問題となりつつある。 Mihara& Higuchi(2017)によると,各国のゲーム障害の有病率は0.7%~27.5%にのぼっている。こうした各国におけるネット嗜癖問題の深刻化をうけ,WHO(世界保健機構)は2019年5月の世界保健総会において,ICD-11においてゲーム障害を新たに診断基準に含めることを検討している。わが国においても,ネットの使用時間の長時間化が指摘されており,平成29年の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると(内閣府,2017),インターネットの一日の平均使用時間は小学生で97.3分,中学生では148.7分,高校生では213.8分インターネットを使用していることが報告されている。
こうした青少年におけるインターネット使用の長時間化に伴い,オンラインを使用したゲーム障害の問題も増加していくことは十分に予測される。最近のゲーム障害に関する脳画像研究では,ゲーム障害者においては脳神経細胞の様々な部位が死滅するという研究(Zhou Y, et al)や,ゲーム障害の期間が長くなればなるほど脳神経細胞の死滅が進み,神経細胞同士の情報伝達にも障害をきたすようになるといった研究(Yuan K, et al. 2011)も出されており,ゲーム障害に陥った者への早急な介入が求められる。しかし,他の物質などの依存は「否認の病」といわれているように,ゲーム障害に陥った者においても,ゲームをすると楽しくなるから(正の強化)というよりも,ゲームをしないと嫌な気持ちになるから(負の強化)によってゲームをし続けている状態に陥ることが明らかになってきている。すなわち,ゲーム障害に陥った者がその解決に向けて自ら相談機関に出向くことができなかったり,有効な情報を自身で収集したりできないというケースも増えていくことと推察される。このような問題とともに今後増加していくと予測されるゲーム障害者の介入と治療に関しては,家族をはじめとする周囲の大人の関与が大きな影響をもたらすと考えられる。
そこで本研究では,一般の中高生を対象に質問紙調査を行い,どのような心理的な要因が,自身のゲーム障害を認めさせなくするのか,また,周囲の大人からの援助を拒否させるのかについて調査・検討した。
方 法
調査協力者 関東近郊の中学校および高等学校に通学中の中高生500名を対象として調査を実施した。性別は,男性が52.3%を占めていた(年齢=17.0, SD=3.30)。
測定内容・手続き ゲーム障害問題への援助要請を阻害する要因に関する質問紙が存在しないことから,既存の物質使用障害者に対する援助要請阻害要因に関する質問紙から,ゲーム障害に該当しそうな質問項目を抽出し,依存に関する専門家である臨床心理士3名で選別を実施した。質問項目は「ゲーム障害や依存症に対する偏見」「ゲームへののめりこみ」「身近にゲームの過剰使用者が存在すること」といったカテゴリーに分類された。それらの質問項目を用いて,関東近郊の大学に通学中の大学生150名を対象として質問紙による予備調査を実施した。既存の変化への動機づけ1SOCRATESの項目と関連性の見られた質問項目は43項目であった。このように抽出された質問項目を用いて本調査を実施した。本調査では,一般中高生を対象として,本人のネット嗜癖状態の程度について,Diagnostic Questionnaire(DQ;Young, 1998)の邦訳版(久里浜医療センター,2011)を用いて尋ねた(8項目2件法)。また,ゲーム障害問題に関する援助疎外要因に関する質問紙を38項目調査した。質問内容としては「ゲーム障害はだらしない人がなるもので自分は違う」「自分をゲーム障害と認めたら人生の落後者である」「日常生活の何よりもゲームをプレイすることやゲームに関することを優先する」「ゲームを使用しすぎたことで,遅刻や欠席など日常生活に問題が生じたことがある」「自分の親または兄弟もオンラインゲームが大好きだ」といった38項目について(4件法)を尋ね,本人のゲーム障害に対する援助要請阻害要因について確認した。
結果と考察
 ゲーム障害の援助疎要因に関して「ゲーム障害はだらしない人がなるもので自分は違う」「自分をゲーム障害と認めたら人生の落後者である」「日常生活の何よりもゲームをプレイすることやゲームに関することを優先する」「ゲームを使用しすぎたことで,遅刻や欠席など日常生活に問題が生じたことがある」「自分の親または兄弟もオンラインゲームが大好きだ」すべての項目に関して平均値を算出し,そのうえで平均値よりも高い場合には高群,低い場合には低群として分割した。そして,DQの得点を参加者内要因,本人のゲーム障害に対する援助支援疎外要因を参加者間要因(高群,低群)とする2要因混合計画分散分析を行った。
分析の結果,ゲーム依存度が高い者ほどゲーム障害に対する偏見が援助要請を阻害することがあきらかとなった
この結果,今後,ゲーム障害の予防啓発においても,ゲーム障害に関する偏見を助長しないことが重要であることが示唆された。

キーワード
ゲーム障害/援助要請/嗜癖


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