発表

2B-033

否定的・肯定的育児感情が養育行動に与える影響

[責任発表者] 岡本 大輔:1
[連名発表者・登壇者] 大澤 香織:2, 礒部 美也子#:3
1:甲南大学, 2:甲南大学, 3:奈良大学

 目 的
 これまで,育児への不安,ストレスといった育児に対する否定的感情による,母親の養育行動への影響が検証されてきた(中谷・中谷,2006;岩立・倉田,1995)。しかし,育児に対する感情には肯定的感情も存在し,肯定的側面を含めた育児感情が養育行動へ及ぼす影響は十分に検討されていない。そこで本研究では,否定的および肯定的の両側面を含めた育児感情が養育行動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。

 方 法
 調査対象者 1才から3才の子どもをもつ母親114名(平均年齢33.86歳,SD=3.96)であった。
 手続き 2015年10月~2016年3月に,奈良県で行われた乳幼児健康診査の場で,研究の概要,データの取扱い等を説明し,研究協力に同意を得た上で質問紙を配布した。質問紙は3回配布し,その場で回答を得た。
 養育行動の測定 養育行動を測定するため,中道・中澤(2003)の「親の養育態度尺度」を,対象者に合うように項目を修正して使用した。この尺度は,「子どもの意図・欲求に気づき,愛情のある言動や身体的表現を用いて,子どもの意図をできる限り充足させようとする行動」である「応答性」,「子どもの意志とは関係なく,母親が子どもにとって良いと思う行動を決定し,それを強制する行動」である「統制」の2因子,計14項目で構成されている。各項目に対し,4件法で評定された。
 育児感情の測定 荒牧(2008)の育児感情尺度を使用した。否定的育児感情である「育児への束縛による負担感」,「子どもの態度・行為への負担感」,「育て方への不安感」,「育ちへの不安感」と,肯定的育児感情である「肯定感」の5因子,計21項目を使用し,各項目について4件法で評定された。
 
 結 果
 養育行動と育児感情との相関 親の養育態度尺度と育児感情尺度の各下位尺度間において,中程度から強い正の相関(r = .49~.89)が認められた。育児感情である「子どもの態度・行為への負担感」は,養育態度の「応答性」と弱い負の相関(r = .32)が,「統制」とは弱い正の相関(r = .31)が認められた。育児感情の「育ちへの不安感」は,養育態度の「応答性」と弱い負の相関(r = -.21)が認められた。また,「肯定感」と「応答性」の間には弱い正の相関(r = .28)が認められた。
 育児感情から養育行動への影響 相関分析の結果から,2つのモデルを想定し,その妥当性を共分散構造分析(SEM)によって検証した。モデル1は(1)4つの否定的育児感情が「肯定感」に影響を及ぼし,(2)その「肯定感」が養育行動の「応答性」に,「応答性」は「子どもの態度・行為への負担感」に影響を及ぼす,(3)さらに,「子どもの態度・行為への負担感」は「統制」に影響を及ぼすことを想定した。
 モデル2では(1)「子どもの態度・行為への負担感」から「育ちへの不安感」,「育児への束縛による負担感」,「育て方への不安感」に影響を及ぼし,「育ちへの不安感」が「肯定感」に影響を及ぼすことを想定した。そして,(2)「肯定感」は養育行動の「応答性」に,「応答性」は「子どもの態度・行為への負担感」に影響を及ぼすとした。
 分析の結果,モデル1ではχ2=106.94(p < .01),モデル2ではχ2 =6.39(n.s.),df=12,GFI=.98,AGFI=.95,RMSEA=.00であり,モデル2の方が妥当であることが示された(Figure1)。
 
 考 察
 育児感情間に中程度から強い正または負の相関が認められ,複数の育児感情が母親の中で生じており,母親は育児に対して葛藤的な感情を抱いている可能性が示された。SEMの結果,「子どもの態度・行為への負担感」が高まることで,「育ちへの不安感」が高まり,「肯定感」と「応答性」が低減すること,また,「応答性」の低減により「子どもの態度・行為への負担感」,「統制」が高まることが示された。したがって,「子どもの態度・行為への負担感」が,「肯定感」を介して,「応答性」の低減と「統制」の増加という,養育行動に否定的な影響を与えることが示唆された。

キーワード
育児感情/養育行動/共分散構造分析


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