発表

2B-030

思考を制御困難にする方略を使用してしまうのはなぜか?
メタ認知的信念からの検討

[責任発表者] 義田 俊之:1
1:国際医療福祉大学

目 的
 思考の制御困難性を生じる要因として,「考え続ける義務感(Sugiura et al, 2019)」,「思考抑制に関する信念(服部 et al, 2014)」など様々な議論がなされている。義田(2017)は,雑念への様々な対処法略の中で,罰方略(i.e.,自分を責めて雑念を止めようとする),心配方略(i.e., ある心配事を別の心配事に置き換える)が思考の制御困難性を強めることを示した。
 人はなぜ,思考を制御困難にする方略を使用してしまうのだろうか。その動機を明らかにすることで,病理が進展し維持されるプロセスに迫ることができる。介入ではこの動機がターゲットとなる。
 反すう/心配という制御困難な認知活動の動機に「問題解決に役立つから」というメタ認知的信念が伏在する(Wells et al, 2004; 長谷川 et al, 2009,2010)。思考の制御困難性を招く方略でも,それを使用する動機がメタ認知的信念として覚知されている可能性がある(Figure 1)。本研究では罰方略と心配方略の使用の動機となるメタ認知的信念を探索的に調べる。
方 法
協力者 2019年に,A大学で講義時間内に調査の目的,プライバシー保護,協力は任意であることを説明し,同意した大学生134名(男性26名,女性106名,未記入2名,平均18.9歳(SD = 0.73))から回答を得た。
質問紙
(1)思考コントロール方略 Thought Control Questionnaire日本語版(義田・中村,2014; 以下TCQ-Jと略記)から12項目を使用した。侵入思考が生じた時に,ふだん,罰,心配の2つの方略をどのくらい頻繁に使うのかを,各方略6項目で,「1:ほとんどしない」から「4:ほとんどの場合する」の4件法で回答を求めた。
(2)メタ認知的信念 Metacognitions Questionnaire 短縮版MCQ-30(Wells & Cartwright-Hatton, 2004)の日本語訳版(田﨑, 2017)30項目を使用し,「認知的自信の欠如(i.e., 記憶や注意のコントロール困難)」,「心配に関する肯定的信念(i.e., 心配することの問題解決への利点)」,「認知的自己意識(i.e., 自己の思考に注意を向ける傾向)」,「思考制御不能と危険へのネガティブな信念(i.e., 思考をコントロールする必要性と困難さ)」,「迷信・罰・責任など思考一般への制御欲求のネガティブな信念(i.e., 思考を平穏に保つことへの過剰な価値)」がどの程度自分に当てはまるのかを,「1:当てはまらない」から「4:非常に当てはまる」の4件法で回答を求めた。
統計解析 統計ソフトはSPSS23.0を使用した。
結 果
 TCQ-Jの2つの下位尺度およびMCQ-30の5つの下位尺度の記述統計量とα係数をTable 1に示した。内的整合性は許容水準だった。罰尺度得点はMCQ-30の5つの下位尺度得点と,心配尺度得点は肯定的信念以外の4つと有意な正の相関を示した(rs > .27, ps <.05)。
 次にMCQ-30の5つの尺度得点を予測変数,罰尺度得点と心配尺度得点それぞれを目的変数とする2つの重回帰分析(強制投入法)を行った。その結果,罰尺度に関しては,認知的自信の欠如,迷信・罰・責任のβが有意だった(それぞれβ=.26, t=3.2, p < .01 ; β=.38, t=3.9, p < .01)(F (5, 128)=11.5, p < .01; R2 =.31)。心配尺度に関しては,認知的自信の欠如,認知的自己意識のβが有意だった(それぞれβ=.20, t=2.3, p < .05 ; β=.22, t=2.2, p < .05)(F (5, 128)=6.8, p < .01; R2 =.21)。
考 察
 罰方略と心配方略の両者を共通して予測した「認知的自信の欠如」の高さは,記憶や注意に自信がなく,雑念を現実と捉え,とらわれやすい素地をもたらす。ここで「迷信・罰・責任」が強いと,雑念の生起は思考を平穏に保てなかった自己の責任と解釈される結果,自己を罰しやすくなると考えられる。一方,認知的自己意識が強いと,雑念が気になるために,別の雑念に置き換えやすいと考えられる。
 介入では,(a)方略とその帰結への気づきを促し方略の使用を控えさせること,(b)方略を動機づけているメタ認知的信念の明確化と検証が有用かもしれない。

キーワード
思考コントロール方略/メタ認知的信念/メタ認知療法


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