発表

2D-036

援助要請へのセルフスティグマ尺度の作成

[責任発表者] 永井 智:1
[連名発表者・登壇者] 木村 真人:2, 飯田 敏晴:1
1:立正大学, 2:大阪国際大学

目的
 これまで援助要請の促進・抑制因として,様々な要因が検討されてきた。中でも最も重要な変数は,援助要請における利益の予期であることが明らかになっているが,専門家に対する援助要請においては,援助要請する事へのセルフスティグマ (Vogel et al., 2008)も,援助要請の重要な抑制因であることが明らかになっている (Li et al., 2014)。
 しかし,相談する事へのセルフスティグマは,専門家への援助要請に限ったことではないと考えられる。人は,家族や友人など,インフォーマルな対象への援助要請においても,助けを求めることによる自尊感情の低下を経験する可能性がある。そこで本研究では,友人や家族などインフォーマルな対象へ援助要請をする際のセルフスティグマを測定する尺度を作成することを目的とする。
方法
 調査手続き 株式会社クロスマーケティングが保有する大学生モニターに対するWeb調査を実施した。調査項目には,努力の最小化を検出するため4つのダミー項目を含め,すべての項目を通過した300名を有効回答とした。
 調査内容 ①相談することへのセルフスティグマ 第一著者が定義にもとづいて15項目を作成し,第二著者および第三著者がいずれも適切であると判断した14項目を尺度項目候補として用いた (5件法)。②悩みの経験 木村・水野 (2004)による大学生の悩み6項目を用いた (5件法)。③援助要請意図 悩みの経験で提示した6つの悩みについて,友人および家族への援助要請意図を尋ねた (5件法)。④利益・コストの予期 永井・鈴木 (2018)による,援助要請の利益・コスト尺度から,援助要請実行の利益である「ポジティブな結果」を,永井 (2016)による中学生用利益・コストの予期尺度から「自己評価の低下」を用いた (5件法)。⑤被援助志向性 田村・石隈 (2001)による被援助志向性尺度を用いた (5件法)。
結果
 相談することへのセルフスティグマ尺度の予備項目である14項目に対し,主成分分析を実施した結果,14項目すべてが単一の因子に負荷する1因子解が最も適切であると判断された。因子負荷量の絶対値は.87~.59であり,因子寄与率は58.57%であった。そこで14項目すべてを相談することへのセルフスティグマ尺度の項目として採用した (α=.94)。また,尺度得点の男女差を比較したところ,男性の方が女性よりも平均値が高かった。 (Mean=2.46, SD=0.90 vs. Mean=2.23, SD=0.82, t (298)=2.37 p<.05, d=0.27)
 次に,尺度の妥当性を検討するため,相談することへのセルフスティグマと各得点との相関係数を算出した。その結果 (Table1),友人への援助要請意図,家族への援助要請意図,被援助志向性尺度における援助の欲求と態度,援助関係に対する抵抗感の低さ,利益・コストの予期におけるポジティブな結果との間に負の,利益・コストの予期における自己評価の低下との間に正の相関を示した (全てp<.01)。
 最後に,友人への援助要請意図に対し,相談することへのセルフスティグマ,ポジティブな結果,悩みの経験を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果,先行研究と同様,ポジティブな結果と悩みの経験は援助要請意図に対して正の関連を示し,相談することへのセルフスティグマは援助要請意図に対して負の影響を示した (全てp<.01)。
考察
 分析の結果,本研究で作成した尺度は1因子で援助要請へのセルフスティグマを構成することが確認された。また,援助要請意図や被援助志向性,利益・コストの予期と予測通りの関連を示したことから,本尺度は一定の妥当性も有していると考えられる。
 特に,重回帰分析において,本研究で作成したセルフスティグマは,援助要請における利益の予期 (ポジティブな結果)の影響を統制した状況でも,友人への援助要請意図に負の影響を持つことが示されたことは,援助要請におけるセルフスティグマの重要性を示すものであると考えられる。
付記
 本研究は科研費補助金(基盤C 18K02093)の助成を受けて実施された。

キーワード
援助要請/セルフスティグマ/利益・コストの予期


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