発表

2D-032

ストレス体験の意味づけがストレス後成長とアイデンティティに与える影響

[責任発表者] 出井 壮二郎:1
[連名発表者・登壇者] 津川 律子:2
1:日本大学, 2:日本大学

目 的 ストレス後成長とは,ストレス体験を機に遂げたと感じる成長と言われている。宅(2005)は,体験の意味づけがストレス後成長を促す要因の1つであることとストレスを体験した領域で意味づけが与える影響が異なることを示している。山田(2016)は死別経験後成長感に関する研究において,苦しい体験の回避がその後の成長を促す要因になる可能性を示唆している。堀田(2013)は外傷後成長と挫折体験を通じたアイデンティティの変容では,意味づけの与える影響が異なることを示している。しかし,ストレス体験の意味づけからストレス後成長とアイデンティティの関連をストレス体験領域ごとに検討した研究はまだない。本研究では,体験の回避を取り入れたストレス体験の意味づけから,ストレス後成長とアイデンティティにおける差異を明らかにすることを目的とし,以下の仮説を立てた。仮説①体験の回避はストレス後成長とアイデンティティに関連がみられる。仮説②ストレス体験の意味づけがアイデンティティに与える影響は領域ごとに異なる。加えて,ストレス体験の意味づけが与える影響はストレス後成長とアイデンティティで異なる。
方 法 【分析対象】大学生215名に対して質問紙調査を実施,回答の不備またはストレス体験領域の選択がその他であった者を除外した173名(男性83名,女性90名,平均年齢20.17歳)。【使用尺度】ⅰ.ストレス体験領域を選択するチェックボックス:先行研究(宅,2005)を参考に作成。ⅱ.ストレス体験に関する自由記述。ⅲ.ストレス体験に対する意味の付与尺度(宅,2005)ストレス体験に対する意味づけを測定する尺度(13項目)。ⅳ.日本語版Acceptance and Action Question
naire-Ⅱ 7項目版《AAQ-Ⅱ》(嶋ら,2005):体験の回避を測定する尺度,項目の文章を一部変更(7項目)。ⅴ.ストレス体験をきっかけとした自己成長感尺度《ストレス後成長尺度》(宅,2005):ストレス体験後の成長感を測定する尺度(30項目)。ⅵ.多次元自我同一性尺度《MEIS》(谷,1997a;199
7b;1998;2001):自我同一性の感覚を測定する尺度(20項目)。
結 果 各尺度間のPearsonの相関係数を求めた。結果はTable1に示す。分析対象者のストレス体験領域を自分・家族・学校・人間関係の4領域に分類した。各領域別にストレス後成長を基準変数,ストレス体験に対する意味の付与尺度とAAQ-Ⅱを説明変数とした重回帰分析を行った。結果は,領域:家族(β=
.58,p<.001)で,出来事の持つメッセージ性のキャッチに正の影響がみられた(β=.58,p<.01)。領域:学校(β=.37,
p<.001)で,出来事を経験した自己への評価にて正の影響がみられた(β=.40,p<.05)。領域:人間関係(β=.65,p<.001
)で,ポジティブな側面への焦点づけに正の影響(β=.45,
p<.01),出来事を経験した自己への評価に正の影響がみられた(β=.24,p<.05)。各領域別にMEISを基準変数,ストレス体験に対する意味の付与尺度とAAQ-Ⅱを説明変数とした重回帰分析を行った。結果は,領域:家族(β=.26,p<.05)で,出来事の持つメッセージ性のキャッチに正の影響がみられた(β=.60,p<.01)。領域:学校(β=.26,p<.05)で,体験の回避に負の影響がみられた(β=-.36,p<.05)。領域:人間関係(β=.42, p<.001)で,体験の回避に負の影響がみられた(β=-.57,p<.001)。
考 察 各尺度の相関からAAQ-Ⅱとストレス後成長間で直接的な関連はみられなかったが,ストレス後成長の要因となるポジティブな側面への焦点づけにおいて負の相関がみられた。AAQ-ⅡとMEISの間にも負の相関がみられ,仮説①の一部が支持された。また,ストレス後成長とアイデンティティ間に弱いながらも正の相関がみられた。加えて,ストレス後成長はMEISの下位因子である対自的同一性・心理社会同一性との間に正の相関がみられた。
 ストレス体験の意味づけが与える影響は,AAQ-Ⅱが学校・人間関係領域においてMEISに負の影響を与えていることが明らかになった。つまり,ストレス体験への感情や思考を回避することは,ストレス体験の良い面に注意を向けにくくなり,アイデンティティの感覚を妨げることが考えられた。体験の回避において先行研究と異なる結果になったのは,先行研究と異なる尺度を用いたためであると考えられた。また,ストレス体験の意味づけがアイデンティティに与える影響は,領域ごとで異なる傾向がみられた。加えて,ストレス後成長とアイデンティティでは,ストレス体験の意味づけが与える影響が異なることが示唆され,仮説②が支持された。
 以上のことから,両概念のメカニズムは異なるが,相関関係やストレス体験に対する意味づけが与える影響において,関連する傾向が部分的みられた。つまり,両概念は近接する概念であることが示唆された。

キーワード
ストレス後成長/アイデンティティ/意味づけ


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