発表

1C-024

音楽活動による居場所の確保が自己有用感と対人不安に及ぼす影響
トーンチャイムでの合奏を通して

[責任発表者] 三雲 真理子:1
[連名発表者・登壇者] 田中 さなえ#:1, 村田 圭都#:1
1:梅花女子大学

【目的】
 近年,多くの学生が対人不安を経験している。人は「自分が役に立っている」という自己有用感を得ることにより,居場所感を確保することができ,学校や社会適応に繋がることが明らかにされている(石本,2010)。本研究では,居場所感確保の方法のひとつとして楽器演奏の効果に着目し,トーンチャイムを用いて小集団で合奏を行うことにより対人不安が低減し自己有用感が上昇するか検討した。
【方法】
<調査対象者> 女子大学及び院生27名(平均年齢21.37歳)3人1組のグループを構成し,全9組を対象とした。
<使用質問紙> ①対人不安測定尺度(八木,2004)②自己有用感尺度(石本,2010)③状況別対人不安尺度(毛利・丹野,2001)④新版STAI状態不安尺度(Spielberger, 1970) ⑤合奏満足度尺度(片平,2012) を用い,生理指標として脈拍と血圧を測定した。
<手続き> 週1回1セッションの合奏を,3週間連続計3セッション行った。合奏曲は「ふるさと」を使用し,楽譜はスクリーンで提示した。第1セッション:和音合奏,第2セッション:和音とメロディ,第3セッション:メロディを演奏した。1人2~3本のトーンチャイムを担当し,1本ずつ鳴らせるように配置。楽譜の音符色に対応したトーンチャイムを鳴らすよう教示。各セッションの流れは,質問紙④への回答,脈拍と心拍数の測定,音楽活動後,再び脈拍と血圧測定,質問紙④⑤への回答を求めた。全セッションの開始時と終了時には質問紙①②③への回答を求めた。1回のセッションの所要時間は約30分であった。
【結果・考察】
 対人不安測定尺度の合計得点分布に基づき,27名を3群に分類した(対人不安低群7名,対人不安中群11名,対人不安高群9名)。自己有用感についても尺度得点を用いて3群に分類し,自己有用感低群9名,中群11名,高群7名とした。

<1.セッション進行に伴う合奏満足度の変化>
 対人不安区分ごとに,セッション進行に伴う合奏満足度(肯定的評価・良雰囲気・ぎこちなさ・うまく調整)の変化を検討した。対人不安高群では,セッション進行に伴って,「肯定的評価」が有意な傾向で高まり(1回<3回:p=.053),「ぎこちなさ」(2回>3回:p<.05),「退屈」(1回>3回:p=.062)は有意にあるいは有意な傾向で低下した(図1)。対人不安中群でも「ぎこちなさ」に関しては同様の傾向であったが,「退屈」に関してはセッション進行に伴い上昇した。
 自己有用感区分ごとにセッションに伴う合奏満足度を検討した結果,自己有用感低群・中群においては,対人不安高・中群と類似の結果であったが,自己有用感低高群ではセッション進行に伴って「肯定的評価」「良雰囲気」が低下し,「うまく調整」の上昇が認められた。
<2.全セッション前後の対人不安と自己有用感の変化>
 対人不安高群において,「人前での不安・自己卑下」「大勢の中での気後れ」の全セッション後の得点が開始前より有意に低下した。対人不安低群において,「他者への印象の過剰意識」が全セッション後,有意な傾向で上昇した。
 自己有用感低群においては,「自分が必要とされていると感じる」「自分が役に立っていると感じる」「自分に役割がある」「自分の存在が認められていると感じる」において有意にあるいは有意な傾向で上昇がみられた。自己有用感高群においては,すべての項目において有意あるいは有意な傾向で低下がみられた(表1)。
【考察】
 トーンチャイムを用いた音楽セッションは,高い対人不安を下げ,低い自己有用感を上げるだけではなく,低い対人不安と高い自己有用感を社会的に望ましい程度に調整することが示唆された。

キーワード
自己有用感/対人不安/トーンチャイム


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