発表

1B-032

行動障害を有する子を持つ親の行動分析的知識の検討
知識量と育児困難感との関連

[責任発表者] 岩橋 瞳:1
[連名発表者・登壇者] 宮 裕昭:1
1:市立福知山市民病院

目 的 
近年,行動分析的手法を用いた療育プログラムや,ペアレントトレーニングなどの普及が進んでいる。よって,行動障害を有する子どもの親は行動分析に関する知識に触れる機会が増え,それらの知識を獲得していると推測する。そうだとすれば,それらの親は知識を育児に活かすことができ,その結果として育児困難感が下がるのだろうか。そこで本研究では,行動障害を有する子どもの親の知識を,「子どもに応用する行動原理の知識」を測定するKBPAC(Knowledge of Behavioral Principles as Applied to Children)を用いて調査し,育児困難感との関連を検討する。

方 法
調査対象者 A病院の小児科を受診した行動障害を有する子どもの親80名。親の平均年齢は40.77歳(範囲:30-54)。平均育児経験年数は11.66年(範囲:3-20)。 受診した子どもの平均年齢は9.46年(範囲:3-15)。 
調査方法 子どもが受診した際に親にKBPAC邦訳短縮版の質問紙を配布し,記入後に回収した。いずれも個別で回答する形式で実施した。
調査内容 25設問からなるKBPAC邦訳短縮版(志賀,1983)を基本に,内容を変えずにその文言を筆者らがより適切に修正したものを用いた。各設問には1つの正答を含む4つの選択肢があり,自分自身の考えにより近いものを1つ選ぶよう教示された。無答や複数回答は誤答とみなした。また,質問紙のフェイスシートに,育児困難感を「育てにくさをどの程度感じるか」という質問で「0:全く感じない」~「4:とても感じる」の5段階評価で回答を求めた。
倫理的配慮 回答は任意,無記名であり,個人が同定されないように結果処理されること,結果は学術目的で公表されることを予め書面で提示し,回答の諾否を任せた。

結 果
Figure 1に設問ごとの正答率を,Table 1に志賀(1983)が分類した領域ごとの正答率を示した。
平均正答数は8.7個 (平均正答率:35.0%,SD:3.3)であった。育児困難感は平均2.9 (SD:0.9)であった。育児困難感と正答数の関係を検討するため回帰分析を行った。その結果,1%水準で統計的に有意な結果が得られた(β = 1.16, t (77) = 2.79, p = .006)。
正答率70%以上の設問は番号8(強化子),10(罰),12(行動形成)であり,正答率30%以下の設問は番号2,3,4,6,7,11,14,16,18,19,23,25であった。うち正答率10%以下の設問は番号2(行動除去),4(行動除去),6(行動分析)7(行動分析),11(行動理論),23(行動理論),25(行動形成)であった。

考 察
KBPACの平均正答率は35%に留まった。よって,行動障害を有する子どもの親における行動分析的知識は十分とは言えず,今後さらに知識を獲得するための支援が求められる。
Table1に示した分類を用いた正答率のばらつきをみると,最も高かったのが罰の適切な利用法を問う「罰」,次に「強化子」,その次に「行動形成」が高い傾向であった。最も正答率が低かったのは,行動随伴性や学習理論を問う「行動理論」,次が目標行動や行動観察について問う「行動分析」,その次が消去手続きを問う「行動除去」であった。よって,上述の理解の程度に応じて知識を獲得させる支援を提供することが望ましいと考える。
また,育児困難感の高い親ほど正答率が高い傾向が認められた。このことは,育児困難感が高いほど,専門家から助言を受けたり,行動分析の専門書籍に触れたりすることで,行動分析的知識が獲得されやすくなる可能性を示している。しかしながら,行動分析的知識を持っていても育児困難感を減らすほど実践に活かされていないのかもしれない。今後,育児の中で実践していけるよう,より個別化した親支援プログラムを提供することが求められる。

引用文献
志賀利一 (1983). 行動変容と親トレーニング(その知識の獲得と測定) 自閉症教育研究,6,446-459.

キーワード
行動分析/KBPAC/親


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