発表

1C-028

コラージュ制作における気分変化及び質的差異の検証?箱庭制作と比較して?

[責任発表者] 坂口 龍也:1
[連名発表者・登壇者] 岡本 直子:2
1:立命館大学, 2:立命館大学

 コラージュ療法とは, 気になった雑誌や写真などの1部分を切り抜き, いくつかの切り抜きを1枚の台紙に貼り付けていく心理療法であり, 箱庭療法と同様に様々な領域で実践され, 表現療法の一技法として定着している。
 心理臨床の現場で多用されている両技法がもたらす心理的効果は類似しており, その効果が実証されている。中でも箱庭療法よりも利便性の高いコラージュ療法は,あらゆるストレス状況における適用, 及び発展が期待されうる。
 本研究では, コラージュ制作における気分変化とインタビューで得られる言語的表現の質的差異を, 箱庭制作との比較を通して検討を行い, セルフケア技法としての汎用性を高めることを目的とした。
 調査参加者は8名(男性4名, 女性4名)であった。なお, 調査時における年齢は21.13歳(男性21.25歳, 女性21歳, SD=1.25, 範囲20~24歳)であった。調査の流れとしては, 振り返りインタビューを含めたコラージュ・箱庭制作と総合インタビューから成る計3回の調査を実施した。質問紙は, スクリーニングのための精神的健康尺度(GHQ28)と制作前後の気分変化を測定するために, 一次的気分尺度(TMS)を用いた。材料としては, 箱庭療法用具1式(縦57cm, 横72cm, 高さ7cm)の外側はこげ茶色, 内側が青く塗ってあり,砂が3分の1以上入っている砂箱を用いた。箱庭で用いる玩具は参加者共通の物とした。コラージュ制作を行うため, 白色八つ切り画用紙, 切り貼りの際に用いるはさみ,スティック糊, ウエットティッシュを用意した。切り貼りを行う素材としては, 写真や絵, キャプションなどを取り混ぜた雑誌1冊(「翼の王国 5月号」:ANAグループ機内誌)を用意した。また, 完成した作品を撮影するためにデジタルカメラを使用し, 言語表現を正確に把握するためにICレコーダー(ICD-UX533FA)を用いて録音した。なお, コラージュ制作では制作者が雑誌や広告を見て, 自分で選択したものを切り抜いて構成する(星野, 2006)マガジン・ピクチャー・コラージュ法を用いて実施した。
 初めにコラージ制作前後の気分変化について, それぞれのTMSの各尺度の平均値を算出し, t検定を行い群間での比較を行った。その結果, 緊張(p<.01), 混乱(p<.01), 抑鬱(p<.05), 疲労(p<.01)は制作前よりも制作後に有意に得点が減少し, 活気(p<.001)は制作前よりも制作後に有意に得点が上昇していた。次に, 箱庭制作前後の気分変化について, それぞれのTMSの各尺度の平均値を算出し, t検定を行い群間での比較を行った。その結果, 混乱(p<.05)は制作前よりも制作後に有意に得点が減少し, 疲労(p<.05)は制作前よりも制作後に有意に得点が上昇していた。また, 緊張・抑鬱・怒り・活気においては有意差は認められなかった。また, KJ法を用いた分析の結果, 両技法とも同様の心理的効果が得られていたものの, 「疲労」や「技法」に関する質的に異なる語りが得られた。
コラージュ制作の場合は最上位の要素カテゴリとして, 【不安】【技法】【カタルシス(気分)】【心理的退行】【自己】【願望】【他者視点】【美意識】の8つを抽出した。一方, 箱庭制作の場合は, 最上位の要素カテゴリとして, 【不安】【技法】【カタルシス(気分)】【心理的退行】【自己】【願望】【他者視点】【美意識】【時間】の9つを抽出した。
 即時的な気分変化の観点からコラージュ制作と箱庭制作を検討した場合, 箱庭療法よりもコラージュ療法の方が気分変化へ好ましい影響をもたらすことが示された。また, KJ法を用いた質的分析により, 表現数や表現内容の差はあるものの, 先行研究と同様の心理的効果がコラージュ・箱庭制作により生じていたと考えられる。以上の結果から, セルフケア技法の一手法としてのコラージュ療法の活用可能性は示唆された。今後, 質的・量的アプローチを含めた更なる研究が望まれる。

キーワード
コラージュ制作/箱庭制作/セルフケア技法


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