発表

1B-030

妊娠前からの子育て支援の必要性
―大都市と地方大学における質問紙調査から―

[責任発表者] 柿原 久仁佳:1
1:北星学園大学

問題と目的
 少子高齢化と言われる現在,合計特殊出生率1.8を目指して,政府による様々な子育て支援策が実施されている。一方,全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は増加しており,少子化対策として,子どもの数を増やすことだけに焦点を置くのではなく,児童虐待から子どもを守るという視点からの子育て支援も必要である。望まない妊娠や出産などを理由とする児童虐待を防ぐためには,より早期の支援が必要であると考えられる。高校生までは学校で性教育の授業があるが,高校卒業後はそうした知識を得る機会が非常に少ない。塚本(2018)は,大学生を対象とした調査から,高校までの性教育が必要であるのは当然のことであるが,妊娠や出産を自分のこととして考えることができるようになる年齢に,改めて学ぶ機会があることは,妊娠や出産をより肯定的なものとして捉える機会になり得るのではないかと述べている。しかし,調査した地域が,性教育に力を入れている地方都市であったことなどから,一般的な大学生の回答であると結論づけることは難しい。
 そこで,本研究では,塚本(2018)と同様の調査を大都市圏の大学生を対象に実施し比較すること,また,大学生のもつ知識に影響を与える要因や今後必要とされる子育て支援を検討することを目的とする。
方法
(1) 実施日時
 先行研究で実施した時期と合わせ,2019年4月下旬に質問紙調査を実施した。
(2)対象
 大都市圏の大学生101名 先行研究と同様,高校を卒業して間もない1年生を対象とした授業において調査をおこなった。
(3)質問紙の内容
 塚本(2018)で使用した項目を改編して作成した。
(4)倫理的配慮
 本研究は,北星学園大学の研究倫理審査委員会の承認を得ており,回答したくない場合はしなくてよい旨を質問紙上に明記するとともに,口頭でも伝えた。
結果
(1)先行研究との比較
 塚本(2018)との比較をするため,「排卵は月経開始の何日前か」「妊娠しやすい時期はいつか」等と妊娠にかかわる知識の得点を従属変数とするt検定をおこなったところ,有意な差は見られなかった(t(166)=1.38,p =.169, d=.11)。
(2)希望子ども数・出産年齢
 将来子どもをもつことを希望しない者を含めた将来の希望子ども数は1.66人であった(M=1.66.SD =.97, N=99)。子どもをもつことを希望する者のみの希望子ども数は,2.10人であり(M=2.10. SD=.51, N=78),性別による差はみられなかった(t(76)=.48, p=.630)。また,子どもをもつことを希望する場合の希望出産年齢は,27.22歳であった(M=27.22,SD =1.95,N =74)。希望出産年齢においても,性別による差はみられなかった(t(21)=.45,p =.656, d=.10)。子どもをもちたくない理由としては,経済的な負担や子育てに対する不安が半数以上を占めた。
(3)妊娠・出産にかかわる知識の得点に影響を与える要因
 性別,性教育の記憶の有無,および将来子どもをもつ希望の有無を独立変数,知識の得点を従属変数としてt検定をおこなったところ,性別および性教育の記憶の有無において有意な差がみられなかったが(t(96)=1.10, p=.273,d =.11;  t(95)=1.01,p=.318,d=.10),将来子どもをもつ希望の有無においては,「子どもが欲しい」と回答している学生の方が,知識にかかわる得点が高いという結果であった(t(96)=2.06,p=.043,d=.21)。
(4)子育てに必要だと考えられるもの
 子育てに必要だと考えられるものとして,お金と回答したグループとそれ以外(子どもへの愛情等)に回答したグループとに分けたところ,将来子どもをもつ希望の有無との間には関連がみられなかったが(χ2(4)=4.66,p=.155),お金と回答したグループの方が,子どもの希望人数が少なくなる傾向が示唆された(t(93)=1.89,p=.061,d=.19)。
考察
 先行研究の結果と有意な差がみられなかったため,大都市圏の学生と地方の学生とで妊娠・出産にかかわる知識に差があるとは言えないことが示された。どの地域においても,妊娠や出産がより身近な問題となってくる年齢層を対象とした妊娠前からの子育て支援が必要とされているのではないだろうか。
 「妊娠する可能性の高い時期はいつか」などという項目において,性教育を「覚えている」とした学生の約半数が誤った回答をしており,高校卒業後にも,正しい知識を伝える機会が必要であると考えられる。また,将来子どもをもつ希望のある学生の方が,知識に関する得点が高いという結果が示され,望まない妊娠を防ぐためには,現時点での希望の有無にかかわらず,知識がもてる働きかけが必要であろう。
 また,子どもをもちたくない理由として,経済的な負担や子育てに対する不安を理由として挙げている者が半数以上であった。子どもをもつかもたないかは,必ずしも希望通りになるものではないが,個人が自由に選択できるものである。情報過多の現代,正しい知識を得て,自分の将来を設計できるよう支援していくことが,今後求められる子育て支援の1つである考えられる。
引用文献
塚本久仁佳(2018).妊娠前からの子育て支援の必要性-短期大学生への質問紙調査を通して- 子どもロジー,22,16-23

キーワード
妊娠前/子育て支援/虐待予防


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