発表

2C-025

中高年の死別経験と故人に関する不随意記憶(1)
―死別経験の特徴と死別への適応に関する予備的検討―

[責任発表者] 山中 亮:1
[連名発表者・登壇者] 田上 恭子:2
1:名古屋市立大学, 2:愛知県立大学

目 的
 故人のことを苦痛なく思い浮かべることができることは,喪のプロセスが終盤に向かっていることを示す指標の一つであり (Worden, 2008),記憶の側面から死別への適応について検討することの重要性が指摘されている (Eisma et al., 2015)。本研究では死別への適応における記憶の働きの検討に先立ち,広く中高年の死別体験の特徴を捉え,死別への適応との関連について探索的に検討することを目的とする。
方 法
1. 調査対象者と手続き
 40歳~79歳の一般成人を対象に,Web調査(調査1)を実施し,10,311名から回答を得た。調査の実施は,株式会社クロス・マーケティングに委託した。本研究は名古屋市立大学人間文化研究科研究倫理審査委員会の審査・承認を受け実施した(ID: 17020)。
2. 調査内容
 1) 基本属性:性別,年齢,同居家族
 2) 現在の精神的健康度:日本語版WHO-5(岩佐他,2007)
 3) 死別体験の有無:死別体験無し,または答えたくないと回答した場合ここで調査修了。
 4) 死別体験内容:死別体験1つについて,a.故人との続柄 等,b.死別時期,c.故人との主観的関係性(生前の「良好さ」「親密さ」「大切さ」及び現在感じる「親密さ」「大切さ」;0-100),d.死の突然性,e.死別時の苦痛,f.現在の回復度を尋ねた。d~fは6件法。
 この他故人との継続する絆に関する項目,調査2への協力の可否を尋ねる項目が含まれた。
結 果
1. 基本属性
 大切な者との死別体験者は8,020名,有効回答7,902名(男性4,657名,女性3,245名;平均年齢62.22±10.20歳)であった。現在の家族構成は,配偶者等とのみ同居が最も多く(3,279名; 41.5%),次いで配偶者等及び子ども等との同居(2,379名; 30.1 %),独居(1,234名; 15.6%)であった。WHO-5得点は,13.95±5.76であった。
2. 死別体験の内容
 1)回答された故人の続柄等:親との死別が5,432名(68.7%)と最も多かった。
 2)続柄等間の死別体験内容の比較:死別体験内容変数b~f全てで故人の続柄等の主効果が有意であった(F(7,7894)=8.99-174.87, p<.001, η2=.01-.13)。死別からの経過年は,ペットとの死別者(n=49)が最も短かった。生前愛着の程度(生前の「良好さ」「親密さ」「大切さ」の平均値;α=.86),現在の愛着の程度(現在の「親密さ」「大切さ」平均値;α=.82)は,ともにペットとの死別者が最も強く,次いで子どもとの死別者(n=126)が強かった。死の突然性は子どもとの死別者が最も高く,死別時の苦痛はペットとの死別,子どもとの死別の順に高く,現在の回復の程度は同順で低かった。
3. 死別への適応への影響要因の検討
 死別への適応指標として「現在の回復の程度」を従属変数とし,性別,年齢,独居か否か,死別からの経過年,生前の愛着の程度,死の突然性,死別時の苦痛を独立変数とする重回帰分析を全体及び故人の続柄等別に行った。その他親族(n =214),子ども,ペットとの死別者においては回帰式は有意ではなかった。それ以外の分析では,回帰式はいずれも統計的には有意であり,共通して死別からの経過年の正の影響が有意であった(β=.19-.30,p<.001)。
 経過年以外の影響に関しては,全体及び親との死別者における分析では,生前の愛着以外全ての変数の影響が有意だった(R2=.12, p<.001; R2=.10, p<.001)。配偶者等との死別者 (n=477; R2=.19, p<.001)及び同胞との死別者(n=410; R2= .14, p<.001)においては,年齢の正の影響(β=.09, p<.05; β=.13, p<.01),死別時の苦痛の負の影響(β=-.24, p<.001 ; β=-.24, p<.001)が認められ,配偶者等との死別者では女性の方が回復の程度が高かった (β=.12, p<.01)。祖父母との死別者(n=675; R2=.06, p<.001)では,死の突然性の負の影響のみ有意であり(β=-.14, p<.001),友人・知人等との死別者(n=519; R2=.10, p<.001)では,生前の愛着の程度の負の影響が有意であった(β=-.09, p<.05)。
考 察
 特に親との死別を回答する者が半数以上であったことから,中高年にとって親との死別は大きな影響を及ぼすものであると考えられる。一方子どもとの死別は数は少ないものの,他の死別とは性質がかなり異なることが示唆され,きめ細やかな支援が必要ではないかと考えられる。
死別への適応に関しては,今回対象とした一般成人においては時間の経過の影響が大きいといえるが,故人との関係性によって他の要因を考慮した支援も必要であると考えられる。

引用文献
 Eisma, M. C., et al. (2015). Psychopathology symptoms, rumination and autobiographical memory specificity: Do associations hold after bereavement? Applied Cognitive Psychology, 29, 478-484
 岩佐 一他 (2007). 日本語版「WHO-5精神的健康状態表」の信頼性ならびに妥当性―地域高齢者を対象とした検討― 厚生の指標, 54, 48-55.
 Worden, J. W. (2008). Grief counseling and grief therapy: A handbook for the mental health practitioner. New York: Springer.

謝 辞
本研究は科研費(課題番号26380935,18K03146)の助成を受けた。

キーワード
死別/死別への適応/中高年


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