発表

2B-023

大学生における孤独感,死生観と抑うつ傾向の関連性

[責任発表者] 迫田 季優:1
[連名発表者・登壇者] 横田 正夫:2
1:ひだまりこころクリニック, 2:日本大学

目的
死生観は,死への恐怖・不安,解放としての死,人生における目的意識などを含む7つの因子から構成されている(平井・坂口・安部・森川・柏木,2000)。そのうちの解放としての死因子と人生における目的意識因子の2因子は抑うつ傾向と相関することが報告されており,孤独感と抑うつ傾向には相関関係があることが示されている(Ouellet & Joshi, 1986)。また,大原(1982)は,自殺者の心理的特徴として孤独感を挙げており, 自殺未遂し入院しているうつ患者の多くが,孤独感から逃れるために自殺を試みたと語った(長田・長谷川,2013)。これらのことから,孤独感,死生観と抑うつ傾向には関連があることが示唆されるが,これらの関連を数量的に検討したものは少ない。その中で迫田(2017)は,孤独感が死生観を媒介することでどのように抑うつ傾向に影響を与えるのかについて検討し,孤独感から抑うつ傾向へ向かうパス,孤独感が人生における目的意識を媒介し抑うつ傾向へ影響するパスが有意であることを示した。ここではこのモデルをもとに,人生における目的意識が高められると抑うつ傾向が低下すると仮定し,実験的に検討する。
方法
調査参加者 私立大学の大学生1~4年生84名を対象とした(女性54名,男性30名,平均年齢20.80歳,SD=1.48)
手続き 対象の大学生が受講する講義時間内に実験参加者を募集し,質問紙への回答と記述課題への取り組みを求めた。
質問紙・課題の内容 質問紙は,1.フェイスシート,2.死生観尺度のうち人生における目的意識を測定する4項目(平井ら, 2000),3.自己評価式抑うつ性尺度(福田・小林,1973)から構成された。記述課題は,a. 数独課題とb. 人生における目的意識に関する記述を促す課題の2つであった。課題時間は8分間とし,記述課題bでは,参加者にこれまでもっとも意欲的に取り組んできたことを1つ挙げてもらい,挙げてもらったことに意欲的に取り組んできた理由と良かったことの記述を求めた。記述課題aとbをランダムに配布し,記述課題後,再度2と3の質問紙に回答を求めた。
倫理的配慮 本研究は学内の倫理審査委員会の承認を得た。
結果
記述課題aに取り組んだ群を統制群,記述課題bに取り組んだ群を実験群とし分析を行った。人生における目的意識得点と抑うつ性尺度得点を算出し,2要因(実験群,統制群)×2水準(課題前・後)の分散分析を行った(Table 1)。結果,実験群において,記述課題後の人生における目的意識得点が有意に高くなり(F(1, 82) =5.51, p<.05),統制群については,課題前後における人生における目的意識得点の有意な差はみられなかった。この結果から,課題bは,人生における目的意識に関する記述を促していると考えらる。次に,2要因×2水準の分散分析を行い記述課題前後での抑うつ性尺度の得点変化について検討した(Table 1)。その結果,実験群において,記述課題後に抑うつ性尺度得点が有意に低下していた(F(1, 82) = 11.44,p <.01)。さらに詳しく記述課題前後の抑うつ性尺度得点について検討するため,福田・小林(1973)の示した主感情,心理的随伴症状,生理的随伴症状の3症状群の合計得点を用いて2要因×2水準の分散分析を行った(Table 2)。その結果,生理的随伴症状については,実験群において,課題後に生理的随伴症状項目の得点が低くなる傾向が示され(F(1, 82) = 2.93, p<.10),統制群においては,有意に高くなる傾向が示された(F(1,82) = 8.30, p<.01) 。
考察
人生における目的意識に関する記述を行った実験群では,記述課題後に人生における目的意識得点は有意に高くなり,抑うつ性尺度得点は有意に低下することが示された。このことから,人生における目的意識が高められると抑うつ傾向が低下するという仮説は支持されたと考えられる。人生における目的意識に関する課題を行うことで,自身のポジティブな側面に注意を促し,自己の内界に向いていた意識が外在化されることにより,課題を行っている間は,自身へのネガティブな自己注目は抑制されていることが推察できる。その
結果として,抑うつ傾向が低減するという過程があると考えられる。

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