発表

1C-034

「受験ストレスと家族関係について」

[責任発表者] 鈴木 翔子:1
[連名発表者・登壇者] 宇佐美 桃子:1, 渡辺 恭子:1
1:金城学院大学

【目 的】
現代は「大学全入時代」と呼ばれ,進学先の大学を選択しなければ希望者全員が大学に進学ができる時代と言われている。しかし,文部科学省が発表した平成29年度の選抜者実施状況によると,志願倍率はそれぞれ国立大学が4.0倍,公立大学が5.4倍そして私立大学は8.3倍であり,受験生の志望する大学に偏りがあると考えられる。志望が集中する大学を受験する受験生にとっては,現在でも熾烈な受験競争は存在していることが推測される。富田ら(2017)は,大学受験に伴う睡眠不調や心気不調を訴える受験生は少なくないと述べ,受験ストレスを示している。また受験を背景にした事件も起きており,受験生の抱える問題はより複雑かつ深刻になっていると考えられる。昨今では大学受験はライフイベントの一つであると熊倉(1991)や東(2004)が先行研究で述べていることからも,大学受験期の受験ストレスを軽減することや受験生をサポートしていくことには意義があると考えられる。
これらをふまえて,本研究では家族機能や自己効力感,自律支援が受験ストレスにどのような影響を与えるのか基礎的研究を行うことを目的とする。
【方 法】
・調査対象者:大学受験を経験した大学生
・調査方法:大学生に大学受験直前期を振り返ってもらい質問紙法により以下のような調査を実施した。
①フェイスシート
(受験方法・受験直後の満足度・現在の親子関係)
②家族機能測定尺度(草田・岡堂1993)
③親からの自律性援助測定尺度(桜井2003)
④高校生用進路決定自己効力感尺度(浦上1995)をもとに一部文言を改定
⑤ストレス反応尺度<SRS-18>(鈴木ら1995)
【結 果】
本研究の有効回答は,女子283名,男子55名であった。平均年齢は19.56(±2.44)歳であった。尺度構成を検討するため,それぞれの質問紙に関して,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った上で,信頼性を確認した。その結果,「家族機能測定尺度」は『凝集性』『適応性』の2因子,「親からの自律性援助測定尺度」は『統制型』と『尊重型』の2因子,「高校生用進路決定自己効力感尺度」は『進路決定意志』『進路展望力』『情報収集能力』の3因子,そして「ストレス反応尺度」は『不機嫌,怒り』『不安,抑うつ』『無気力』の3因子となった。上記の尺度構成で,相関分析を行い,その後,各変数間の間の因果関係を検討するために共分散構造分析を行った。Figure1が共分散構造分析の結果である。なお,『凝集性』と『適応性』は因子相関が高かったため,潜在変数の『家族機能』としてまとめた。


【考 察】
共分散構造分析の結果から,親が『統制型』の家庭であると,全ての受験ストレスが高められることが示された。統制型は“親が子どもに親の価値観を押し付ける”といった親の意志で子どもをコントロールする家庭であり,子どもは自律性や自主性を阻害された感覚を抱くと考えられる。このように意見や意志を受け入れてもらえない子どもは自尊感情も低く,親との意見の相違に苛立ちを抱えたり,自信の無さから不安を抱えたり,また根気が続かない無気力という受験ストレスを,より抱えやすいと考えられる。
次に,『家族機能』が機能すると進路に関する自己効力感の3因子が高められることが示された。宮嶋(2006)の研究から,家族機能が機能している家庭では,子どもは親から適度な期待や受容をされていると考えられる。また,三好(2011)の研究でも,適切な家族機能は基本的信頼感を育むと述べられている。以上より,自分の意見を家族から受け入れてもらえるという家族機能が適切に機能している状態では,“行きたい大学”や“将来の志望”,“そのための具体的な行動”を自分自身で考え選択できる能力を高めると考えられる。加えて,『家族機能』が機能していると「自律支援」の『統制型』を低下させることが示された。
さらに,進路に関する自己効力感の『進路決定意志』は,受験ストレスの『無気力』を低めることが示された。このことから,自分が希望する進路を選択できたり明確な目標があることは,無気力というストレスを低下させると考えられる。
よって,受験生の抱えるストレスの軽減には,『統制型』に偏らない親の養育態度が重要であり,家族機能を高めるとともに,進路に関する自己効力感を向上させることが必要であると示された。このことから受験生本人の支援だけでなく,受験生の親や家族への支援も同時に必要であるといえる。

キーワード
受験ストレス/家族関係


詳細検索