発表

2A-026

アサーションスキルが大学生の精神的健康に及ぼす影響

[責任発表者] 佐々木 香:1
[連名発表者・登壇者] 高橋 恵理子#:2, 松野 航大:3, 根建 金男:4
1:早稲田大学, 2:早稲田大学人間総合研究センター, 3:武蔵野大学, 4:早稲田大学人間科学学術院

 目的
 青年期は,生活環境の大きな変化やアイデンティティの確立という発達課題に取り組む中で,疎外感や不安定感が生じる。これらを低減するために,青年期は心理的離乳に伴って友人と親密な関係を築き,その中で体験の共有や悩み事を打ち明ける。しかし青年期にある現代の大学生は,表面的で不適応的な友人関係を築く傾向にあり(岡田,2007),このことが適応障害や抑うつといった対人関係上の臨床的問題の原因となり得る。友人関係の希薄さの原因として,大学生のコミュニケーションスキル低さが挙げられている。また,コミュニケーションスキルの中でも,「自分も相手も大切にした,率直な自己表現やコミュニケーション」(平木,1993)であるアサーションスキルとの関連性が示唆されている(杉浦・服部・杉浦,2015)。しかし,アサーションスキル研究においては,実証的な研究が少なく,日本固有のコミュニケーションである「あえて主張しない」などの状況に応じた認知的要因が考慮されていないことが問題として挙げられている(用松・坂中,2004)。
 そこで本研究では,青年期である大学生を対象とし,状況に応じた認知的能力と行動的アサーションスキルおよび認知的アサーションスキルが精神的健康に及ぼす影響を検討することを目的とする。
 方法
 調査対象者:4年制私立大学生232名(男性128名,女性104名,平均年齢20.25歳,SD=1.25)を対象とした。
 調査時期:2017年10月から11月に,集団形式による調査を実施した。
 質問紙の構成:(1)アサーション行動尺度(金子・今井・加藤・常本・城,2010):アサーションをコミュニケーション場面における対人的行動と捉え,行動的アサーションスキルを測定する。点数が高いほど,行動的アサーションスキルが高いことを示す。(2)アサーティブ・マインド・スケール(伊藤,1998):コミュニケーション場面におけるアサーションの認知的要因として,アサーティブでいることをどのように捉えているかという認知的アサーションスキルを測定する。点数が高いほど,認知的アサーションスキルが高く,アサーションに対して肯定的であることを示す。(3)日本版精神健康調査票28項目版(中川・大坊,1985):精神的健康を測定する。中川・大坊(1985)にならい,リッカート法で採点をした。点数が高いほど,精神的健康が低いことを示す。(4)対人的疎外感尺度(杉浦,2000):対人的疎外感を測定する。点数が高いほど,対人的疎外感が高いことを示す。(5)友人関係満足感尺度(加藤,2001):友人関係満足度を測定する。点数が高いほど,友人関係に対する主観的な満足度が高いことを示す。(6)メタ認知尺度(石井,2007):状況に応じた認知的能力を測定する。点数が高いほど,対人関係場面における行動に密接に関わるその場に応じた認知的能力が高いことを示す。
 全ての尺度において,概ね高い信頼性が確認されている。
 倫理的配慮:本研究は,早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2017-197)。
 結果
 状況に応じた認知的能力と行動的・認知的アサーションスキルが精神的健康・対人的疎外感・友人関係満足度に影響を及ぼすという仮説モデルを共分散構造分析によって検証した。仮説モデルから有意でないパスを除いた結果,適合度指標は良好な値が得られた(GFI=.993,AGFI=.974,RMSEA=.000;Figure1.)。
 考察
 本研究の目的は,状況に応じた認知的要因を考慮し,行動的・認知的アサーションスキルが精神的健康に及ぼす影響を検討することであった。共分散構造分析の結果,行動的アサーションスキルのみが精神的健康・対人的疎外感・友人関係満足度に直接的な影響を与えた。これは,コミュニケーションスキルが会話などの直接的なコミュニケーション場面における行動と密接に関連している個人特性であるためと考えられる(藤本・大坊,2007)。しかし本研究から,実際のコミュニケーション場面において表出される行動的要因だけでなく,その場面における認知的要因も大学生の精神的健康に影響を及ぼす可能性が示唆された。そのため,青年期に対して行動的アサーションスキルの獲得だけでなく,認知的アサーションスキルおよびコミュニケーション場面における認知的能力の向上を促すアサーショントレーニングの開発が必要であると考えられる。
 今後の研究においては,各変数の下位尺度間の関連性および影響や,行動的・認知的要因ごとの検討が求められる。さらに,主要な友人関係を分類し,その差異から精神的健康への影響を明らかにしていくことが望まれる。

キーワード
アサーションスキル/メンタルヘルス/大学生


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