発表

2A-033

大学コミュニティのパブリック・スティグマと学生相談機関の利用を勧める意識の関連
専門的な心理的援助に対する大学キャンパス風土の知覚に着目して

[責任発表者] 木村 真人:1
1:大阪国際大学

問題と目的 本研究は,大学コミュニティにおける専門的な心理的援助を受けることに対する知覚されたパブリック・スティグマ(以下,パブリック・スティグマ)が,大学生に学生相談機関の利用を勧める意図に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。木村(2018)は大学教職員を対象に,パブリック・スティグマと学生に学生相談機関の利用を勧める意図との関連を検討した結果,パブリック・スティグマは自身の援助要請態度および学生相談機関利用のメリットの評価を媒介して,学生相談機関の利用の意図に影響を及ぼすことを明らかにした。大学生においても,学内の友人に学生相談機関の利用を勧める際に,パブリック・スティグマが影響することが予想される。
方 法調査協力者 在籍する大学に学生相談機関が存在する大学生500名(男女各250名)からの回答が得られた。学年は,1年次生118名,2年次生124名,3年次生100名,4年次生142名,5年次生以上16名であった。学生相談機関の利用経験がある学生は80名,友人に学生相談機関の利用を勧めた経験がある学生は49名,利用を勧めようと考えたことはあるが結局勧めなかった学生は22名であった。
調査項目 1)学生相談利用に対する態度:学生相談利用のメリット尺度(木村・水野,2008)を用いた。2)パブリック・スティグマ:Stigma Scale for Receiving Psychological Help(Komiya et al., 2000)の日本語版(Ina & Morita, 2015)を大学コミュニティにおける知覚されたパブリック・スティグマを測定するために用いた。3)専門的な心理的援助に対する援助要請態度:ATSPPH-SF(Fischer & Farina, 1995)の日本語版(Ina & Morita, 2015)を用いた。4)大学生の学生相談の利用を勧める意識:学生相談機関の利用を勧める意図(木村・水野,2010)の項目を用いた。5)その他(性別など)。
調査手続き 株式会社クロスマーケティングの大学生モニターを対象にweb上で上記の内容について調査を実施した。
結果と考察 本研究で用いた尺度の要約統計量および相関変数はTable 1である。本研究での学生相談の利用を勧める意図に関する仮説モデル(Figure 1)を検証するため,男女別で共分散構造分析を実施した。その結果,モデルの適合度はχ2=17.293(df=6),GFI=.986,AGFI=.930,RMSEA=.061であった。大学におけるパブリック・スティグマの知覚は男性では援助要請態度を媒介して,女性では援助要請態度および利用のメリットを媒介して,利用を勧める意図に影響を及ぼしていた。学生相談機関の利用経験も,援助要請態度および利用のメリットを媒介して,利用を勧める意図に影響を及ぼしていた。つまり大学生が,所属する大学コミュニティは専門的な心理的援助に対するスティグマを有していると知覚しているほど,専門的な心理的援助を受けることに対する態度がネガティブで,学生相談利用のメリットを低く評価し,その結果として,学生相談の利用を勧める意図が低くなることが示唆される。したがって,大学教職員の場合と同様に(木村,2018),大学生が評価する学生相談利用のメリットを高めるアプローチとともに,大学全体の専門的な心理的援助や学生支援に対する風土にアプローチしていく必要があるだろう。

引用文献Fischer, E. H., & Farina, A. (1995). Attitudes toward seeking professional psychological help: A shortened form and considerations for research. Journal of College Student Development, 36, 368-373.
Ina, M. & Morita, M. (2015). Japanese university students’ stigma and attitudes toward seeking professional psychological help. Online Journal of Japanese Clinical Psychology, 2, 10-18.
木村真人 (2018). 大学教職員の大学生に学生相談機関の利用を勧める意識―学生相談利用のメリット,専門的な心理的援助に対する態度,パブリック・スティグマに焦点をあてて― 日本心理学会第82回大会,ほか

付 記 本研究はJSPS科研費16K17347の助成を受けたものです。

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