発表

1A-033

因子分析を用いた統合失調症の神経認知機能と社会認知の検討

[責任発表者] 武田 知也:1
[連名発表者・登壇者] 中瀧 理仁#:2, 大田 将史#:2, 松浦 可苗:2, 吉田 玲於奈#:2, 大森 哲郎#:3
1:福山大学, 2:徳島大学病院, 3:徳島大学

目的
 統合失調症の社会的転機の予測因として,神経認知機能と社会認知が注目されている。神経認知機能とは情報を収集,記憶,処理する過程を示し,認知機能として注意,記憶,学習,遂行機能などを含んでいる。一方で,社会認知とは他者の意図や気持ちを理解する能力を含め,対人関係の基礎となる精神活動のことである。神経認知機能と社会認知は異なる機能を表し,神経認知機能が社会認知の基盤となることが提案されている(Greenら,2012)。統合失調症に対する認知リハビリテーションの効果指標として神経認知機能はBrief Assessment of Cognition in Schizophrenia (BACS),社会認知はSocial Cognition Screening Questionnaire (SCSQ)が用いられている。しかし,それら効果指標の独自性や共通性を検討した研究はない。本研究はBACSとSCSQを用いて,神経認知機能と社会認知の因子構造を検討した。

方法
対象者:徳島大学病院精神科外来に通院中の精神症状の安定した統合失調症患者22名(男性=12名,女性=10名,平均年齢=42.64±10.11)を対象とした。なお,本研究の対象者は,Takedaら (2018)と同一である。
臨床症状:陽性症状と陰性症状の測定にはpositive and negative syndrome scale (PANSS)を,抗精神病薬による副作用の測定にはDrug Induced Extra-pyramidal Symptoms Scale (DIEPSS)を用いた。
認知機能:神経認知機能の測定にはBACSを用いた。BACSは言語性記憶,作動記憶,運動機能,注意と処理速度,言語流暢性,遂行機能を測定する。社会認知はSCSQを用いて測定した。SCSQは心の理論,メタ認知,敵意バイアスを測定する。
統計解析:最小二乗法プロマックス回転による探索的因子分析を行なった。そしてスクリープロット法によって因子数を決定した。その後,抽出された因子数によって因子分析を実施した。解析ソフトにはR version3.3.3とR-studioを使用し,packageはpsychを用いた。
倫理的配慮:本研究は,徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。なお,対象者には研究の趣旨を説明し,書面にて同意を得た。

結果
対象者の記述統計をTable1に示す。PANSSの得点の範囲は7-48であり,本研究の対象者の陽性症状は12.14,陰性症状は15.68と精神病性症状は軽度であることが示された。スクリープロット法により2因子が抽出され,2因子基準で因子分析を行なった。その結果,遂行機能の両因子への因子負荷量が0.40を超えなかった。そのため,遂行機能を削除し,再度因子分析を実施した。その結果をTable2に示す。なお,因子間の相関は弱かった(r=0.19)。

考察
 本研究の結果,BACSとSCSQは神経認知機能と社会認知といった異なる因子を測定していることが確認された。そして,神経認知機能と社会認知の関連は弱いことが示唆された。一方で,運動機能は両因子と関連が強いことが示された。Van Hoorenら(2008)は運動速度や正確性と心の理論が強い関連を示しており,本研究の結果と一致している。そのため,社会認知は神経認知機能の中でも運動制御と関連していることが示唆された。

主な引用文献
Takeda T, Nakataki M, Ohta M, Hamatani S, Matsuura K, Ohmori T. (2018). Effect of cognitive function on jumping to conclusion in patients with schizophrenia. Schizophrenia Research.Cognition, 12, 50-55.

キーワード
統合失調症/神経認知機能/社会認知


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