発表

1B-031

うつ病に対する心理的学介入を目的としたアプリケーションソフトウェアのレビュー
―App Evaluation Modelを用いて―

[責任発表者] 高階 光梨:1
[連名発表者・登壇者] 鈴木 ひかり#:2, 白塚 龍太郎#:2, 大橋 佳奈:2, 宮下 太陽:2,3, 横光 健吾:2
1:関西学院大学, 2:立命館大学, 3:日本総合研究所

問題
 うつ病は誰にでも起こりえる病気である一方で,思考や行動に影響を与える深刻な精神疾患である(American Psychiatric Association, 2017)。近年,うつ病に対する治療法の一つとして,モバイル端末をはじめとするテクノロジーを用いた心理学的介入の研究が進んでいる(Cuijpers et al., 2017; Grist et al., 2018)。テクノロジーを用いた心理療法は,うつ病に対するスティグマを低減させ(Griffith et al., 2014),時間的・距離的な制限を緩和する可能性が示唆されている(Ritterband et al., 2003)。本邦においてもうつ病に対する心理学的介入や抑うつ症状低減を目的としたアプリケーションソフトウェア(以下,アプリとする)が数多く開発されている。テクノロジーを用いた心理学的支援の発展を考えるにあたって,本邦で利用可能なアプリの現状を把握する必要性がある。そこで,本研究ではわが国で使用可能なうつ病に対する心理学的支援サービスを提供しているアプリの評価および内容の整理を行うことを目的とする。
方法
 検索にはAndroidのオンラインストア(Google Play)を使用した(2018年11月時点)。検索には「うつ」および「うつ病」の用語を用いた。その結果,オンラインストアでの検索によって499件 ,ハンドサーチによって4件の結果が得られ,合計で502種類のアプリが抽出された。適格基準は①「うつ」および「うつ病」という言葉がタイトルまたはウェブ上の説明文にある,②日本語で利用できるアプリである,③うつに対する心理学的支援サービスを提供することを目的としている,であった。適格基準に基づいて,著者のうち2名が独立して各アプリについて評価を行い,アプリ抽出を行った。その結果,25件のアプリが抽出され,評価の対象となった。アプリの評価はAmerican Psychiatric Association(APA)が発表しているApp Evaluation Modelを参考に行われた。
結果
 Risk/Privacy & Security まず,アプリ使用に伴うリスク,プライバシーポリシー,セキュリティに関する評価を行った。評価対象となった25件のアプリのうち,アプリダウンロード前にプライバシーポリシーの閲覧が可能なものは20件(英語表記は6件),ダウンロード後に閲覧可能なものは1件,プライバシーポリシーが示されていないものは4件であった。Evidence 抽出されたアプリのうち,学術論文においてアプリが紹介またはその効果が検証されているものは 5件(20.0%)であった。Ease of Use アプリを使用するためにネット環境を必要としないものは14件(56.0%),ネット環境が無い場合において一部機能が制限されるが使用可能なものは8件(32.0%),ネット環境が無い場合に全く使用できないものは1件(4.0%),評価不能なものは2件(8.0%)であった。Interoperability 電子カルテとデータを共有する機能を有するものは1件(4.0%),データを印刷,エクスポート/インポートできる機能を有するものは2件(8.0%),他のツールとデータ共有が可能なものが4件(16.0%)であった。Main purpose 評価対象となったアプリが担う主な目的をShen et al.(2015)をもとに5つにコーディングを行った。主要な目的が複数ある場合は1つのアプリに対して複数コーディングを行った。心理教育・情報提供を目的とするものは5件(17.9%),症状チェックをはじめとするアセスメントを目的とするものは9件(32.1%),支援リソースの提供を目的とするものは無く,症状のマネジメント(気分状態のみ)を目的としたものは2件(7.1%),治療を目的としたものは12件(42.9%)であった。Technology Component 評価対象となったアプリのうち日常生活下でのモニタリングや記録の機能を有するものは1件(4.0%)であった。また,自動的にデータが収集されるセンサー等の技術が使用されているものは1件(4.0%),ユーザーのデータがアプリ内で可視化されるものは4件(16.0%),マルチメディアが使用されているものは8件(32.0%),アプリ内で報酬がユーザーに与えられるものは3件(12.0%),アプリ内で専門家と接触できる機能を有するものは1件(4.0%),アプリ内で他のユーザーとの接触が可能なものは2件(8.0%)であった。
考察
 本研究では,本邦で利用可能なうつ病に対する心理学的支援サービスを提供することを目的としたアプリの評価および主要な目的のレビューを行った。評価対象となったアプリ25件中,治療を目的としたアプリが一番多く,次いでアセスメントを目的としたもの,心理教育,そして症状マネジメントを目的としたものであった。アプリの中にはプライバシーポリシーが示されていないものや,示されていても日本語での閲覧ができないものも多くあった。今後,アプリを臨床現場やセルフヘルプのために使用する場合,エビデンスレベルだけでなく安全性や使いやすさなどの項目に関しても十分留意する必要がある。

キーワード
うつ病/mHealth/モバイルアプリケーション


詳細検索