発表

2B-026

緩和ケア臨床に携わる看護師の変容的学習
専門知識技術の習熟と心理的成長

[責任発表者] 渡辺 めぐみ:1
[連名発表者・登壇者] 伊東 昌子:2, 角 智美#:3, 三橋 彰一#:4
1:常磐大学, 2:成城大学, 3:茨城県立医療大学, 4:茨城県立中央病院

目的
学習を通じて,それまでの前提や価値観を批判的に振り返ることで,内面的な変容が起こることを変容的学習と呼ぶ(Mezirow, 2012 )。緩和ケア臨床の現場は,医療者として高度な専門技能が要求されるだけでなく,全人的に患者と関わり,心身の痛みをケアすることが求められるため,看護師の主体的な活躍が期待される職場の一つと考えられる。緩和ケア病棟では,個々の患者の病状の日内変動,病状急変などがある上,1ヶ月程度で患者が転院などの環境変化を迫られることがあり,療養型病棟と比べると変化の大きい職場といえる。そのため,新人看護師であっても,同僚の助けを借りながらもルーチンの仕事をこなし,状況の変化に対応するスキルを早く身につけることが要求される。一方,このような特性の職場で働く看護師が,“自分はやっていける“という自信をつけていくプロセスには,職場に埋め込まれた実践的学びと共に,患者との関わりを通して医療への考え方,死生観などの個人の価値観や行動パターンなどが変化する”変容的学習“が生じる可能性が示されている(Ker,2013)。本研究は,緩和ケア臨床を実践する看護師にアンケート調査を実施し,職場の学びの中に変容的学習が生じるか否か,あるとすれば,どのような内容で,緩和ケアに関わり始めて何年目ぐらいからかを検討することを目的とする。尚,本研究は,研究対象者への倫理的配慮を十分に考慮し,調査対象病院の倫理委員会の承認を得た上で実施された。
方法
①調査方法:無記名自記式アンケート調査 ②調査対象:A公立総合病院・緩和ケア病棟に勤務する看護師あるいは,かつて緩和ケア病棟に勤務したことのある看護師,緩和ケアチームに所属する看護師,27名。③調査内容:緩和ケア臨床経験年数 緩和ケアの仕事に対する自信と自己効力感,スタッフ間のコミュニケーションの困難度(8項目),自己変容(16項目)について6件法で質問した。さらに標準化された既存の質問紙を用いて,次の3つの内容について5件法で質問した。緩和ケアに関する医療者の態度評価(18項目),医療者のターミナルケア態度(7項目),看護師のがん看護に対する困難感(49項目)。自己の学びと変化の自由記述。④分析方法:各項目の得点を集計し,項目間の関連を分析した。
結果と考察
①緩和ケア経験年数:0-1年8名,2-3年6名,4-6年10名,10-12年3名であった。Benner(2005)は看護師の技能習熟度は経験年数に応じて5段階(初心者,新人,一人前,中堅,エキスパート)があることを示しており,調査対象者に当てはめると,0-2年は初心者~新人レベル,2-3年は一人前レベル,4-6年は中堅レベル,10年以上はエキスパートと考えられる。
②自己変容:自己変容に関する項目の平均値が3(少し変わった)以上のものを示す(評定値は1-6で,数字が大きいほど大きい変化を示す)。死生観(4.28),医療全体への考え(4.14),がんへの知識(4.10),がん治療(4.0),自分の役割についての考え(3.90)自分の生き方への考え(3.86),倫理観(3.83)仕事への姿勢(3.76),幸福観(3.52)であった。他者,家族との接し方,感情の揺れ,余暇の過ごし方などの項目は評定平均値が3.0-3.3であった。がんへの知識やがん医療,仕事への姿勢など職務と深い関わりにあることについてだけでなく,生き方についての考え,死生観,幸福観など個人的な価値観にかかわる側面も大きく変化していることが明らかになった。
③経験年数と業務の困難度:経験年数が6年以内の看護師には,知識や技術の困難度は評定平均値3-6とばらつきがみられたが(3以下は困難なし),経験10年以上のエキスパート看護師は知識技術の困難度は評定平均値が3以下で,困難がないことがわかった。一方,エキスパートでも,医師の治療・対応,告知・症状説明,地域連携などの他職種との連携業務については,評定平均値4以上でやや困難を抱えていることが示された。
④経験年数と自信,自己変容:職場での自信,自己効力感は,経験年数0-6年の新人から中堅レベル看護師の間では,3-6点とばらつきがあるが,経験10年以上の看護師では5と高止まりしていた(評定値が高いほど自信,効力感があり)。仕事への姿勢,および死生観の変化は経験年数0-6年の間は4-5と変化が大きい一方,経験10年以上の看護師であっても“少し変化がある”とするものが3名中2名おり,組織内での役割の変化に伴い仕事への姿勢,価値観も変化し続けいている可能性が示唆された(図参照)。
まとめ
変容的学習は,ガン医療への考え方,仕事への姿勢,死生観,幸福感などに強く表れる事が示唆された。それは経験年数が少ない新人レベルから生じるが,エキスパートになっても,継続的に生じていることが示された。職場の役割が変わり困難を感じる業務が変化することで新たな実践知と共に心理的成長が生じる可能性が示唆された。

キーワード
緩和ケア看護/実践知/変容的学習


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