発表

2D-025

うつ傾向とレジリエンスの関係
ー年齢と性の影響ー

[責任発表者] 佐藤 邦子:1
[連名発表者・登壇者] 稲田 祐奈:1, 蝦名 昂大:1, 松井 三枝:1
1:金沢大学

 目的
 厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると,1999年には44.1万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は,2014年には111.6万人と15年間で2.5倍に増加している.うつ病による経済的損失も大きいことから,職場におけるメンタルヘルスの維持向上を目指し,国は2015年12月から,従業員50人以上の事業場においてストレスチェック制度の実施を義務化した.同じ職場で働いていても,メンタルヘルスを損なう人と損ないにくい人がいると考えられる.メンタルヘルスを損なわずに精神的健康状態を良好に維持して働いていくことを目指し,レジリエンス(resilience)という考え方が,注目されている.小塩ら(2002)によると,レジリエンスは「困難で驚異的な状況にもかかわらず,うまく適応する過程・能力・結果」と定義されている.うつ病とレジリエンスについては,精神医療における予防論的視点からの提言もなされている(小澤ら,2014).広く成人のメンタルヘルスの維持向上を図る上で,うつ傾向とレジリエンスとの関係を検討していくことは重要であると考える.そこで本研究では,成人の広い世代で,うつ傾向とレジリエンスの関係について,年齢と性の要因を含めて検討した.

 方法
 調査対象者は,ネット会社に登録している20歳から88歳600名(平均年齢49.4±16.5歳,男性354名,女性246名)で,各年代(20代・30代・40代・50代・60代・70代以上)100名ずつのデータをネット調査によって収集.
 メンタルヘルスの尺度は,日本精神神経学会の精神疾患の診断・統計マニュアル日本語版(DSM-5)のうつ病診断基準Aにおいて,重要な判断項目となる2項目「抑うつ気分」と「興味または喜びの喪失」について尋ねた.この2項目について5件法で回答を求め得点化し(まったくあてはまらない:0点~よくあてはまる:4点),参加者ごとの2項目の合計をうつ傾向得点とした.レジリエンス尺度は,平野(2010)の「二次元レジリエンス要因尺度 」(BRS:Bidimensional Resilience Scale)を用いた.平野(2010)の分類に従って,レジリエンスについては,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点・獲得的レジリエンス得点を算出した.

 結果 
 うつ傾向得点と年齢との間には,負の相関関係 (r(598)=-0.21, p<0.001)が認められた.レジリエンス得点と年齢との間には有意な関連(r(598)=-0.06,p=0.12)は認められなかった.
 各得点の性差の有無を検討するため,平均値の差の検定を行ったところ,うつ傾向得点(男性:3.7±1.8 vs.女性:3.9±1.9, t(598)=1.36, p=0.18),レジリエンス得点(男性: 67.7±11.8 vs. 女性:68.6±11.5, t(598)=0.95, p=0.34),下位得点である資質的レジリエンス得点(男性:38.1±7.5 vs. 女性:38.2±7.8, t(598)=0.24, p=0.81),獲得的レジリエンス得点(男性:29.6±5.0 vs. 女性:30.4±5.0 t(598)=1.87, p=0.06)の全ての得点において有意差は認められなかった.
 うつ傾向得点と,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点・獲得的レジリエンス得点との相関係数を,男女及び全体に分けて表1に示した.男性のうつ傾向得点と,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点・獲得的レジリエンス得点の間には,負の相関関係が認められた.女性のうつ傾向得点と,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点の間には,負の相関関係が認められたが,獲得的レジリエンス得点の間には,有意な相関関係は認められなかった.うつ傾向得点と,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点・獲得的レジリエンス得点の間には,負の相関関係が認められた.
 うつ傾向得点と,レジリエンス得点・資質的レジリエンス得点・獲得的レジリエンス得点の間には,負の相関関係が認められた.うつ傾向と年齢の関連が認められたことから,年齢を考慮したレジリエンスとうつ傾向の偏相関係数を求めたところ,年齢を考慮しても両者の有意な負の相関を認めた(r(598)=-.254, p<0.001)。

 考察
 本結果から,成人のうつ傾向の高さはレジリエンスの低さと関係することが示された.すなわち年齢が高くなるほど,うつ傾向は低くなることが示唆された.またうつ傾向とレジリエンスとの相関には部分的に性差が認められた.
 うつ傾向の軽減により,成人のメンタルヘルスの維持向上につなげるためにも,今後,成人の年齢・性別ごとのうつ傾向とレジリエンスについて,さらに分析・検討することが必要であると考えられる.
謝辞:本研究は国立大学法人金沢大学男女参画キャリアデザインラボラトリー共同研究支援制度の助成を受けて行われた.

キーワード
うつ傾向/レジリエンス/メンタルヘルス


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