発表

1D-035

内的経験への対処に関するメタ認知的信念が能動的注意制御機能およびディタッチト・マインドフルネスに及ぼす影響

[責任発表者] 藤島 雄磨:1
[連名発表者・登壇者] 梅田 亜友美:1, 池田 寛人#:1, 高橋 恵理子#:2, 根建 金男:3
1:早稲田大学, 2:早稲田大学 人間総合研究センター, 3:早稲田大学 人間科学学術院

目的
 近年,Wells (2009) が開発したメタ認知療法 (metacognitive therapy:MCT) が注目されている。MCTでは,ある出来事や思考にとらわれている状態である自己注目が,精神疾患を維持すると考え,適度な距離で思考と付き合えている状態であるディタッチト・マインドフルネス (detached mindfulness:DM) の促進を目指す。そのために,主に2つのアプローチがとられる。1つ目は,自己注目の生起・維持要因であるメタ認知的信念への介入である。2つ目は,能動的注意制御機能を向上させる注意訓練技法 (attention training technique:ATT) である。能動的注意制御機能の向上は,DMを促進すると考えられており (今井・熊野・今井・根建,2015),ATTは短期間で様々な精神疾患に効果を示すといわれている (Fergus & Bardeen, 2016)。先行研究によって,内的経験への対処に関するメタ認知的信念がATTの効果に影響を及ぼしうることが示された (藤島・梅田・池田・高橋・根建,2019)。しかし,内的経験への対処に関するメタ認知的信念がMCTの理論的基盤である自己調節実行機能 (self-regulatory executive function:S-REF) モデルの中でどのように位置づけられるのかについては明らかにされていない。また,能動的注意制御機能およびDMとの関連についても明らかにされていない。そこで,本研究では, S-REFモデルに基づき,内的経験への対処に関するメタ認知的信念,能動的注意制御機能,DMの関連性を明らかにすることを目的とした。
方法
 大学生および大学院生162名を対象に,一斉法による調査を実施した。未回答および回答漏れを除外した147名 (男性67名,女性80名,年齢20.07±1.28歳 (平均±SD)) を分析対象とした。なお,本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された (申請番号:2018-098)。
調査材料
①内的経験への対処に関するメタ認知的信念尺度(the Meta-cognitive Beliefs about Coping with Inner Experiences Scale:MBCS;藤島・梅田・池田・高橋・根建,2019)
 「対処の有用性」4項目,「対処への固執性」5項目,「対処の非機能性」5項目の計14項目から構成され,6件法(「1.全くあてはまらない」~「6.非常によくあてはまる」)で回答を求めた。一定の信頼性と妥当性を有することが確認されている。
②Voluntary Attention Control Scale(VACS ; 今井・熊野・今井・根建,2015)
 「選択的注意」「転換的注意」「分割的注意」の3つの側面から能動的注意制御機能を測定する尺度である。6項目の計18項目で構成され, 6件法(「1.全くあてはまらない」~「6.非常によくあてはまる」)で回答を求めた。十分な信頼性と妥当性を有することが確認されている。
③Detached Mindfulness Mode Questionnaire (DMMQ:今井・今井・熊野,2012)
 思考と適度に距離をおけている状態であるDMの程度を測定する尺度である。1因子8項目からなり,6件法(「1.全くあてはまらない」~「6.非常によくあてはまる」)で回答を求めた。十分な信頼性と妥当性を有することが確認されている。
結果
 Figure 1に示された仮説モデルを作成し,共分散構造分析を行った。モデルは棄却されず (χ2 = 12.81, df = 12, p = .38), 分析の結果から, 十分なモデル適合度が示された (GFI = .98, AGFI = .95, CFI = .98, RMSEA = .02)。対処の有用性は, 対処の固執性に有意な正の影響を及ぼし (β=.37, p < .001), 対処への固執性は対処の非機能性に有意な正の影響を及ぼしていた(β=.63, p < .001)。そして,対処の非機能性は転換的注意とDMに有意な負の影響を及ぼしていた (順に,β=-.23, p < .01;β=-.31, p < .001)。
考察
 本研究の結果から,不快な思考や感情などに対処することは有益であると考えている場合,対処への固執につながり,結果的に対処が機能しない状態につながるといえる。そして,不快なことから注意を切り替えることが困難となり,思考と適度な距離で付き合えなくなってしまうと考えられる。本研究によって,対処の有用性が最終的には転換的注意およびDMの減弱を導くというメカニズムが示された。そのため,対処の有用性について,MCTの効果の持続という観点からも変容することには意義があるだろう。以上のことから,内的経験への対処に関するメタ認知的信念は,S-REFモデルに沿って了解可能であり,MCTの効果に影響しうる要因として位置づけられることが明らかになったといえる。今後は,内的経験への対処に関するメタ認知的信念がどのような臨床像と関連しているのかについて明らかにする必要がある。

キーワード
メタ認知的信念/能動的注意制御機能/ディタッチト・マインドフルネス


詳細検索