発表

2C-023

女子大学生の「食事観」とネガティブ感情対処食行動との関係性

[責任発表者] 有島 みなみ:1
1:奈良女子大学

 目 的
 食事は,人間にとって生きていく上で欠かせないものである。食事の多様な面を測定する尺度は様々だが,先行研究の尺度は,食事に関する特定領域の測定に特化しており,食事に関する「価値観」を包括的に測定する尺度の研究はほとんど見られない。また,大学生の年代は摂食障害の好発期であり,特に女子大学生において,摂食障害またはその予備軍である食行動上の問題が多く見られるとされる(山中ら,2000)。また,ネガティブ感情対処食行動が,摂食障害において特徴的であるbinge eatingと関連があるとされており(Arnow et al.,1994),臨床群を対象とし,ネガティブ感情と食行動異常との関連性をより詳細に分析するためにEmotional Eating Scale(EES)(ネガティブ感情対処食行動尺度)が作成されている。日本では,食事観とネガティブ感情対処食行動との関係性を検討している研究は見られない。以上より,本研究の目的は(1)個人の「食事観」を測定する「食事観尺度」を作成すること,(2)どのような食事観が,ネガティブ感情対処食行動の頻度や常習性に影響を与えているかを検討することである。仮説は2点である。(1)食事への肯定的態度及び共食志向を持つ者は,ネガティブ感情対処食行動の頻度が少ない。(2)食事への肯定的態度が強い者の中で,食事への不安感が強い者は,ネガティブ感情対処食行動の頻度が多い。
 方 法
 <予備調査>本調査で用いる「食事観尺度」の項目を検討するため,女子大学生及び大学院生24名に質問紙調査を行った。調査内容は,1)フェイスシート,2)「食べること」に関する質問,3)ダイエットに関する質問,4)ストレス対処法・発散法に関する質問であった。臨床心理学コースの教員2名,学生3名で内容分析を行い,先行研究も参考にした上で項目を選定した。<本調査>女子大学生297名に質問紙調査を行った。そのうち273名を分析対象とした(平均年齢19.65歳,SD=1.34)。調査内容は以下の通りである。1)フェイスシート,2)食事観に関する質問:予備調査に基づいて作成した食事観尺度を用いた。3)ネガティブ感情対処食行動に関する質問: Emotional Eating Scale(Arnow et al.,1994)を田中(2010)が邦訳したものを参考にして用いた。4)調査対象者に関する質問:1.「主観的健康感」2.「毎日の楽しさ」3.「食生活満足感」4.「ダイエット経験の有無」5.「ダイエット理由」6.「ストレス発散法」の回答を求めた。
 結 果
 食事観尺度36項目について因子分析を行い,最終的に33項目を抽出した。第1因子は「食べることが好きだ」等12項目から成ることから,「食事への肯定的態度」因子と命名した。第2因子は「食事は皆でにぎやかに食べたい」等6項目から成ることから「共食志向」因子と命名した。第3因子は「食べた後,不安になることがある」等5項目から成ることから,「食事への不安感」因子と命名した。第4因子は「食べるものは自分で決めたい」等10項目から成ることから,「食事への積極的姿勢」因子と命名した。各因子の内的整合性は,第1因子から順に,α=.910,α=.842,α=.864,α=.668であり,各因子の信頼性が十分確認された。仮説1に関して,「食事への肯定的態度」低群・高群と「共食志向」低群・高群を独立変数, EES合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った。その結果, EES合計得点において,「食事への肯定的態度」の主効果が有意であり(F(1,269)=13.70,p<.001),「共食志向」の主効果が有意傾向であった(F(1,269)=3.37,p<.1)。多重比較の結果,「食事への肯定的態度」高群が低群よりEES合計得点が高く,「共食志向」低群が高群よりEES合計得点が高かった。次に,仮説2に関して,「食事への肯定的態度」低群・高群と「食事への不安感」低群・高群を独立変数, EES合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った。その結果,EES合計得点において,「食事への肯定的態度」の主効果が有意で(F(1,269)=9.74,p<.01),「食事への不安感」の主効果が有意傾向であった(F(1,269)=3.87,p<.1)。多重比較の結果,「食事への肯定的態度」,「食事への不安感」高群が低群よりEES合計得点が高かった。
 考 察
 まず,食事観尺度では「食事への肯定的態度」,「共食志向」,「食事への不安感」,「食事への積極的姿勢」の4因子を抽出し,信頼性を確認した。次に,「食事への肯定的態度」高群が低群よりEES合計得点が高く,「共食志向」低群が高群よりEES合計得点が高かった。以上より,仮説1は一部支持され,青年期女性は,身近な食事を頻繁に感情対処手段として用いている可能性がある。また,「共食志向」が低い者は,自身の感情を溜め込んだ結果,ネガティブ感情対処食行動を表出したと推察出来る。さらに,「食事への肯定的態度」,「食事への不安感」高群が低群よりEES合計得点が高かった。以上より,仮説2は一部支持され,先行研究を概ね支持するものとなった。
  引用文献
Arnow,B.,Kenardy,J.,& Agras,W,S.(1995).The Emotional  Eating Scale:The Development of a measure to assess  coping with negative affect by eating. International  Journal of Eating Disorders,18,79-90.
田中志帆(2010).食事場面での母親の行動認識と,感情対処 方略としての食行動が,摂食障害傾向に及ぼす影響 青山 學院女子短期大學紀要 64,169-185.
山中学・宮坂菜穂子・吉内一浩・佐々木直・野村忍・久保木 富房(2008).大学生の摂食障害 心身医学,40,216- 219.

キーワード
食事観/ネガティブ感情対処食行動/過食


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