発表

1A-027

心理的引きこもりと社会的活動(2)
-青年期における心理的引きこもりと対人コミュニケーションの就労状況による比較-

[責任発表者] 杉山 明子:1
[連名発表者・登壇者] 桂 瑠以:2
1:横浜国立大学, 2:川村学園女子大学

【目 的】
日本では,社会的引きこもりが大きな課題として取り上げられるようになって久しい.引きこもりの心理的特性(以下,心理的引きこもり)は,これまでにも多くの研究で検討されており,一般青年に内在化する心理的特性と捉えた研究も多くみられる(e. g. 渡部・松井・高塚, 2010).しかし,それらの多くは,大学生を対象にしており,就労者や無職など,学生以外も取り上げた研究はほとんど見られない.また,心理的引きこもりを低減させる要因として,対人関係の構築の重要性が指摘されている(厚生労働省, 2010)が,社会活動の重要な側面である就労形態による比較検討は見られない.そこで本研究では,青年期を対象に,心理的ひきこもり傾向及び対人コミュニケーション量を就労形態別に比較し,その差を検討することを目的とする.
【方 法】
調査時期・対象者 一連発表の(1)と同様である.本研究では,青年期の対象者のみを分析対象とした.
調査内容 (1)心理的引きこもりに関する項目 杉山・井上(2006)の回避傾向尺度36項目について,4件法で回答を求めた.(2)対人コミュニケーション量に関する項目 「家族」「友人」「知人」「近隣・地域で関わりのある人」それぞれについて,1日に直接会って交流している時間を「1:全く交流していない」から「7:6時間以上」の7件法で回答を求めた.(3)デモグラフィック項目 年齢,性別,職業など.職業は,会社勤務,自営業,大学生,主婦,パート・アルバイト,無職など,19項目から回答を求めた.
【結 果】
得られたデータを用いて,心理的引きこもりの各下位尺度(対人苦手感,欠損感,無気力・離人感,脆弱な自己愛,拒絶) ,対人コミュニケーション量の各得点を合計し,尺度得点を算出した.次に,心理的引きこもり,対人コミュニケーション量の就労形態による差異を検討するため,就労形態別に4群に分類した.大学生など6項目を学生群,フルタイムの就労に従事する10項目を就労群,アルバイトなど短時間労働や家族の労働によって収入を得ている2項目をバイト・主婦群,無職群の4群とした.就労形態の4群を独立変数,心理的引きこもりの各下位尺度,対人コミュニケーション量を従属変数とする1要因分散分析を行った.その結果,全ての変数において有意差,有意傾向が認められ,心理的ひきこもりについては無職群が高く,就労群と学生群が低いこと,対人交流については無職群が低いことが示された(Table1).
次に,対象ごとの対人コミュニケーション量を比較するため,就労形態の4群を独立変数,対人コミュニケーション量を従属変数とする1要因分散分析を行った.その結果,全ての変数において有意傾向が認められ,概ね全ての対象において無職群が低いことに加え,就労形態によって対人コミュニケーションの傾向が異なることが示された(Table2).
【考 察】
分析の結果,心理的引きこもり傾向は無職群に高く,学生群,就労群には低いことが示された.このことから,就労形態によって,心理的ひきこもり傾向に違いが見られることが推測された.また,対人コミュニケーション量の比較から,無職群はおおむね低い事だけでなく,就労形態の差異によって,コミュニケーションの対象,つまり質にも差異を生じる可能性が示唆された.いずれも,学生のみを対象にした調査研究では明示されない点であり,本研究の意義を認めるとともに,今後は両者のより詳細な検討を通し,より明確な実態把握が求められる.
引用文献 厚生労働省(2010).引きこもりの評価・支援に関するガイドライン 厚生労働省. 杉山明子・井上果子 (2006) .青年期における回避傾向に関する調査研究-基本的信頼感,養育態度との関連- 心理臨床学研究, 24(4): 419-429. 渡部麻美・松井豊・高塚雄介 (2010).ひきこもりおよびひきこもり親和性を規定する要因の検討 心理学研究, 81(5), 478-484.
注:本研究は,科学研究費補助金(課題番号18K18662)を受けた研究の一部である.

キーワード
心理的引きこもり/対人コミュニケーション/就労形態別比較


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