発表

2C-020

不登校傾向を示す大学生の友人関係と感覚処理感受性の検討

[責任発表者] 鈴木 仁美:1
[連名発表者・登壇者] 菊島 勝也:1
1:日本大学

目 的 近年,大学生における不登校の問題が注目され始めている。大学生の不登校状態が長期に渡ると,留年や休学,退学につながるケースも多いため,不登校傾向の高い学生を早期発見し,適切な支援をすることは重要と考えられる。これまでに,大学生の不登校傾向の心理的要因として,大学への不適応感が指摘され(堀井,2016),友人関係に対して消極的で,回避する傾向を示す大学生は大学不適応的であることが示されてきた(永井,2016)。さらに,近年,感覚情報の脳内処理過程における生得的個人特性で,刺激への敏感さや感受性の高さといった「感覚処理感受性」(Sensory-Processing Sensitivity:SPS)(Aron & Aron,1997)が高い大学生ほど,コミュニケーションに対する不安が高く,大学でのストレスを感じやすいことが明らかにされている(Gearhart & Bodie,2012)。以上のことから,本研究では,不登校傾向を示す大学生における友人関係および感覚感受性の特徴を検討することを目的とする。
方 法 2018年7月,都内のA大学に通う大学生を対象に大学の講義時間を利用して質問紙調査を実施し,そのうち回答に不備があるものを除いた133名(男性57名,女性75名,不明1名,平均年齢19.41歳,SD=1.57)を分析対象とした。回答依頼時に,文書と口頭で本調査に対する同意を得た。質問紙は,フェイスシート(性別・年齢・学科・学年),大学生不登校傾向尺度(堀井,2013),友人関係尺度(岡田,1999),Highly Sensitive Person Scale 日本版(HSPS-J19)(高橋,2016)によって構成された。
結 果 各尺度について探索的因子分析(主因子法,Promax回転)を行った。その結果,大学生不登校傾向尺度は11項目2因子,友人関係尺度は33項目4因子,HSPS-J19は11項目3因子にまとまった。各下位尺度のα係数を求めた結果,大学生不登校傾向尺度については,「登校回避行動(α=.91)」「登校回避感情(α=.85)」,友人関係尺度については「配慮・気遣い(α=.84)」「評価懸念(α=.85)」「自己開示(α=.82)」「快活的関係(α=.84)」,HSPS-J19については「低感覚閾(α=.84)」「易興奮性(α=.73)」「美的感受性(α=.70)」となり,概ね信頼性があることが示された。
 大学生不登校傾向尺度の「登校回避行動」の平均値が小さく,この因子による群分けが困難であったため,「登校回避感情」の平均値によって,調査対象者を登校回避感情高群,登校回避感情低群の2群に分けた。
 登校回避感情高低群における各尺度の平均値について,対応のないt検定を行った。検定の結果,不登校傾向尺度の「登校回避行動」(t(27)=-5.21,p<.001)「登校回避感情」(t(35)=-28.92,p<.001)において0.1%水準で有意差が見られた。また,HSPS-J19の合計点において1%水準で有意差が見られ(t(46)=-2,75,p<.01),友人関係尺度の「快活的関係」(t(46)=-2.51,p<.05),HSPS-J19の「低感覚閾」(t(46)=-2.49,p<.05)「美的感受性」(t(46)=-2.26,p<.05)において5%水準で有意差が見られた。登校回避感情高群は,低群に比べて,「登校回避行動」,「登校回避感情」,「快活」,「低感覚閾」,「美的感受性」,およびHSPS-J19の合計点で有意に高い得点を示した。
考 察 本研究の結果,友人関係尺度の「快活的関係」得点において,登校回避感情高群が低群より有意に得点が高くなり,登校回避感情の高い学生の友人関係の特徴として,快活的な関係を志向することが示された。「快活的関係」は,友人と楽しく円滑な関係を取る傾向を評価する因子であり,快活的関係の得点が高くなると,表面的に円滑な友人関係を志向することが可能性が考えられる。つまり,登校回避感情の高い学生は,明るく振舞う関わり方をすることで内面的な関係を回避し,表面的な友人関係をとるという特徴を持つことが推測される。一方,友人関係尺度の他の因子においては,登校回避感情高群と低群の間に有意な差は見られなかったことから,不登校傾向を示す学生の友人関係の特徴について,より慎重に検討することが必要であろう。
 また,登校回避感情高群では,HSPS-J19の合計点と,「低感覚閾」,「美的感受性」において,低群より高い得点を示し,SPSの高い傾向が見られた。登校回避感情高群の学生は,低群の学生よりも刺激に敏感に反応し,感受性が高いというSPSの高さを持つために,大学生活においても多くの刺激に反応し,不安が高まり,ストレスを感じやすくなることが推測された。
引用文献Aron, E. N. & Aron, A. (1997). Sensory-processing
 sensitivity and its relation to introversion and
 emotionality. Journal of Personality and Social
 Psychology
, 73, 345-368.
Christopher C. Gearhart & Graham D. Bodie(2012).
 Sensory-Processing Sensitivity and Communication
 Apprehension: Dual Influences on Self-Reported
 Stress in a College Student Sample. Communication
 Reports 25
(1),27-39.
堀井 俊章 (2016). 大学生の不登校傾向に影響を及ぼす心
 理的要因 横浜国立大学教育人間科学部紀要.Ⅰ教育科
 学,18,106-114.
永井 暁行 (2016). 大学生の友人関係における援助要請お
 よびソーシャルサポートと学校適応の関連 教育心理学
 研究,64,199-211.

キーワード
不登校傾向/友人関係/感覚処理感受性


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