発表

1D-028

ネガティブなライフイベントの意味づけ過程と後悔感情の関連

[責任発表者] 浅見 稜子:1
[連名発表者・登壇者] 五十嵐 透子:2
1:メンタルクリニックいたばし, 2:上越教育大学

 目 的
 特定の出来事について,それが起きた意味を探求し理解や解釈を考えることを意味づけ(meaning making)という(Park, 2010)。意味づけの研究では,喪失体験や悪性新生物の発症,あるいは危機的体験などのネガティブな出来事が,健康状態に否定的な影響をおよぼすだけでなく,肯定的な影響をおよぼすことに関して検討されてきた。当初は意味づけと精神的健康への影響に焦点が置かれていたが,個人差をより明確化するために出来事の体験前から体験後までの意味づけのプロセスの研究が進められている。Park(2010)は意味づけのプロセスをモデル化し,個人の価値観や目標である全般的意味(global meaning)と,起こった出来事に対する評価である状況的意味(situational meaning)の不一致を認知することでストレス反応が起こり,不一致を軽減するために意味づけを行うことが動機づけられる流れを提唱した。
 また,このような不一致状態には後悔(regret)を体験する場合がある。後悔とは意思決定に基づく結果が望ましくなかった際に抱く認知的な不快感情であり,現状と他の選択肢を比較する思考を含むことから(Kahneman & Miller, 1986),仮定世界の再構築の試みである意味づけの過程に関連することが考えられる。本研究では,意味づけ過程と後悔の関連に注目し,適応的な意味づけを導く要因を検討することを目的とした。意味づけ過程についての新たな知見を探ることで,精神的に不適応な状態からの回復,健康の保持だけでなく促進への臨床心理学的かかわりの一助となると考える。

 方 法
調査対象:北信越地方の国立大学に所属する大学生と大学院生,および専門学校生の計480名(男性210名,女性270名;平均年齢20.61歳;SD=1.38)のデータを分析に用いた。
調査時期:2018年9月下旬から10月中旬
調査方法:質問紙調査
調査内容: ①デモグラフィック要因:性別,年齢,学年。②意味づけ:意味づけにおける同化・調節因子(堀田・杉江,2013)の14項目(5件法)。③反すうと省察:Rumination-Reflection Questionnaire日本語版(高野・丹野,2008)の24項目(5件法)。④後悔感情:後悔尺度日本語版(上市・楠見,2010)の20項目(5件法)。⑤精神的健康:抑うつ幸福感尺度(McGreal & Joseph,1993)の25項目(5件法)。土田(2013)が作成した日本語版を用いた。
倫理的配慮:本研究は上越教育大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。

 結 果
相関係数の検討:各尺度間の相関係数を算出したところ,意味づけと後悔では,同化因子は“他の選択肢への注目”(r=-.11,p<.05)と“否定”(r=-.28,p<.001)の間に弱い負の関連がみられた。一方,調節因子では“他の選択肢への注目”(r=.16,p<.001)と“追求”(r=.10,p<.05)との間に弱い正の関連がみられた。RRQと後悔では,反すう因子はすべての下位因子との間に中程度の正の関連がみられ(他の選択肢への注目 r=.48; 否定 r=.30; 追求 r=.39,すべてp<.001),省察因子は“否定”との間に弱い負の関連がみられた(r=-.12,p<.01)。
後悔感情が意味づけに影響を及ぼす影響の検討:後悔がRRQを介して意味づけに影響し,精神的健康に影響を及ぼすというモデルを検討するために,構造方程式モデリングによるパス解析を行った(Figure 1)。省察をモデルから除外して分析したところ,十分な適合度が得られた(χ2 (12)=89.33, p<.001, GFI=.96, AGFI=.88, CFI=.93, RMSEA=.12)。

 考 察
 本結果から,後悔は反すうと正に関連し,主観的幸福感とは負に,抑うつ傾向とは正に関連することが示されたが,後悔は反すうを介して調節と関連し,主観的幸福感と関わることが示された。このことから,後悔は反すうを引き起こし精神的に不適応な状態を促進する可能性が高いが,意味づけを試みることにより精神的健康が促進される可能性が考えられた。しかし後悔は,適応的な自己注目である省察との関連はみられず,振り返りにつながらないことが示唆された。後悔には自己や過去の選択,過去の出来事を受け入れることの難しさがかかわっていることが考えられ,後悔と省察との間に関連がみられなかった要因となった可能性がある。
 本研究の限界としては,因果関係について明らかにできない点やストレスフルな体験の内容を統制できない点が挙げられる。今後は意味づける出来事や後悔する内容の個別性を考慮に含め,現象に対する意味づけが個人がその人らしく生活を送るために担う役割と,期待と結果の一致あるいは不一致状態の関連要因を多角的に検討することが求められる。

キーワード
意味づけ/後悔感情/省察


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