発表

2B-027

孫世代から見た家族における介護の意味づけ

[責任発表者] 馬場 絢子:1,2
[連名発表者・登壇者] 太齋 慧#:1, 森 孝太#:1, 佐藤 愛#:1, 橋本 佳奈#:1
1:東京大学, 2:日本学術振興会

問題と目的
 家族介護については要介護者・介護者双方の立場から様々な知見が蓄積されており,育児と介護が重なるダブルケアの問題にも光が当てられるようになってきた。しかし介護者の子ども側,すなわち親が祖父母の介護をしている孫世代側に焦点を当てた国内の研究は寡少である。海外の研究では,祖父母との関係変化,親との関係変化,生活変化などを含む孫世代の介護体験が明らかになってきている (e.g. Creasey et al., 1989; Howard & Singleton, 2001; Celdran, Villar,& Triado, 2012)。よって,孫世代の介護体験について,要介護者や介護者との関係性も含めて家族システム的な視点から理解する必要があると考えられた。そこで本研究では,親が祖父母を介護している孫世代が家族における介護をどのように体験しているか,国内のデータを用いて明らかにすることを目的とした。
方法
 2018年12月,親が祖父母を介護している大学生4名を対象に半構造化インタビューを行った。得られたデータはM-GTA(木下, 2003)の手法を用いて分析された。分析対象者は「親が祖父母の介護をしている孫世代」,分析テーマは「孫世代から見た家族における介護の意味づけ」とした。なお,本研究は発表者ら所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて行われた。インタビュー実施前には研究の概要や研究協力の任意性,個人情報の取り扱い等について書面および口頭にて説明し,同意書に署名を得た。
結果と考察
 分析の結果,「孫世代から見た家族における介護の意味づけ」に関わる4個のカテゴリ,9個のサブカテゴリ,および23個の概念が生成された(表1)。カテゴリに《》,サブカテゴリに<>をつけてストーリーラインを記す。
 介護が必要となった被介護者の変化は,その程度に応じて孫世代に《介護がもつインパクト》を与えた。具体的には,祖父母へのケアの中で親世代の新たな一面や余裕のない様子を目にする<介護者としての家族の姿>や,家族の協力関係や脆弱性が浮き彫りになる<家族関係に作用する介護>,これまでの日常生活を圧迫する<日常を変化させる介護>などとして《生活を変える介護》として体験された。《介護がもつインパクト》や《生活を変える介護》は,戸惑い・受容といった<被介護者の変化への反応>や,親世代を介して間接的に介護に携わったり関与を拒否したりという<介護への関わり方>などにより多様な《孫世代として介護に関わる》様態を形成していた。このような《生活を変える介護》と《孫世代として介護に関わる》の相互作用からなる介護体験により,漠然とした<介護以前のイメージ>が,実体験の中で形成された「お返し」や「義務」といった多様な<祖父母の介護の捉え方>へとシフトし,さらには介護に取り組む家族の姿勢についての考えのみならず社会への視線をも含む<当事者としてより良い介護を考える>に至る《介護の捉え方の変化》のプロセスが示された。
総合考察
 上記の結果から孫世代の介護体験の構造と介護の捉え方が変容するプロセスが明らかになった。《介護がもつインパクト》の大きさや介護以前からの家族関係によって,《生活を変える介護》《孫世代として介護に関わる》の様態が異なり,<祖父母の介護の捉え方>に影響している様子がうかがえた。被介護者の変化を認めるためには,認知症状等に関する知識をふまえて被介護者の変化を外的要因に帰着させて理解するサポートが必要であり,家族で協力関係を築いていくためには互いの思いや介護の役割分担についてオープンに話し合うサポートが有用と考えられた。
引用文献
Celdrán, M., Villar, F., & Triadó, C. (2012). When Grandparents Have Dementia: Effects on Their Grandchildren’s Family Relationships. Journal of Family Issues, 33(9), 1218–1239.
Creasey, G. L., Myers, B. J., Epperson, M. J., & Taylor, J. (1989). Grandchildren of grandparents with Alzheimer's disease: Perceptions of grandparent, family environment, and the elderly. Merrill-Palmer Quarterly, 35(2), 227-237.
Howard, K.,& Singleton, J. (2001). The forgotten generation: The impact a grandmather with Alzheimer’s disease has on a granddaughter. Activities, Adaptation & Aging, 25(2), 45-57.
木下康仁. (2003). グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践 : 質的研究への誘い. 弘文堂.

キーワード
家族介護/ダブルケア/インタビュー調査


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