発表

3A-023

ASDとADHDを併せ持つ大学生の発達障害困り感の特徴

[責任発表者] 原田 新:1
1:岡山大学

【問題と目的】
 ここ5年で高等教育機関における発達障害(診断書有り)の学生数は,2722名から6047名になるなど,飛躍的に増加しており(日本学生支援機構,2015,2019),発達障害学生に関する研究も活発に行われつつある。他方,発達障害を重複して併せ持つ学生数も,ここ5年で289名から886名と3倍以上の増加が見られるが(日本学生支援機構,2015,2019),発達障害を併せ持つ学生の研究についてはほぼ見られない。今後さらに増えるであろう発達障害の診断を複数有する学生への支援について考えていく上で,それらの学生の特徴に関する知見の蓄積が望まれる。本研究では,ASDとADHDを併せ持つ学生の発達障害困り感の特徴について,発達障害の診断を単独で有する学生や,発達障害の診断の無い学生との比較から検討する。
【方法】
(1)調査協力者および時期:(a)何らかの発達障害の診断を有する大学生100名(男性50名,女性50名,18~22歳,平均年齢20.05歳,SD=1.02)。調査時期は2018年12月であった。 (b)発達障害の診断の無い大学生259名(男性106名,女性153名,18~22歳,平均年齢18.87歳,SD=.67)。調査時期は2017年12月であった。
(2)測定尺度:(a)ADHD困り感質問紙(高橋,2012):「集中力維持困難」3項目,「不注意」4項目,「衝動性」4項目,「プランニング能力不足」2項目,「整理整頓能力不足」2項目,「睡眠リズム障害傾向」2項目,「不器用」7項目,4件法。 (b)ASD困り感質問紙(高橋,2012):「対人的困り感」10項目,「自閉的困り感」15項目,4件法。
【結果と考察】
 まず調査協力者を,発達障害の診断状況により,(1)ASD単独群(N=46),(2)ADHD単独群(N=25),(3)ASD・ADHDの併存群(以下,「併存群」)(N=18),(4)ASD・ADHD以外(SLD・DCDなど)の発達障害単独群(以下,「その他単独群」)(N=11),(5)診断無し群(N=259)の5群に分類した。その上で,ADHD困り感,ASD困り感の下位尺度ごとに,各群間での一元配置の分散分析を実施したところ,全ての下位尺度において群の主効果が有意であった(Table1)。そこで,Tukey法による多重比較を行った(Table1)。
Table1の多重比較結果を参照すると,ADHD困り感については,多くの下位尺度で,「ADHD単独群」と「併存群」が,それ以外の群(特に「診断無し群」や「ASD単独群」)よりも有意に高い結果が示された。「併存群」もADHDの診断を有している学生たちであることを考えると,ADHD困り感については,ADHDの診断を有している学生が,より強く感じやすい傾向にあることが示唆された。
一方,ASD困り感については,まず「対人的困り感」では「併存群」のみが「診断無し群」よりも有意に高い結果が示された。また「自閉的困り感」では「併存群」,「ASD単独群」,「ADHD単独群」が「診断無し群」よりも有意に高く,さらに「併存群」は「その他単独群」よりも有意に高い結果が示された。この結果からは,ASD困り感については,ASDとADHDを併存して有している学生が,より強く感じやすい傾向にあることが示唆された。
 本研究での「併存群」は18名と少ないため,以上の結果をもって明確な結論を出すことはできないが,「併存群」の学生は,大学生活において特にASD困り感をより感じやすい可能性が示された。上述の通り,日本学生支援機構(2019)の高等教育機関における最新調査結果では,発達障害(診断有り)の学生6047名の内,重複して診断を有する学生は886名であり,その割合は14.7%と決して高い数値とはいえない。しかしながら,ASDとADHDの併存率については,例えばHofvander et al.(2009)の43%,Oerlemans et al.(2014)の47.8%など,4割以上の割合であることを報告する研究も見られる。そのため,発達障害学生と関わる際には,発達障害の併存の可能性および単独の発達障害よりも併存の発達障害の方が,より困り感を強く有する可能性も視野に入れつつ,支援を行っていく必要があるであろう。

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