発表

2D-031

学業ストレス状況のコーピング継時的変化に及ぼす楽観性の影響
条件付き潜在成長モデルによる試験前4時点データの分析

[責任発表者] 合澤 典子:1
[連名発表者・登壇者] 大森 美香:1
1:お茶の水女子大学

目 的
 楽観性は,ストレス状況における精神的健康の良好さと関連することが報告されている(Seligman, 1991)。しかしながら,楽観性がストレス対処過程(認知的評価やコーピング)に及ぼす影響については,一貫した知見が得られておらず,ストレス状況下での楽観性の働きについてのメカニズムの解明は,引き続き検討すべき課題であるといえる。これまでに,楽観性とストレス対処過程の検討については,横断的研究の蓄積があるものの,縦断的検討は不十分であり,楽観性がどのように長期的にストレス対処過程と関わり,精神的健康の良好さに寄与しているかは明らかではない。
 ところで,ストレス状況における対処については,状況のコントロール可能性によって,適切なコーピングが異なると考えられている(Lazarus et al., 1984)。それゆえ,ストレス状況を特定した上で,対処過程の関連について検討することが必要である。
 本研究では,高校生の学業ストレス状況に焦点を当てて,ストレス対処過程を縦断的に調査し,楽観性の影響を検討することとした。試験は,皆が同様に経験する状況であるため,ストレス対処過程の個人差に焦点を当てることができると考える。
 本研究では,試験1週間前におけるコーピング(問題焦点型,情動焦点型,回避逃避型)の4時点にわたる継時的変化と,楽観性の影響を検討することを目的とした。楽観性は,問題焦点型コーピングの増加,情動焦点型コーピングの減少,そして逃避回避型コーピングの減少と関連するだろうと予想した。

方 法
・対象者:公立高校の高校生男女257名が調査に参加した。
・調査時期: 2016年10月(Time 1),11月(Time 2),2017年5月(Time 3),9月(Time 4)の4時点(試験の1週間前)で質問紙調査を実施した。
・使用尺度:
 楽観性 日本語版楽観性尺度(坂本・田中, 2002)を用いて,Time1において測定した。
 コーピング 大学生用コーピング尺度(尾関ら, 1994)を使用した。下位尺度は,問題焦点型,情動焦点型,逃避回避型であり,Time 1~Time 4の4時点で測定した。
・分析手法:楽観性が,コーピング(問題焦点型,情動焦点型,回避逃避型)の変化(Time 1 - Time 4)に及ぼす影響を検証するために,条件付き潜在成長モデルを用いて分析を行った。分析には,Amos ver. 24を使用した。

結 果
 条件付き潜在成長モデルを用いて,コーピングの継時的変化に及ぼす楽観性の影響を検討した。
 仮説モデルでは,楽観性から切片と傾きにパスを設定した。切片と傾き(双方とも潜在変数)から,4時点の各コーピング(観測変数)にパスを設定した。潜在変数である切片と傾きから,4時点のコーピングへパスを設定した。切片からコーピングへのパスは係数1とし,傾きからコーピングへのパスは,0, 1, 2, 3に固定した。
【問題焦点型コーピングの継時的変化と楽観性の関連】
楽観性から切片への有意なパスが認められたが(.16, p < .01),楽観性から傾きへのパスは有意ではなかった。問題焦点型コーピングについては,楽観性が高い者ほどTime 1における問題焦点型コーピングの採用が高いという結果が得られた。モデルの適合度は,カイ二乗値 = 9.82, df = 7, p = .20, CFI = .98, RMSEA = .040であった。
【情動焦点型コーピングの継時的変化と楽観性の関連】
楽観性から切片への有意なパスと(.47, p < .01),傾きへの有意なパスが認められた(-.05, p < .05)。情動焦点型コーピングについては,楽観性が高い者ほどTime 1における情動焦点型コーピングの採用が高く,さらにTime 1からTime 4にかけて情動焦点型コーピングの採用が減少していく傾向が認められた。モデルの適合度は,カイ二乗値 = 9.38, df = 7, p = .23, CFI = .99, RMSEA = .036であった。
【回避逃避型コーピングの継時的変化と楽観性の関連】
楽観性から切片に対して有意なパスが確認されたが(.16, p < .01),傾きへのパスは有意ではなかった。楽観性が高い者ほどTime 1における回避逃避型コーピングの採用が高い傾向が認められた。モデルの適合度は,カイ二乗値 = 7.41, df = 7, p = .39, CFI = .99, RMSEA = .015であった。

考 察
 本研究では,学業ストレス状況下のコーピング変化と,それに対する楽観性の影響を検討した。楽観性の高い者はストレス状況の初期段階(Time 1)において,問題焦点型,情動焦点型,回避逃避型のすべてのコーピングを用いる程度が高いことが確認された。更に,情動焦点型コーピングでは,楽観性が継時的変化にも影響を与えており,楽観性の高い者は,情動焦点型の採用を減少させていくことが明らかとなった。試験という状況を経験して慣れていくことにより,楽観性の高い者は情動に目を向けるコーピングに頼らなくても対応できるように変化したと推測される。
 楽観性と精神的健康の良好さの関連の背後にあるメカニズムについては,ストレス状況の初期段階からすべてのコーピングを用いること,そして情動焦点型コーピングの減少が関係することが示唆された。
(利益相反:申請すべきものなし)

キーワード
楽観性/コーピング/条件付き潜在成長モデル


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