発表

2D-026

大学生における医療・健康情報への情報リテラシー

[責任発表者] 勝谷 紀子:1
1:北陸学院大学

問題
 現在,医療や健康に関する様々な情報を容易に入手できる。自分の健康維持や増進のためにこうした情報を活用するスキルはヘルスリテラシー(福田・江口, 2016)と呼ばれる。ヘルスリテラシーを育成するための教育実践も行われているが,欧米に比べ日本人のヘルスリテラシーは低いと指摘されている。本研究は,大学生における医療・健康情報の活用の現状を明らかにすることを目的として調査を行った。
方法
調査回答者 首都圏の大学生172名(男性71名,女性101名,平均年齢19.3歳)が回答した。
手続きと調査項目 調査は授業管理システムのアンケート機能を利用して2018年12月に実施した。質問項目は,医療・健康情報の活用に関する問題(「耳のつまりと音の聞こえにくさを感じたため受診する医療機関をどう探すか(以下,耳の聞こえ問題)」「風疹とはどのような病気かを知るためにどのようなサイトを利用するか(以下,風疹問題)」「病院で処方された薬の副作用についてインターネットで検索する際にサイトの特徴として何を重視するか(以下,薬の副作用問題)」「健康診断の結果に書かれた指標non HDL-Cの意味をインターネットで検索する方法(以下,non HDL-C問題)」,eHealth Literacy Scale (eHEALS) 日本語版(光武・柴田・石井・岡崎・岡, 2011),自身の健康や医療の状況の質問,デモグラフィック変数(性別,年齢)だった(その他の質問項目は本報告では割愛する)。アンケートの最初の画面で研究目的および協力への同意に関する事項等を記載した。
結果
 調査回答者の健康や医療に関する状況として,生活習慣病と診断されたことがある回答者は5名(2.9%),自分の現在のBMIを知っているのは71名(41.3%),普段の血圧を知っているのは45名(26.2%),普段の平均睡眠時間がわかるのは149名(86.6%),定期的に健康診断を受けているのは40名(23.3%),昨日の食事の内容を思い出せるのは165名(95.9%),医療従事者の知り合いがいるのは43名(25.0%)であった。インターネットの医療・健康情報を適切に活用する能力を測るeHEALS日本語版の合計得点(M=24.66, SD=5.22)は先行研究と同程度だった。
医療・健康情報の利用に関する問題の検討 医療・健康情報の利用に関する問題への回答の傾向を分析した。耳の聞こえ問題については,回答の記述をテキストマイニングで分析したところ,出現頻度が高い名詞にはインターネット(74),検索(30),耳鼻科(29),スマートフォン(25),症状(24),スマホ(21),ネット(21),親(19)等がみられた(カッコ内は出現数)。スマートフォン等でネット検索する他,親に尋ねるという回答もみられた。
 風疹問題では,「検索結果の上位5件以内を見る」が37.2%(64名),「納得のいく回答があるまで多くのサイトを閲覧する」が21.5%(37名),「公的機関のサイトを見る」が19.2%(33名)等となっていた。一方,「Q&Aコミュニティ(Yahoo!知恵袋など)を見る」は1.2%(2名),「個人のブログの記事を見る」は0%だった。薬の副作用問題とnon HDL-C問題で重視する特徴(5件法,得点が低いほど重視すると回答)をTable1に示した。項目は日本医学図書館協会医療・健康情報ワーキンググループ(2017)を参考にして作成した。「サイトの目的に沿った情報が提供されているか」「適切な情報が提供されているか」がいずれの問題でも重視される傾向で,薬の副作用問題では「使われている情報源がはっきりしているか」も重視される傾向だった。各評定値とeHEALS日本語版との相関を見ると,eHEALS日本語版の得点が高いほどどの問題でもサイトのレイアウト,個人情報の入力必要性,サイトの目的の明確さ,目的にあった情報提供を重視していた。
考察
 自身の健康や医療に関する情報を調べる際,インターネットのほか親など身近な人を頼りに情報を求める傾向が見られた。また,医療や健康情報のリテラシーが高い人ほどサイトの目的など特定の特徴を重視していた。今後は,検索方法や活用方法の詳細な特徴を調べて,情報リテラシーを高めるための教育実践に活用する必要がある。
文献
福田洋・江口泰正(編著)(2016). ヘルスリテラシー : 健康教育の新しいキーワード 大修館書店
日本医学図書館協会医療・健康情報ワーキンググループ(編)(2017). やってみよう図書館での医療・健康情報サービス 第3版 日本医学図書館協会
光武誠吾・柴田愛・石井香織・岡崎勘造・岡浩一朗 (2011). eHealth Literacy Scale (eHEALS) 日本語版の開発. 日本公衆衛生雑誌, 58(5), 361-371.
注:本研究は公益財団法人電子通信普及財団2017年度研究調査助成を受けた。

キーワード
情報リテラシー/医療情報/健康情報


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