発表

1C-026

斜視・弱視児を持つ保護者のストレス
-アイパッチと眼鏡の比較-

[責任発表者] 上田 智基:1
[連名発表者・登壇者] 岩滿 優美:1, 北里 美和:1, 岩田 遥#:2, 深谷 悦子:1, 石川 均#:2
1:北里大学, 2:北里大学

 目 的
 斜視・弱視治療ではアイパッチや眼鏡を用いるが,治療を受ける子どものみならず,保護者にもストレスがかかりやすい。そこで,斜視・弱視児をもつ保護者を対象に保護者のストレスと性格傾向との関係について調べ,さらにアイパッチ・眼鏡治療に対する保護者のストレスについて質的に検討した。
 方 法
 対象者 対象者は,北里大学病院を含む計4病院の眼科を受診している小学生以下の斜視・弱視児をもつ保護者126名である。そのうち,研究参加に同意し,質問紙を回答した98名の保護者(母親89名,父親8名,祖母1名,平均年齢±SD=38.2±5.1歳,斜視児: 29名,弱視児:52名,斜視・弱視児:17名)を分析対象とした。なお,98名のうち,26名がアイパッチ治療を,76名が眼鏡治療を行っている。
 質問紙 独自に作成した質問項目:基本属性,アイパッチと眼鏡の治療の有無と,そのストレスに対する自由記述などに関する質問項目を作成した。
K6テスト 本尺度は,精神的健康度を測る心理的尺度(Kessier, et al., 2003)の日本語版 (Furukawa, et al., 2008)である。6項目(5件法)で構成されている。5点以上で気分障害と不安障害が軽度であることを示す。
アイゼンク人格目録の日本語短縮版 (Modified Japanese Version of the Short-Form Eysenck Personality Questionnaire,以下MS-EPQとする)本尺度は,Miyaoka, et al.,(1995)がモーズレイ人格目録に基づいて作成した日本語版である。外向性(9項目),神経症傾向(6項目)から構成された4件法である。
 手続き 対象者に研究説明書と質問紙を配布し,質問紙への記入を依頼した。質問紙の返信をもって,研究参加の同意とみなした。なお,本研究は北里大学医学部・病院倫理審査委員会の承認を得ている。
 分析の概略 基本属性,K6得点,MS-EPQ得点,アイパッチと眼鏡の治療の有無について記述統計を算出した。つぎに,K6得点と“基本属性,MS-EPQ”とのピアソンの相関係数を算出した。アイパッチと眼鏡治療のストレスに対する自由記述について,要約的内容分析(Mayring, 2004)をそれぞれ行った。1名の研究者がコードやカテゴリーを抽出した後,その後,2名の研究者が加わり,3名の意見が一致するまで協議を繰り返し,内容的妥当性を検討した。アイパッチと眼鏡とに分けて,全出現個数を100として,それぞれ頻度を算出した。
 結 果 
 K6得点が5点以上の対象者は,14名(14.3%)であった。また,K6得点と神経症傾向との間に正の相関が認められた(r=.32, P<.05)。
 治療のストレスに対する質的分析の結果,アイパッチおよび眼鏡ともに「否定的な感情・行動」(アイパッチでは80.0%,眼鏡では90.6%)と「肯定的な感情・行動」(アイパッチでは20.0%,眼鏡では9.4%)のカテゴリーが抽出された(図1と図2を参照)。「否定的な感情・行動」カテゴリーのアイパッチ治療では,出現頻度の高い順に,保護者の困難感 ,子どもの嫌悪感,外見の問題,不便さの小カテゴリーが認められた。一方,眼鏡では,これら4つに加えて壊れることへの心配,経済的負担,他者から否定的な反応,危険性の小カテゴリーが認められ,壊れることへの心配が最も出現頻度が高かった。「肯定的な感情・行動」カテゴリーのアイパッチ治療では,子どもの積極性,他施設の協力の小カテゴリーが,眼鏡では,子どもの積極性,眼鏡の利点,眼鏡に対する対処の小カテゴリーが認められた。
 考 察
 斜視・弱視児の保護者では,神経症傾向であればあるほど抑うつ的であることがわかった。アイパッチ治療では,保護者の困難感や装着への子どもの嫌悪感,外見の問題が,眼鏡治療では,これらに加えて壊れることへの心配や危険性などがあることがわかった。
 引用文献
Kessler RC, et al., (2003). Screening for serious mental illness in the general population. Archives of General Psychiatry , 184–189.

キーワード
アイパッチ/眼鏡/保護者のストレス


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