発表

1D-029

ぬいぐるみを抱くことによる気分状態の変化

[責任発表者] 川﨑 智紗:1
[連名発表者・登壇者] 石川 健介:1
1:金沢工業大学

目的
 抑うつに対して,ぬいぐるみを抱くことの効果を検討した研究に菊川(2016)がある。菊川(2016)では,女子大学生を対象に,4日間,1日約15分の手続きを実施している。この結果,ただぬいぐるみを抱きしめていた群で介入前の抑うつ得点が介入後に有意に減少していた。
 しかし,菊川(2016)では,女子学生を対象としていたため,男子学生に対する効果は検討されていない。また,ぬいぐるみを抱く条件のみのため,ぬいぐるみを抱く効果であるのか,ぬいぐるみと同じような素材・大きさのものを抱く効果なのかを分離できていない。
 本研究では,男子学生・女子学生ともに対象にし,ぬいぐるみを抱く条件,クッションを抱く条件,何も抱かない条件の3条件を設定することで,上記の問題を検討した。
方 法
研究参加者 30名(男性15名,女性15名)の大学生であった。
素材 ぬいぐるみ(ドウシシャ だるいぬ 五代目ボス),クッション(モッチモチクッションマシュマロ )を用いた。ぬいぐるみの大きさは幅30×奥行45×高さ25㎝であった。クッションの大きさは直径40×高さ約10㎝であった。ぬいぐるみとクッションの素材は同じであった。
質問紙 感情状態を測定する自己評価式質問紙のPOMS2 日本語版成人用短縮版(以下POMS2と示す),課題について評価する課題評価用紙であった。
手続き 各条件に研究参加者を10名(男性5名,女性5名)配置した。研究参加者の自宅で,5分の課題を月曜日から金曜日まで計5日間実施してもった。研究プログラムの流れは図1の通りである。課題実施中は,躯幹をまっすぐ伸ばした直立姿勢で実験を行ってもらった。
結 果
 記入漏れなどの回答を除き,有効回答者合計28名(男性14名,女性14名)を分析対象とした。条件1を実施した研究参加者の群をぬいぐるみ群(N=8),条件2を実施した研究参加者の群をクッション群(N=10),条件3を実施した研究参加者の群を統制群(N=10)と呼ぶ。各群において,性別を要因とした検定を行ったところ有意な結果は得られなかったため,以後,男女の結果を統合して分析する。群ごとにPOMS2で得られた気分状態の得点(AH怒り-敵意,CB混乱-当惑,DD抑うつ-落ち込み,FI疲労-無気力,TA緊張-不安,VA活気-活力,F友好,TMDネガティブな気分状態を総合的に表した得点)を従属変数として,3(群)×2(前後の測定)の2要因の分散分析を行った。その結果,TA得点において,群(ぬいぐるみ群とクッション群)と介入前後の測定の要因で交互作用が見られた。Figure 2 は,縦軸はTA得点,横軸は群を示している。白色棒は介入前に測定した数値の平均,灰色棒は介入後に測定した数値の平均である。エラーバーは標準誤差である。
考 察
 結果より,ぬいぐるみを抱きしめることで緊張と不安が和らぐことがわかった。ただしクッションにも同様の効果が見られた。これは,ぬいぐるみとクッションの素材が同じであることに起因すると考えられる。
 本研究ではぬいぐるみ群でDD得点が下がっていたが,同様に他の群でも下がっており,ぬいぐるみを抱きしめること特有の効果があるとは言えない。菊川(2016)の研究は,姿勢やその他の刺激の統制が行われていない。このため菊川(2016)の結果は,ぬいぐるみを抱きしめる効果以外の影響も混入している可能性が十分ある。ぬいぐるみを抱きしめるだけの効果はむしろ,TAの低下にあるのかもしれない。
 今後,ぬいぐるみやクッションの抱き心地の良し悪しや肌触りによって効果の差があるか検討を行っていく。
文 献
菊川紗希(2016). 女子大学生におけるぬいぐるみを抱くこ
 とによる抑うつの変化 跡見学園女子大学付属心理教
 育相談所紀要,13,91-108.

キーワード
ぬいぐるみ/気分状態


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