発表

2A-023

重度障害児の文字・言葉学習における視線を用いた発達支援

[責任発表者] 福田 龍見:1
[連名発表者・登壇者] 佐藤 優聖#:2, 畑山 莉菜#:2, 山路 真琴#:2, 吉田 弘司:2
1:比治山大学, 2:比治山大学

目的
 脳性まひやSMA(脊髄性筋萎縮症)などの障害や難病によって,四肢に運動障害があったり,筋運動の障害のために発話が困難な子ども(重度障害児)においては,会話や文字を書くなどの意思伝達障害も引き起こし,他者とのコミュニケーションが取れないことにより学校生活が難しく,自立や社会参加が困難であることが多い。また,幼児期には様々な事物対する言葉を覚えることで,概念が構成されていく。このような概念形成は,日常生活の中では遊びや絵本,テレビ視聴など様々な活動の中でなされるが,脳性まひ児など障害をもつ子どもにおいては,積み木を積み重ねたり,本をめくったりなどができないため,経験の幅が大きく制約されることが多い。近年,視線入力装置を用いて,このような重度障害児のための教材を作成し,文字や言葉,数などの学習を支援しようという試みが行われるようになってきた。しかしながら,そのような試みはまだ一般化しているとはいいがたい。そこで本研究では,こども療育施設と協働して,視線を用いて文字や言葉を学習できるプログラムを開発している。これらの学習プログラムを用いて,重度の心身障害をもつ子どもに対して,文字や言葉に関する学習の支援を試みた。

方法
 参加者 子ども療育施設を卒園した特別支援学校児童(1名)が参加した。本児童はアテトーゼ型脳性まひをもち,粗大運動能力分類システム(GMFCS)のレベルV(自立移動や電動移動が不能で手動車椅子によって移送される水準)に相当する重度の運動障害をもっていた。コミュニケーションに関しては,児をよく知るものであれば発声や表情で簡単な意思疎通(Yes/No程度)を図ることができるレベルにあった。児は療育施設に在園しているとき(2016年,5歳)から本研究に参加しており,2018(7歳)まで約3年間にわたって本研究に参加した。
 装置 Tobii社のゲーム用視線追跡装置(Eyetracker 4C)をPCに接続し,児の視線をリアルタイムに計測することで,教材内での項目選択を行った。
 手続き 研究では,視線で動く教材プログラム(Figure 1)を作成した。このプログラムは,療育現場や家庭で対象児が自分の視線で任意の文字や絵が描かれたカードを選択することで,PCがそれを音声で読み上げるものとした。児の言葉の理解については,月に1回療育施設に診療に訪れた際に評価した。2016年7月から2017年7月26日までは施設職員が作成したパワーポイント教材(2肢-4肢選択)を,2018年3月7日から2018年6月22日までの3回は本研究で開発した教材プログラム(46肢選択)を用いた。

結果
 本稿では,ものの名前である言葉の習得状況を評価した結果を紹介する(Figure 2)。本研究では作成したプログラムを2018年1月末にPCごと自宅に設置して,2月中,対象児童に遊んでもらい,3月から計測を始めた。その結果,従来は正答率が9~27%であった言葉理解テストの成績が直後には69%に向上し,本研究のアプローチが一定の効果をもつことがわかった。

考察
 本研究は,こども療育施設と協働して,視線を用いて文字や言葉を学習できるプログラムを開発し,重度の心身障害をもつ子どもに対して,学習の支援を試みることを目的とした。
 研究対象児は,特別支援学校でひらがなが学習できるのに6年生まではかかるだろうと評価されていた。しかし,視線による学習プログラムを使った結果,2018年3月7日のテスト結果では明らかに言葉についての学習成果が認められた。その後,対象児の調子や気分によってデータのばらつきがみられたが,本研究の結果は,視線による教材を用いることで,重度の障害のために行動が制約されたり,コミュニケーションに問題をもつ子どもであっても,言葉学習の機会を提供し,その発達を支援できる可能性を示唆している。

キーワード
重度障害児/学習支援/視線


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