発表

1A-035

衝動的行為と反すうが抑うつを強める過程
行動的衝動性に対する潜在変数アプローチを適用して

[責任発表者] 長谷川 晃:1
[連名発表者・登壇者] 杣取 恵太:2, 西村 春輝:3, 服部 陽介:4, 国里 愛彦:5
1:東海学院大学, 2:専修大学, 3:量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部, 4:京都先端科学大学, 5:専修大学

問題と目的 反すうと衝動性は共に抑うつと関連する要因であるが,その2つの関連については知見が一致していない。質問紙で測定された衝動性は反すうとの関連が認められやすく,例えば,ネガティブな緊急性とポジティブな緊急性(ネガティブ感情やポジティブ感情を喚起した際に軽率な行動を抑制する困難さ)が4週間後の反すうの増加を予測し,反すうはネガティブな緊急性の増加を予測することが示されている(Hasegawa et al., 2018)。一方,反すうはStop Signal課題(SST)といった実験課題で測定された行動的衝動性と有意な関連が認められていない(Aker et al., 2014)。本研究では,近年,実験課題を用いて心理学的な個人差を測定する研究で採用されている潜在変数アプローチと,個人の特性がストレッサーを導くと仮定するストレス生成仮説を基にして,行動的衝動性が反すうや抑うつを強める過程について検討を行う。
方 法 30歳以下の大学学部生・大学院生176名(男性89名,女性87名,平均年齢20.38歳,SD = 1.88)を対象に実験を行った。実験ではインフォームドコンセントの取得後に,参加者に年齢,性別,国籍について回答を求めた。
 続いて,パソコンでGo/No-go課題(GNG),SST,Conners Continuous Performance Test 3rd Edition(CCPT)を実施した。GNGは,画面に緑色か赤色の丸のいずれかが提示され,緑色の丸が提示された時のみキーを押す課題である。120試行から構成され,緑色と赤色の丸が提示される割合は7:3であった。SSTは,画面に左向きか右向きの矢印のいずれかが提示され,どちらの向きの矢印が提示されたのかをキーを押して回答するが,矢印の提示後に音が鳴った際にはキー押しを抑制する課題である。矢印が提示されてから音が鳴るまでの時間は,参加者がキー押しの抑制に成功した場合には50ms遅延され,失敗した場合には50ms短縮される。1ブロックは64試行から構成され,3ブロック実施した。音が鳴らない試行と音が鳴る試行の比率は3:1であった。CCPTは,画面に14種類のアルファベットが1つずつ提示され,X以外のアルファベットが提示された際にはキーを押す課題である。全360試行から構成され,X以外のアルファベットが提示される試行とXが提示される試行の割合は4:1であった。GNGとCPTでは,キーを押すべきではない刺激が提示された際にキーを押した割合を衝動性の指標とし,SSTでは,音が鳴らない試行におけるキー押しの所要時間から,矢印が提示されてから音が鳴るまでの時間の平均を引いた値を衝動性の指標とした。
 3課題の実施後に,抑うつ傾向を測定するBeck Depression Inventory-Second Edition (以後,抑うつ;小嶋・古川, 2003),反すうの頻度を測定するRuminative Responses Scale (以後,反すう; Hasegawa, 2013),およびストレッサーの経験頻度を測定する対人・達成領域別ライフイベント尺度のネガティブライフイベントの項目群(以後,ストレッサー;高比良, 1998)を含めた複数の質問紙に回答を求めた。最後にデブリーフィングを行い,1500円分のQUOカードを進呈した。なお,本研究は東海学院大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会の承認を得て,とり行われた。
結 果 Mplus 8.1を用いて,完全情報最尤推定法による共分散構造分析を行った。まず,GNG,SST,CCPTの3変数によって衝動的行為という潜在変数を構成し,残りの変数については合計得点を観測変数として分析を行った。衝動的行為は反すうやストレッサーと有意な相関が得られたが(それぞれr = .24, 20, p < .03),抑うつとは無相関であった(r = .14, p = .15)。
 続いて,衝動的行為が抑うつに及ぼす過程について検討を行った。モデルでは,衝動的行為から残りのすべての変数にパスを引き,ストレッサーから反すうと抑うつに,反すうから抑うつにパスを引いた。適合度はχ2(10) = 13.25, p = .22; CFI = .98; RMSEA = .04であった。分析の結果をFigure 1に示した。
 ブートストラップ法(リサンプリング回数10000回)による媒介分析の結果,衝動的行為がストレッサーを介して反すうを強め(β = .07, 95%CI: [.01, .18]),その経路を経て抑うつを強めることが示された(β = .03, 95%CI: [.00, .08])。また,衝動的行為はストレッサーを介して抑うつを強めることが示された(β = .07, 95%CI: [.01, .15])。
考 察 衝動的行為は反すうと正の有意な相関が認められた。このことから,先行研究で行動的衝動性と反すうに関連が認められなかった理由の一端は,1課題で行動的衝動性を測定したことにあると考えられる。また,衝動的行為はストレッサーの増加を介して反すうの頻度を増加させることが示された。衝動的行為の値が強い者は,軽率な行動や攻撃行動を行いやすいためにストレッサーを増加させ,反すうを促すと考えられる。今後は本研究で示唆されたモデルに関する更なる検討を積み重ね,反すうや抑うつの増加を導く過程を特定することが求められる。
※本発表は,部分的にJSPS科研費の助成を受けて行われた。

キーワード
抑うつ/反すう/衝動性


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