発表

1D-022

大学生におけるポルノグラフィ利用と問題的な利用に関する実態

[責任発表者] 岡部 友峻:1,2
[連名発表者・登壇者] 高橋 史:3, 伊藤 大輔:1
1:兵庫教育大学, 2:信州大学(前所属), 3:信州大学

  【目的】
 ポルノグラフィ(Pornography; 以下ポルノ)とは,性的な行為等を露骨に表現した文学・映画・絵画・写真・動画のことである。ネット上のポルノは,いつでも,手軽に,誰でも利用することが可能であり(Cooper, 1998),世界のアクセス数30位以内に,ポルノサイトがランクインしているように,ポルノ利用が世界的な現象となりつつある。一方,ポルノ利用をコントロール出来ず,過度に利用してしまうことで日常生活に困難を及ぼす状態である問題的なポルノ利用(Problem Pornography Use; 以下PPU)が数多く報告されている(Kor et al., 2014)。PPUは,ICD-11で新たに追加された強迫的性行動症のサブタイプとして考えられており,強迫的性行動症が新しく診断項目に追加されたこともあり,性の衝動制御障害の関心は今後高まることが予想される。Reid et al.(2012)は,強迫的性行動症は青年期の発症割合が高いと報告しているものの,PPUに関するこれらの先行研究はどれも諸外国で実施されたものであり,本邦の現状を論じた研究は見受けられない。
 そこで,本研究では,日本の大学生を対象に,ポルノ利用やPPUの実態を明らかにする。

  【方法】
対象者
 関東甲信越地方の4年制大学に在籍する20歳以上の大学生及び大学院生158名を対象に無記名式インターネット調査を実施した。欠損値を含む回答を除外し,計150名(男性86名,女性64名,有効回答率=94.9%,平均年齢=21.48歳,年齢範囲20-26歳)を分析対象とした。
測定材料
1. デモグラフィックデータ 対象者の年齢,性別について回答を求めた。
2. ポルノグラフィ利用 利用頻度として「過去1カ月の間で,ポルノグラフィを利用した日は何日ありましたか」,利用時間として「ポルノグラフィを利用する日では,平均してどのくらいの時間ポルノグラフィを利用していますか(分)」という質問への回答を求めた。
3. ポルノグラフィ利用不全度 「ポルノグラフィ利用が制御できないことがありますか」,「この6カ月間以上,制御できないポルノグラフィ利用をくりかえしていますか」,「制御できないポルノ鑑賞によって,生活に支障が出ていますか」という3項目の質問それぞれに対して「はい/いいえ」で回答を求めた。
調査手続き
 心理学に関連する講義中及び,SNSを利用した縁故法によって,調査案内を行った。「性と行動に関する調査」であることを伝え,調査サイトにリンクしたQRコードを呈示し,自由な時間でのアクセスを求めた。
倫理的配慮
 本研究は,信州大学教育学部研究委員会による倫理審査および承認を受けて実施された(管理番号:H30-17)。

  【結果】
日本の大学生のポルノグラフィ利用量
 まず,過去1ヶ月間のポルノ利用日数(5日間毎)をFigure1に示す。ポルノを1日以上利用する人は106人(有効回答者の70.7%,平均日数12.11日±8.21,平均利用時間44.60分±30.48)であり,そのうち男性の平均日数は13.19日,女性の平均日数は8.22日であった。次に,過去1か月間のポルノ利用が0日の回答をポルノ利用無し,ポルノ利用不全度の3項目のうち1項目でも「はい」と答えた場合を,問題あるポルノ利用とし,3項目全てに「いいえ」と答えた場合を,問題ないポルノ利用とした。その結果,問題あるポルノ利用は25人(1日以上利用する人の23.6%)であり,ポルノ利用不全度3項目全てに該当した人は5人(1日以上利用する人の4.7%)であった。

  【考察】
 本研究の目的は,青年期である大学生を対象として,日本におけるポルノ利用やPPUの実態を明らかにすることであった。結果,過去1ヶ月の間にポルノを利用した大学生は70.7%存在し,ポルノ利用日数は諸外国の先行研究の結果と概ね一致していた。一方,ポルノ利用時間については,先行研究によってばらつきはあるものの,諸外国よりも僅かに長時間利用している傾向があった。このことから日本人大学生も習慣的に,ポルノを利用することが明らかとなった。また,利用不全度3項目全てに回答した人は4.7%存在し,問題的なポルノ利用を抱える個人が本邦においても一定数存在する可能性が示唆された。
 諸外国では,PPUを適切に評価する尺度が開発されている現状を考慮すると,本邦においても信頼性と妥当性の保証された尺度を開発することが今後の課題である。

キーワード
ポルノグラフィ/強迫的性行動症/大学生


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