発表

1A-026

心理的引きこもりと社会的活動(1)
-心理的引きこもりと対人コミュニケーションの世代間比較-

[責任発表者] 桂 瑠以:1
[連名発表者・登壇者] 杉山 明子:2
1:川村学園女子大学, 2:横浜国立大学

目 的
引きこもりの問題は,今日の社会問題の一つとして,就労,教育,福祉などの様々な分野で取り上げられている.引きこもりの心理的特性(以下,心理的引きこもり)は,これまでにも多くの研究で検討されており,心理的引きこもりを疾患ではなく,一般青年に内在化する心理的特性と捉えた研究も多くみられる(e. g. 渡部・松井・高塚, 2010).また,心理的引きこもりの長期化及び高齢化も指摘されているが,心理的引きこもりは,青年期に焦点を当てて論じられることが多く,成人期以降の実態や世代間での差異を検討した研究はあまりみられない.さらに,引きこもりを低減させる要因として,対人関係の構築の重要性が指摘されており(厚生労働省, 2010),家族,近隣の人々,友人といった相手と対人交流を発展させていくことが重要と考えられるが,対人関係と心理的引きこもりの関連について検討した実証的研究は少ない.そこで本研究では,青年期から老年期を対象に,心理的引きこもり及び対人コミュニケーション量の世代間比較を行い,心理的引きこもりと対人コミュニケーション量との関連について検討することを目的とする.
方 法
調査時期・対象者 2018年10月2日から4日に,ネットリサーチ会社のアンケートモニターのうち,18~25歳(青年期群),30~49歳(成人期群),65~79歳(老年期群)を対象に,調査用URLを配信し,Web上で回答を求めた.回答が得られた対象者は2,000名(男性50.0%,女性50.0%; 青年期:800名,平均年齢21.6歳; 成人期:600名,平均年齢41.9歳; 老年期:600名,平均年齢69.3歳)であった.
調査内容 (1)心理的引きこもりに関する項目 杉山・井上(2006)の回避傾向尺度36項目について,4件法で回答を求めた.(2)対人コミュニケーション量に関する項目 「家族」「友人」「知人」「近隣・地域で関わりのある人」それぞれについて,1日に直接会って交流している時間を「1:全く交流していない」から「7:6時間以上」の7件法で回答を求めた.(3)デモグラフィック項目 年齢,性別,職業などについて回答を求めた.
結 果
得られたデータを用いて,心理的引きこもりの各下位尺度(対人苦手感,欠損感,無気力・離人感,脆弱な自己愛,拒絶),対人コミュニケーション量の各得点を合計し,尺度得点を算出した.次に,心理的引きこもり,対人コミュニケーション量の世代別の差異を検討するため,各世代の3群を独立変数,心理的引きこもりの各下位尺度及び対人コミュニケーション量を従属変数とする1要因分散分析を行った.その結果,全ての変数において有意差が認められ,おおむね,青年期が高く,老年期が低いことが示された(Table1).さらに,心理的引きこもりの各下位尺度と対人コミュニケーション量との相関係数を算出した.その結果,全世代において,心理的引きこもりの各変数と対人コミュニケーション量との間に有意な負の相関が認められた(Table2).
考 察
分析の結果,心理的引きこもり及び対人コミュニケーション量は,若年層のほうが高年齢層よりも高い傾向が示された.このことから,発達的変化に伴って,心理的引きこもりや対人コミュニケーションのとり方に違いがみられる可能性が考えられる.また,心理的引きこもりと対人コミュニケーション量に負の相関が示されたことから,対人コミュニケーションが多いほど,心理的引きこもりが低いものと考えられる.今後は,これらの因果関係の検討を行い,心理的引きこもりを予防・低減する要因を検討していくことが課題といえる.
引用文献
厚生労働省(2010).引きこもりの評価・支援に関するガイドライン 厚生労働省. 
杉山明子・井上果子 (2006) .青年期における回避傾向に関する調査研究-基本的信頼感,養育態度との関連- 心理臨床学研究, 24(4), 419-429.  
渡部麻美・松井豊・高塚雄介 (2010).ひきこもりおよびひきこもり親和性を規定する要因の検討 心理学研究, 81(5), 478-484.  
注:本研究は,科学研究費補助金(課題番号18K18662)を受けた研究の一部である.

キーワード
心理的引きこもり/対人コミュニケーション/世代間比較


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