発表

1D-026

社会的養護施設従事者の養育行動特性と職務に対する肯定感およびバーンアウトとの関連性の検討

[責任発表者] 瀧井 綾子:1
[連名発表者・登壇者] 伊藤 大輔:1
1:兵庫教育大学

【目的】
 社会的養護とは,厚生労働省によって「保護者のない児童や,保護者に看護させることが適当でない児童を,公的責任で社会的に養育し,保護するとともに,養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」と定義されている。社会的養護の種類として,家庭環境で行われるものと,児童養護施設などの施設で行われるものの2つに大別でき,日本では,施設養育の占める割合は8割を超えていることが特徴である。しかしながら,施設環境における児の養育を想定した実証研究はほとんど行われていない現状がある。そこで,瀧井・伊藤(2018)は,社会的養護施設従事者による養育に関する研究を推進するため,信頼性と妥当性を持った養育行動に関する評価尺度を開発している。
 また,社会的養護施設入所児の特徴として,施設入所児の大半が被虐待経験を有することが挙げられる(厚生労働省,2015)。被虐待児は複雑性PTSDなど,非常に複雑な症状を呈するとされている。そのため,児への支援は困難を極め,増沢(2009)は,被虐待児に関わる臨床現場では支援者の「バーンアウト以上の状況」がみられることから,その対応策が急務である。なぜなら,子どもの養育に関して,両親の精神的健康面が子どもの行動および情緒に影響を与えることが報告されており(Kahn et al., 2004),施設養育に適用させた場合,支援者を支援するチームの精神健康状態が,入所児の健康状態に影響を与えることが考えられるためである。さらに,社会的養護施設職員の,0~3年での離職率の高さが報告されている(増沢ら,2016)。養育者の頻繁な変化が被養育児の愛着形成などの点において悪影響を及ぼすことが報告されていることから(Tizard et al., 1978),施設従事者の早期離職が,入所児の状態改善を阻害する要因となることが考えられる。
 そこで本研究では,社会的養護施設従事者の養育行動と,入所児の状態に影響を与えると考えられる従事者自身の心理的状態(職務に対する肯定感,バーンアウト)との関連性を検討することを目的とする。
【方法】
調査協力者および調査手続き 全国の社会的養護施設25施設に従事する職員477名に対して,郵送による質問紙調査を行った。有効回答数は456であった。
調査材料 (1)社会的養護施設従事者の養育行動尺度(瀧井・伊藤,2018)。「子どもの状態観察とそれに基づく支持的関わり」「将来を見越した問題解決への協同経験主義的関わり」「支援者の状況依存的関わりと一方的叱責」「日常的な時間と体験の共有」「生活態度と社会的規則の指導」の5因子から構成される。31項目,4件法。(2)職務満足測定尺度(撫養ら,2014)の下位因子「仕事に対する肯定的感情」の改変版。11項目,5件法。(3)バーンアウト尺度(久保ら,1992)。「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感」の3因子から構成される。17項目,5件法。(4)職場ストレッサー尺度(小杉ら,2004)。「質的負荷によるストレッサー」「量的負荷によるストレッサー」「部下に対する責任によるストレッサー」の3因子から構成される。23項目,5件法。
倫理的配慮 回答は自由意志で行うものとし,回答しない場合でも不利益は生じないことを記載する等の倫理的配慮を行った。
【結果と考察】
 社会的養護施設従事者の養育行動尺度の因子構造を基に,クラスタ分析を行った結果,6群分類が適当であると判断された(Figure 1.)。次に,養育行動特性と支援者自身の心理状態との関連性を検討するため,上記クラスタ分析にて抽出された群を独立変数,職務に対する肯定感,バーンアウト尺度および職場ストレッサー尺度の下位因子を従属変数とした一元配置分散分析を行った(Table 1.)。「全般低関わり型」はバーンアウト症状と満足感や達成感ともに他の群と比較して有意に低かった。以上から,社会的養護施設という過酷な職場において,入所児との関わりを持たなくすることでバーンアウト状態が悪化することは防げるものの,満足感や達成感といったポジティブな側面は低く,「子どもの状態観察とそれに基づく支持的関わり」や「日常的な時間と体験の共有」に関する養育行動をとることが,施設従事者の精神健康状態を良好に保つことにつながることが示唆された。

キーワード
養育行動/職務に対する肯定感/バーンアウト


詳細検索