発表

1A-025

子育て期の女性におけるパーソナリティと認知的失敗の関連

[責任発表者] 岩佐 一:1,2
[連名発表者・登壇者] 吉田 祐子#:2
1:福島県立医科大学, 2:東京都健康長寿医療センター研究所

目 的
 日本において,子育て期の女性における家事・育児時間は男性に比して長く過重負担となっている。また子育て期の女性は,児からの要求(例,生理的欲求や不従順行動への対応)に頻繁に対応しなければならない。また,出産後女性は一時的に認知機能が低下しやすいとされている(Meena et al., 2016)。こうした状況において,子育て期の女性は様々な失敗(「認知的失敗」)(Reason, 1993; 山田, 1993)を経験しやすいことが考えられる(例,忘れものをする,人との約束を忘れる等)。これらは母親の精神的健康低下の原因となりうるし,また,家庭内での事故の発生等により児の健康を損なう可能性があり,看過できない問題である。
 本研究では,子育て期の女性を対象として調査を行い,認知的失敗の関連要因(パーソナリティ,夫のサポート,疲労感,余暇・睡眠時間,末子の年齢,養育する児の人数,就労状況)を検討することを目的とする。

方 法
《対象者》 3ヶ月~6歳児を養育する母親を対象としてインターネット調査を行い310人のデータを取得した(常勤職員155人,主婦155人)。
《調査項目》 認知的失敗:「認知的失敗尺度」(Short -Inventory of Minor Lapse)(Reason, 1993)の15項目を翻訳して使用した。日常生活において経験される失敗体験(cognitive failure)を5件法(「ほとんどいつも」~「まったくない」)で回答を求め,単純加算により認知的失敗得点を算出した(値範囲:15~75点)。値が大きいほど,認知的失敗の傾向が高いことを意味する。パーソナリティ:Ten Item Personality Inventory (TIPI-J)(小塩他, 2012)を用いてビッグファイブ(神経症傾向,外向性,開放性,協調性,勤勉性)を測定した。ソーシャルサポート:夫の情緒的サポート項目(「困ったときの相談にのってくれる」,「苦労をねぎらってくれる」),手段的サポート項目(「育児を手伝ってくれる」,「家事を手伝ってくれる」)について回答を求めた。全体的な疲労感について7件法(0~6点)で回答を求めた。値が大きいほど,疲労感が大きいことを意味する。その他,母親の年齢,末子の年齢(0~3歳/4~6歳),児の人数(1人/2人以上),就労状況(常勤職員/主婦),睡眠・余暇時間を用いた。
《倫理的配慮》 本研究は福島県立医科大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号30009)。

結 果
 認知的失敗,神経症傾向,外向性,開放性,協調性,勤勉性の平均値(SD)は,33.84 (11.10),4.41 (1.15),4.46 (1.32),3.65 (1.11),4.76 (0.97),3.83 (1.17)であった。
 認知的失敗の関連要因を検討するため,階層的重回帰分析を行った(表1)。モデル3において,児の人数(β=0.13),疲労感(β=0.23),夫の情緒的サポート(β=-0.14),神経症傾向(β=0.14),協調性(β=-0.12),勤勉性(β=-0.15)が有意な寄与を示した。

考 察
 神経症傾向が高い者は,抑うつや不安となりやすく認知機能が一時的に低下しやすいために認知的失敗が発生しやすい可能性が考えられる。また,同じ失敗をより重篤に知覚しやすいため両者に関連が認められやすい可能性がある。協調性の高い者は他者からの支援を知覚しやすいためサポートを有効に活用でき,認知的失敗が低い可能性が考えられる。勤勉性の高い者は,居宅の整理整頓を行うため,忘れ物などの失敗経験が少ない可能性が考えられる。
 疲労感が高いと認知的失敗が高い傾向が認められた。利用可能な支援(家族・知人によるサポート,公的・私的育児サービス)を最大限に活用し,母親の過重負担を軽減することが必要である。夫の情緒的サポートは認知的失敗と負の相関を示した。職務等により夫が実質的に育児に参加できない場合でも,妻の相談にのる,日頃の努力を労う等の精神面での支援が認知的失敗を少なくする可能性が考えられた。

引用文献
Meena PS他 (2016) East Asian Arch Psychiatry 26:104-108.
小塩真司他 (2012) パーソナリティ研究 21:40-52.
Reason J他 (1993) Baddeley A, Weiskrantz L, (Eds). Attention: Selection, Awareness, and Control. Oxford University Press.
山田尚子 (1993) 心理学研究 63:414-418.
《謝辞》本研究の一部は,福島県労働保健センター「平成29年度産業医学・産業保健に関する調査研究に対する助成」を受け実施した。

キーワード
子育て/認知的失敗/パーソナリティ


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