発表

1A-024

社交不安と対人恐怖における自己・他者注目の相違

[責任発表者] 滝本 健太:1
[連名発表者・登壇者] 松本 圭:2
1:金沢工業大学, 2:金沢工業大学

目 的
 社交不安(Social Anxiety:SA)とは,他者から注目を浴びる社交場面に対する緊張や不安のことを指す。また,社交不安と似た概念として対人恐怖(Taijin-kyofu : TK)がある。これは,自身の視線や外見などによって他者に不快感を与えることへの懸念を含む概念である。両概念は近似しているものの,対人恐怖傾向を有する人が,必ずしも社交不安傾向を有するとは限らないことを示した研究もあり,両概念の特異性もあると考えられる。しかし,これまで両概念の相違について検討した研究は少なく,それぞれの明確な特徴は明らかになっていない。
 そこで本研究では,まず社交不安と対人恐怖を測定する尺度を用いて,両概念の関係を明らかにする。さらに社交不安者の認知的特徴の一つとされている自己・他者注目について(藤原, 2017),社交不安者と対人恐怖者において相違がみられるか検討することを目的とする。

方 法
対象者 大学生196名(男性158名,女性35名,不明3名,平均年齢19.38歳)を分析の対象とした。
質問紙 社交不安を測定する質問紙として,Social Phobia Scale(SPS)とSocial Interaction Anxiety Scale(SIAS)の日本語版(金井ら, 2004)を用いた(いずれも5件法)。対人恐怖を測定する質問紙として,Taijin Kyofusho Scale(TKS)日本語版(Kleinknecht et al., 1997)を用いた(7件法)。自己他者注目を測定する質問紙として,自己・他者意識尺度(辻, 1993)を用いた。自己意識尺度は私的・公的自己意識,他者意識尺度は内的・外的他者意識の下位尺度でそれぞれ構成されていた(いずれも5件法)。
手続き 上記4種類の質問紙を5ページの質問票にまとめ,講義終了後の時間を使って集団実施した。

結 果
 SPS,SIAS,およびTKS,の項目を用いて,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。固有値,寄与率,および,解釈のしやすさを勘案し,2因子解を採用した。第1因子(TK因子)は主にTKSの項目で,第2因子(SA因子)はSPSとSIASの項目で構成されていた。
 上記因子分析の因子得点を用いてクラスター分析を行い,対象者を群分けした。その結果,両因子得点が低いLL群,SA因子得点が高く,TK因子得点が低いSA群,TK因子得点が高くSA因子得点が低いTK群,両因子の得点が高いHH群の4群となった。
 クラスター分析による4群を独立変数,自己・他者注目の下位尺度の合計点を従属変数とした多変量分散分析を行った。その結果,私的自己と内的他者尺度において,群の主効果が有意であった。そこで,尺度毎に分散分析を行った(Fig.1)。私的自己尺度においては,群間に有意な主効果がみられ(F (3,192) = 7.25, p < .05, η²= .10),多重比較の結果,LL群とTK群,LL群とHH群の間にそれぞれ有意差がみられた(いずれもp < .05)。また,内的他者においても群間に有意な主効果がみられ(F (3,192) = 6.84, p < .05, η²= .10),多重比較の結果,私的自己の結果と同様の群間で有意差がみられた(いずれもp < .05)。

考 察
 SPSとSIAS,TKSの3尺度を用いた因子分析の結果,社交不安に関する因子と,対人恐怖に関する因子の2因子解が得られた。因子分析の結果からも,社交不安と対人恐怖が異なる概念であることが示されたといえる。
 また,私的自己意識と内的他者意識において,社交不安,対人恐怖の両方の傾向が低いLL群と,対人恐怖の傾向が高いTK群との間に有意差がみられた。一方で,社交不安の傾向が高いSA群とLL群には有意差がみられなかった。自己注目は社交不安に特徴的な傾向とされている。しかし,今回の結果から,社交不安者の自己や他者への注目には対人恐怖傾向がより強く影響を与えている可能性がある。

引用文献
金井嘉宏ら (2004). Social Phobia ScaleとSocial
 Interaction Anxiety Scale日本語版の開発 心身医学,
 44, 841-850.
Kleinknecht, R.A. et al. (1997). Cultural factors in
 social anxiety. Journal of Anxiety Disorders, 11,
 157-177.
藤原裕弥 (2017). 社交不安における自己注目と他者注目 
 安田女子大学紀要, 45, 23-32.
辻平治郎 (1993). 自己意識と他者意識 北大路書房

キーワード
社交不安/対人恐怖/自己・他者注目


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