発表

2D-033

「あたたかい言葉かけ」がレジリエンスに与える影響

[責任発表者] 徳田 文美:1
[連名発表者・登壇者] 杉若 弘子:2
1:同志社大学, 2:同志社大学


 レジリエンスとは,精神的,情緒的,行動的な柔軟性や調節によって,困難で挑戦的な体験に適応する過程や結果である(APA,2013)。レジリエンスを高める要因には,自尊感情,ストレス耐性,ソーシャルサポートなどがあるが,中でもコミュニケーション能力はレジリエンスに影響する重要な要因とされている(小林・渡辺,2017:APA, 2011)。
 本研究に先立つ大学生135名を対象にした予備調査の結果,大学生用レジリエンス尺度(齊藤・岡安,2012)の得点は,青年用アサーション尺度(玉瀬ら,2001)に含まれる「関係形成」因子やコミュニケーションスキルENDCOREs(藤本・大坊,2007)を構成する「関係調整スキル」ならびに「表現力スキル」の得点と強い相関を有することが明らかになった(r = .43 ~.59)。つまり,レジリエンスは,コミュニケーション能力の中でも特に良好な人間関係を形成し,維持するスキルとの関係が強いことが示唆された。
 そこで本研究では,他者に対して励ましや好意を伝える「あたたかい言葉かけ」を促進することにより,レジリエンスが高まるかを検討した。

 方 法
実験参加者 大学生21名(男性3名,女性18名;平均年齢20.4歳,SD =1.50)が実験に参加した。
実験計画 群(トレーニング群 vs 統制群)×測定時期(第1セッション,第2セッション,第3セッション)の2×3の混合計画であった。
従属変数 大学生用レジリエンス尺度(齊藤・岡安,2012)青年用アサーション尺度(玉瀬ら,2001)とコミュニケーション尺度ENDCOREsに含まれる「表現力スキル」(藤本・大坊,2007)を,各セッション開始時に測定した。また,セッション3終了後には,全参加者に,実験期間中のコミュニケーション能力向上のための独自の取り組みの有無を尋ねた。
手続き 参加者は,トレーニング群(n =11)と統制群(n =10)にランダムに配置された。実験期間は2週間であり,トレーニング群においては,初日,8日目,15日目の計3回,実験室において2~6人のグループワーク形式のセッションを実施した。第1セッションでは,「あたたかい言葉かけ」の定義と効果,実践のポイントに関するパワーポイントを用いた心理教育の後,ロールプレイによるリハーサルを行った。「あたたかい言葉かけ」とは,相手の気持ちに配慮しつつ自分の気持ちを伝える(「ほめる」「励ます」「感謝する」)ことである。セッションの最後に,日常場面における「あたたかい言葉かけ」の実践を,実験参加中の2週間に取り組むホームワークとして呈示した。第2セッションでは,先立つ1週間を振り返り,ホームワークを実行する際に困った場面について話し合った。第3セッションでは,2週間を振り返り感想を共有した。統制群では,従属変数の測定のみ行った。

 結 果
 測定指標の平均値を対象に,群(2)×測定時期(3)の分散分析を行った。その結果,レジリエンス尺度の合計得点において交互作用が有意であった(F(2,38)= 4.43,p < .05)。下位検定の結果,トレーニング群では,第2,第3セッションの得点が第1セッションに比べて有意に増加し(いずれもp < .05),第3セッションにおいては,統制群を有意に上回った(p < .05)(Figure 1)。トレーニング群におけるホームワーク実行回数とレジリエンス得点には顕著な対応は見られなかった。
 また,アサーション尺度に含まれる「説得交渉」因子の得点(F(2,38)= 3.45,p < .05)とENDCOREs「表現力スキル」得点(F(2,38)= 5.84,p < .01)において,測定時期の主効果が有意であった。下位検定の結果,両群ともに「説得交渉」得点は第3セッションの得点が第1セッションの得点よりも有意に増加し,「表現力スキル」得点は第2,第3セッションの得点が第1セッションよりも有意に高かった(いずれもp < .05)。

 考 察
 本研究では,他者への「あたたかい言葉かけ」を促す介入を実施したトレーニング群において,レジリエンス尺度の合計得点がセッションの進行とともに上昇し,最終第3セッションにおいては統制群との間に有意差がみられた。つまりこの第3セッションにおけるレジリエンス得点の群間の有意差は, 2週間の継続的な実践によってもたらされたといえる。
 また,ホームワークの実行回数とレジリエンス得点には顕著な対応は見られず,今回のレジリエンス得点の変化には,言葉かけの実践以外の要因も影響したと考えられる。本研究では,グループワーク形式のセッションによってロールプレイや話し合いの過程で他の参加者と交流することができた。他者との意見交換による,対人関係に対する新たな視点の獲得もレジリエンスの増進に効果的に働いた可能性がある。

キーワード
レジリエンス/コミュニケーション能力


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