発表

1D-034

マインドワンダリングが抑うつ傾向に及ぼす影響
―実験課題中の瞳孔径変化量から―

[責任発表者] 幸路 悠也:1
[連名発表者・登壇者] 永田 陽子:2
1:駒澤大学, 2:駒澤大学

目的
 マインドワンダリング(Mind-wandering:以下MW)とは課題と無関係な事柄に注意が逸れて心がさまよう現象である(Smallwood & Schooler, 2006)。MWは今この瞬間に注意を向けるマインドフルネス(mindfulness)とは逆の状態であると考えられ,抑うつ傾向との関連が示唆されている(Murphy et al., 2013)。MWの発生を予測できる可能性が示唆されている生理指標として瞳孔径がある。瞳孔径の変化は集中を司る青斑核の働きを反映するとされ, MWの発生と瞳孔径の変化に関連があることが示唆されている(Konishi et al., 2017)。課題実施中の瞳孔径を測定することで実験参加者の注意集中を間接的に観察し,MWの発生しやすい個人の傾向について検討することが可能であると考えられる。本研究ではMWが抑うつ傾向に対して影響を及ぼしているかという点について課題実施中の瞳孔径の変化から検討した。
方法
実験参加者 実験参加者は大学生27名(男性6名, 女性21名)であった。このうち, 瞳孔径データが50%以上欠損していた場合と実験課題が正確に表示されなかった実験参加者のデータを除外し, 最終的に「0-back条件」で大学生15名(男性3名, 女性12名), 「1-back条件」で大学生17名(男性3名, 女性14名)のデータが得られた。
質問紙 抑うつ傾向を調べる目的としてベック抑うつ質問票(以下BDI-II,小嶋・古川,2003)を使用した。またMW傾向を調べる目的としてMind-wandering Questionnaire(以下MWQ,梶村・野村,2016)を使用した。
刺激・実験課題 実験課題として「n-back課題」を実施した。「n-back課題」とは目標刺激が提示されたときに, n個前の刺激に対しての判断を求める課題である。実験参加者に対して目標刺激が提示されたときに条件ごとに異なる反応をすることを求めた。「0-back条件」では目標刺激が提示されたときに奇数か偶数かを判断させた。「1-back条件」では目標刺激が提示されたときに1つ前の数字が奇数か偶数であったかを, 実験参加者の記憶に基づいて判断させた。また実験課題実施中の思考状態について調べることを目的として「思考プローブ」を表示した。「思考プローブ」は青色の背景で黄色の文字で, 「画面が変わる直前にあなたの注意はどこにむいていましたか?下の選択肢から選んで回答してください」という文章を表示した。また質問文に対する回答として, 「課題とは無関係なこと(偶数ボタン)」と「その他(スペース)」と「課題について(奇数ボタン)」の三種類の選択肢を表示した。1回の実験で「思考プローブ」は5回表示した。
実験装置 瞳孔径の測定はCambridge Research System社製の眼球運動測定装置High-Speed mk2を使用して行った(サンプリングレート:250Hz)。またMatlab 2012a, Psychtoolbox3, Video Eyetracker toolbox(Cambridge Research System社製)などのプログラムによって, 実験課題の提示, 課題についての反応内容と反応時間の記録, 瞳孔径のデータの記録などの実験試行の制御を行った。
手続き 書面と口頭で実験参加についての説明を行った。その後, 頭部の位置を固定してから瞳孔径のキャリブレーションを行った。瞳孔径のキャリブレーションは, Matlab2012a上で実行したVideo Eyetracker toolboxを使用して行った。実験実施中の光源は課題提示用のモニターと, 管理用のモニターの2つであった。2回の実験条件が終了した後, 実験参加者に質問紙に回答させた。本研究は駒澤大学「人を対象とする研究」に関する倫理委員会の承認を得て実施した(通知番号18-17)。
結果と考察
 Spearmanの相関分析を行った。瞳孔径は実験開始直後の数値を基準として変化量を求めた。欠損データを除外して平均し, 1秒当たりの瞳孔径変化量を求め, その後課題実施中全体の瞳孔径変化量を平均して「課題実施中の瞳孔径変化量の平均」を求めた。「1-back条件」における「課題実施中の瞳孔径変化量の平均」と「BDI-II」(Figure 1)で正の相関が認められ(r=.525, p<.05), 「MWQ」との間にも正の相関が認められた(r=.570, p<.05)。また「思考プローブ」における「課題と無関係なことを考えていた」と答えた回数と「BDI-II」とでは両方の実験条件で正の相関が認められた(0-back条件:r=.424, p<.05,1-back条件:r=.521, p<.05)。
本研究の結果から, 課題実施中に「課題と無関係なことを考えていた」と回答する回数が増加すると, 抑うつ傾向が強まるという結果になった。また, 抑うつ傾向が強まることで「課題実施中の瞳孔径変化量の平均」が大きくなる可能性が示唆された。「課題実施中の瞳孔径変化量の平均」は「MWQ」と正の相関が認められたことから, MWの発生と瞳孔径の変化には関連がある可能性が示唆される結果となった。以上の結果から課題と無関係な思考をするMWの発生の多さと抑うつ傾向には関連があると考えられ, また課題実施中の瞳孔径変化量の平均と抑うつ傾向及びMW傾向の間に関連がある可能性が示された。

キーワード
マインドワンダリング/抑うつ傾向/瞳孔径


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