発表

1A-034

西日本豪雨被災児童に対する心のケア活動

[責任発表者] 藤吉 晴美:1
[連名発表者・登壇者] 津川 秀夫:1, 藤原 直子:1, 宇都宮 真輝:1
1:吉備国際大学

 目 的
 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)において,岡山県は河川の氾濫や堤防の決壊による浸水被害が発生した。吉備国際大学心理相談室では,被災した子ども達の心のケアを既存の地域連携事業のひとつに組み入れ,高梁市内の小学校で緊急支援を実施した。対象となったA小学校は,児童の3分の1の家庭が床上浸水の被害に遭っていた。本研究では,豪雨発生から3か月間の心のケア活動の内容と成果について報告した。

 方 法
対象者 A小学校全校児童28名および保護者
実施時期 〈第1期〉2018年7月17~31日,〈第2期〉2018年9月5日~10月5日
実施者 吉備国際大学心理相談室相談員(臨床心理士)4名
実施内容
〈第1期〉 
1.ストレスチェックと心理教育(7/19):児童への被災の影響を調べるため,「心の健康調査票小学生版」(窪田ら,2005)を豪雨被災用に一部改変して使用した。その後,被災後の心と体の反応や,それらへの対処について,「子どもの心のケアのために」(文部科学省,2010)を使用して心理教育を実施した。また,「子どもの反応とそれへの対処方法」(福岡県臨床心理士会)を豪雨被災用に一部改変したものを配布し,保護者に心のケアに関する情報を提供した。
2.高ストレス児童への心理面接(7/25):高ストレス児童19名(20項目中3項目以上該当)への個別面接を行った。また,面接を希望した保護者2名へ個別面接を行った。
〈第2期〉
1.ストレスチェックと心理教育(9/5):夏休み明けの児童の状況を捉えるため,第1期と同一の調査票を用いてストレスチェックを実施した。その後,「コミュニティの危機とこころのケア」(日本心理臨床学会HP)を使用し,ストレスマネジメントの実技を練習した。
2.高ストレス児童への心理面接(9/20):高ストレス児童8名(該当項目および自由記述の内容からリストアップされた児童)への個別面接を行った。また,面接を希望した保護者2名へ個別面接を行った。
倫理的配慮 心のケア活動実施に際して,活動の主旨を記した文書をA小学校校長名で全保護者に配布し,活動への了解を得た。また研究発表については,高梁市教育委員会とA小学校校長の承諾を得た。

 結 果
1.ストレス反応数の変化
 心の健康調査票の結果より,該当項目数をストレス反応数とした。児童のストレス反応数の平均は,第1期が5.57(SD=4.56),第2期が2.61(SD=3.37)となった。t検定の結果,有意な差が認められ,児童のストレス低減が示された(t (27)=4.65,p <.01)。
2.自由記述の変化
 第1期では,「早く家に帰りたい」「災害が起きて幸せがなくなった」「1階が浸かった。リフォームにどれだけお金がかかるか不安」など不安定な心理を反映する記述をした児童は28名中10名であったが,第2期では5名に半減した。ただし5名の内容を見ると「おうちが水につかりました。家がはやくなおってほしい」「異常気象なので台風のことが気になる」とあり,ショックを引きずっていることが伺えた。
3.被災の深刻度別にみたストレス反応数の変化
 床上浸水以上を高被災群(n=10),それ以外を低被災群(n=18)とし,2群のストレス反応数を7月と9月で比較した(Fig.1)。2要因の分散分析を行ったところ,群と時期いずれも有意な主効果が認められ(F(1,26)=9.79,p <.05; F(1,26)=18.45,p <.01),交互作用は認められなかった。

  考 察
 本研究において,心のケアを実施する前の7月に比べ,夏休み明けの9月には被災児童のストレスが低減したことが明らかとなった。また被災の深刻度別の検討では,両群とも9月にはストレスが低減していたが,高被災群は依然として高いストレス状態にあることがわかった。
 今回の取り組みでは,児童全員を対象とし早期に関わったことが,自ら心の危機を口にできなかった児童への的確なアセスメントを可能にした。また児童らのストレス状態を客観的に把握することで,学校関係者や保護者らと児童の心理を共有でき,高ストレス児童への早期支援につながった。
 被災後の緊急支援では,生活環境の安定を最優先としながらも,早期に心理的なアプローチを行うこともまた重要であることが示唆された。

キーワード
ストレス反応/緊急支援/心理教育


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