発表

1C-030

体験の回避が就職活動不安とストレスの関係に及ぼす影響

[責任発表者] 上田 紋佳:1
[連名発表者・登壇者] 猪原 敬介:2
1:岡山大学, 2:くらしき作陽大学

目 的

 上田・猪原(2017)は,ある個人が感じた思考や感情,感覚などを悪いものであるととらえ,それらを感じないようにしたり,排除したり,逃れようとする試みである体験の回避(experiential avoidance)に着目し,大学4年生を対象に,体験の回避傾向が就職活動不安と就職活動の関係に及ぼす影響について検討した。2017年7月に調査を実施した結果,進路探索行動の多寡において,体験の回避と就職活動不安の交互作用がみられらた。体験の回避傾向が高い場合は就職活動不安と進路探索行動の間に正の関係がみられた。このように,進路探索行動と就職活動不安の関係において,体験の回避傾向が調整変数としてはたらくことが示された。
 しかしながら,調査は7月に実施され,すでに内定を得て就職活動を終えた者も調査協力者に含まれており,就職活動不安を測定する上で,測定時期が適切でなかったことが考えられる。そこで,就職活動が3月に解禁されることを踏まえ,本研究では,大学3年生を対象に2月に調査を実施することによって,そのような時期の影響を統制した状況で,就職活動不安と就職活動との関係について検討する。
 また,上田・猪原(2017)では,就職活動不安は情報探索行動を促進するというポジティブな側面がある一方で,就職活動の長期化と関連するというネガティブな側面もあることが報告されている。そこで,本研究では就職活動不安と精神的な健康の関係に対する,体験の回避傾向の影響についても検討することを目的とする。

方 法

参加者 調査はインターネット調査会社によって「あなたご自身に関するアンケート」として2019年2月に行われ,一般企業を志望し,現在就職活動中の180名の大学3年生が回答した。
質問紙 Change Agenda Questionnaire(CAQ)(嶋・富田・高橋・熊野,2018),就職活動不安尺度(松田・永作・新井,2010),就職に関する情報探索行動尺度の短縮版(矢崎・斎藤,2011),進路探索行動に関する項目(樋口・塚脇・蔵永・井邑・深田,2008)の11項目のうち,合同説明会に関する項目をインターンシップに関する項目に変更したもの,精神的健康度を測定するK10(古川・大野・宇田・中根,2003)を用いた。CAQでは,確信度を測定するCAQ_believability(CAQ_b)と行動の程度を測定するCAQ_avoidance(CAQ_a)の両方で測定した。

結 果 

就職活動不安と就職活動との関係
 不安が就職活動にどのような影響を与えるのかを検討するため,情報探索行動,進路探索行動,就職活動満足度を目的変数として,階層的重回帰分析を行った。Step 1では就職活動不安,Step 2では,就職活動不安,CAQ_b,CAQ_a,Step 3では就職活動不安,CAQ_b,CAQ_a,および交互作用項を投入した。分析の結果,就職活動満足度を目的変数とした場合のみ,就職活動不安の標準化偏回帰係数が有意な負の値であり(b= -.45, p <.01),それ以外の有意な関連はみられなかった。
就職活動不安と精神的な健康の関係
 就職活動不安と精神的健康の関係に体験の回避傾向がどのような影響を与えるのかを検討するため,K10を目的変数として,階層的重回帰分析を行った。Step 1では就職活動不安,Step 2では,就職活動不安,CAQ_b,CAQ_a,Step 3では就職活動不安,CAQ_b,CAQ_a,および交互作用項を投入した。分析の結果,就職活動不安の標準化偏回帰係数のみが有意な値であった(b= .44, p <.01)。

考 察

 本研究では,就職活動不安および体験の回避傾向が就職活動や精神的健康に及ぼす影響を,本格的な就職活動が解禁される直前の大学3年生を対象に検討したが,就職活動不安の負の影響しかみられず,体験の回避傾向の影響はみられなかった。まず,体験の回避傾向が就職活動不安と就職活動の関係に及ぼす影響については,先行研究の上田・猪原(2017)で得られた結果とは異なり,体験の回避傾向が調整変数として機能するという結果が得られなった。その原因として,測定時期の影響が考えられる。本研究では,就職活動が解禁される直前の2月に調査を実施したが,多くの就職活動生にとっては,まだ十分に就職活動を行った状態ではなかったことが考えられる。今後は就職活動が本格化した時期に調査を行うことが望ましいが,その場合,調査協力が得られにくいという課題もある。

主な引用文献
松田侑子・永作 稔・新井邦二郎(2010). 大学生の就職活動不安が就職活動に及ぼす影響── コーピングに注目して── 心理学研究, 80, 512-519.
嶋 大樹・富田 望・高橋まどか・熊野宏昭(2018). Change Agenda Questionnaireの作成と信頼性および 妥当性の検討 行動医学研究 23,103-110.
上田紋佳・猪原敬介(2018). 体験の回避が就職活動不安と就職活動の関係に及ぼす影響 ルーテル学院研究紀要 51,41-51.

キーワード
就職活動不安/ストレス/体験の回避


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