発表

2D-029

自我同一性地位および友人関係満足感,対人ストレス・コーピングの関連性

[責任発表者] 白石 萌実:1
[連名発表者・登壇者] 津川 律子:2
1:日本大学, 2:日本大学

目 的 友人関係は,Eriksonが提唱したアイデンティティの確立に影響すると言われている。友人関係に満足するためにはストレスに対処する必要もあり,対人ストレス・コーピングと友人関係には関連があることが先行研究にて示されている(坂田・松田,2016)。しかし,対人ストレス・コーピングと自我同一性地位について検討した研究は見当たらない。そこで本研究では,自我同一性地位と友人関係の満足感,ならびに対人ストレス・コーピングについて検討を行うことを目的とする。先行研究を踏まえ,次に仮説を立てた。仮説1:自我同一性達成地位の者は,他の地位に比べ,友人関係満足感が高い。仮説2:友人関係満足感が高い者は低い者に比べ,ポジティブ関係コーピングの使用頻度が高い。仮説3(1):同一性達成地位の者は,他の地位に比べ,ポジティブ関係コーピングの使用頻度が高い。(2):同一性拡散地位の者は,他の地位の者に比べ,ネガティブ関係コーピングの使用頻度が高い。
方 法 2018年11月,大学生345名を対象とし,質問紙調査を集団実施した。有効回答数は313名であり,その内男性146名(平均年齢20.60歳,SD=1.35),女性167名(平均年齢20.47,SD=1.55)であった。使用尺度1:フェイスシート(調査の目的,注意事項,同意,性別,学科,年齢)。2:自我同一性地位判別尺度(加藤,1983):現在の自己投入(4項目),過去の危機(4項目),将来の自己投入(4項目)の3つの因子の尺度得点によって自我同一性地位を判定する尺度。3:対人ストレス・コーピング尺度(加藤,2000):ポジティブ関係コーピング(16項目),ネガティブ関係コーピング(10項目),解決先送りコーピング(8項目)。4:友人関係満足感尺度(加藤2001):6項目。
結 果 自我同一性地位尺度における得点を3変数ごとに平均値と標準偏差を算出したところ,加藤(1983)の結果と比較すると,本データでは加藤よりも約2点全ての変数において得点が低く,加藤による分類方法に従って自我同一性地位を分類すると,著しく偏りが出ると判断した。そこで,自我同一性地位判別尺度の3変数の得点に基づき,K-means法によるクラスター分析を行った結果,最も加藤の分類基準に近い4クラスターが得られた。仮説1を検証するために,自我同一性地位を独立変数とし,友人関係満足感を従属変数とした1要因4水準の分散分析を行ったところ,3群間に有意な差がみられた(F(3,309) = 4.16,p<.01)。Bonferroni法による多重比較を行った結果,早期完了型―モラトリアム型(t = 1.29,p<.05),早期完了型―同一性拡散型(t = 1.65,p<.05)の間に有意差がみられた。仮説2を検証するべく,友人関係満足感の高群と低群にポジティブ関係コーピングに差があるかどうかを確認するべくt検定を行ったところ,0.1%水準で有意な差があった(t(311)=4.65,p<.001)。また,友人関係満足感の高群と低群にポジティブ関係コーピングに差があるかどうかを確認するべくt検定を行ったところ,0.1%水準で有意な差があった(t(311)=-3.62,p<.001)。仮説3を検証するために,自我同一性地位(同一性達成型・同一性拡散型・モラトリアム型・早期完了型)を独立変数とし,ポジティブ関係コーピング得点を従属変数とする1要因4水準の分散分析を行った。その結果,0.1%で有意であった(F(3,309)= 9.53,p<.001)。その結果を図1に示した。多重比較にはBonferroni法を使用した。その結果,早期完了型―同一性拡散型,モラトリアム型―同一性達成型,同一性拡散型―同一性達成型の間に有意な差がみられた(早期完了型―同一性拡散型t=3.78,p<.05;モラトリアム型―同一性達成型t=-4.64,p<.01;同一性拡散型―同一性達成型t=-6.93,p<.001)。自我同一性地位(同一性達成型・同一性拡散型・モラトリアム型・早期完了型)を独立変数とし,ネガティブ関係コーピング得点を従属変数とする1要因4水準の分散分析を行った。その結果,有意傾向であった(F(3,309)= 2.58,p≦.05)。多重比較を行ったところ,早期完了型―モラトリアム型間のみに有意差がみられた(t=-2.10,p<.05)。
考 察 仮説の検証の結果,早期完了型が最も友人関係に満足しているという結果となり,仮説1は支持されなかった。また,友人関係の満足感の高い者が低い者よりもポジティブ関係コーピングの使用頻度が高いことが示され,仮説2は支持された。さらに,ネガティブ関係コーピングの使用頻度が最も高かったのは同一性拡散型ではなくモラトリアム型であったが,同一性達成型が最もポジティブ関係コーピングの使用頻度が高い結果となったため,仮説3は一部支持されたといえる。ポジティブ関係コーピングと同一性達成に関連があるといるが,ネガティブ関係コーピングについては同一性拡散よりむしろモラトリアムが関連していることが本研究にて指摘された。これらの結果には本研究により分類された自我同一性地位の型の特性が反映されていることが推測される。

キーワード
自我同一性地位/対人ストレス・コーピング/友人関係満足感


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