発表

2B-035

地域在住高齢者を対象とした集団マインドフルネストレーニングによる精神的健康および老年的超越向上効果の検討

[責任発表者] 増井 幸恵:1
[連名発表者・登壇者] 山崎 幸子:2, 吉中 康子#:3
1:東京都健康長寿医療センター研究所, 2:文京学院大学, 3:京都先端科学大学

【目的】高齢期後半には身体機能や意欲の低下,精神的な疲労感の増大によって,地域の活動に出ていけない,もしくは脱落してしまい,精神的健康やうつ状態を悪化させる者が多くなる。このようなケースでは,人間関係の交流や運動活動を増やす介入により精神的健康の改善を図る取り組みが困難となる。一方で,マインドフルネストレーニングは,自分をありのままに受け止めること,オープンで寛容な態度を醸成すること,などの心理状態を醸成するため,交流や運動活動などに参加が難しい高齢者においても精神的健康によい影響を与えると考えられる。また,近年,高齢者の精神的健康の促進要因である老年的超越の内容はマインドフルネスに類似しており,マインドフルネストレーニングにより老年的超越が向上する可能性が考えられる。そこで,本研究では,地域高齢者に対して,集団でのマインドフルネストレーニングを実施し,精神的健康と老年的超越が向上するかを検討した。
【方法】参加者:地域高齢者30人(男性7人,女性23人。平均年齢70.5±5.2歳。年齢範囲:59-82歳)。参加者のリクルートは地域のサークルでの直接的な勧誘,NPO団体やボランティア団体登録者への依頼状郵送により行った。研究デザインと参加者の割付:参加希望者を年齢と性別をカウンターバランスし,介入群と比較対照群に割り付けた。介入期間は8週間であり,統制群には介入群の介入終了後8週間の介入を行う予定であった。介入期間が長期にわたるため割付の変更を希望する者がでたため,最終的には介入群13人(男性4人,女性9人,平均年齢70.2±5.4歳),比較対照群17人(男性3人,女性14人,平均年齢70.7±5.2歳)となった。測定指標:精神的健康の指標としてWHO5-J(Awata et al, 2007),老年的超越質問紙簡易版(増井ら,2013:JGS-R)27項目,マインドフルネスの測定尺度として6因子マインドフルネス尺度(前川,越川,2015:SFMS)より各因子3項目ずつ18項目を用いた。介入手続き:介入群には週1回約1時間の集団でのマインドフルネストレーニングを8週間連続で実施した。1回のセッション(約1時間)は,事前測定(血圧・脈拍,主観的なストレス評価:10分)⇒集団でのトレーニングおよびトレーニングの感想のシェアリング(45分)⇒事後測定(5分)というスケジュールで行った。8週間のトレーニングの内容は,食べる瞑想,呼吸瞑想,ボディスキャン,マインドフル・ストレッチ,歩行瞑想,呼吸空間法,音を使った注意訓練,などであった。また5週目以降は,呼吸空間法,マインドフル・ストレッチを家庭で実践し,実施記録をするよう求めた。比較対照群には,この8週間マインドフルネスに関する知識には接しないように求めたが,その他の活動については特に制限を求めなかった。また,待機中には脱落防止のため,1か月ごとに2回の高齢者の健康に関するレターを送った。その後,比較対照群には同様に8週間の介入を実施した。効果指標の測定について:介入群,比較対象群ともにベースライン時および介入群のプログラム終了後にWHO-5-J,JGS-R, SFMSの測定を行った。また,比較対象群は介入プログラム終了にも測定を行った。倫理的配慮:本研究は東京都健康長寿医療センター研究所倫理委員会の審査,承認を得た。
【結果】WHO5-J,JGS-R,SFMSをそれぞれ従属変数,測定時期(事前・事後)および群(介入群・比較対象群)を独立変数,性別,年齢を統制変数とする繰り返し要因のある分散分析を行った。図1にWHO5-Jの結果を示した。WHO5-Jについては群×測定時期の交互作用に有意傾向がみられた(介入群事前15.6±3.7点,介入群事後17.3±3.8点,比較対照群事前14.5±5.3点,比較対照群事後14.3±4.8点:F(1,26)=2.90, p=.1)。また,両群の介入後の得点をプールした場合(n=26)には,介入前(14.7±4.4点)と介入後(16.1±4.4点)に有意な差がみられた(t(25)=2.20 p<.05)。JGS-R,SFMSについては有意な効果はみられなかった。
【考察】分析の結果,一般の地域在住高齢者においても集団でのマインドフルネストレーニングにより精神的健康が改善する可能性が示唆された。しかし,精神的健康を改善する媒介と考えた心理特性である老年的超越やマインドフルネス特性については改善が見られなかった。したがって,マインドフルネストレーニングは心理的特性の醸成とは異なる経路で精神的健康を改善する可能性が考えられた。加えて,本研究の参加者の多くは地域の体操教室やボランティア活動に積極的に参加している者であり,単なる活動の実施による精神的健康の改善効果ではないと考えられる。今回の介入研究においては,参加者数も少なかったため,今後更に参加者数を増やし,比較対照群としてどのような処遇を行うかをも含めて,検討していく必要があるだろう。

キーワード
マインドフルネス/介入研究/高齢者


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