発表

3C-022

避難所の快適性が避難行動に及ぼす影響

[責任発表者] 元吉 忠寛:1
1:関西大学

目 的
 水害発生時における住民の行動を検討した研究では住民が避難情報を入手しても必ずしも適切な避難行動を取らないことが指摘されている(片田ほか, 2003)。そして,避難行動を導くためには住民に危機意識を形成させることが重要であるとされている(及川ほか, 2005)。しかし近年の研究では,リスク認知が人々の防災行動に与える影響はそれほど大きくないことが明らかになってきた(e.g., Solberg et al., 2010)。元吉(2016, 2017)では,避難行動要支援者(幼い子ども,高齢者や障がい者)と同居する家族に対して,避難メッセージに,自己スキーマと一致する情報(e.g., 高齢者や障がい者と一緒にお住まいの方は,速やかに避難を開始してください)を提示することによって,避難行動意図が高まることをシナリオ実験によって検証した。また,特に女性において避難に要するコスト意識が,避難行動を妨げていることを明らかにした。現在の日本の避難所は多くの場合,学校の体育館などであり,プライバシーも確保されておらず,空調設備が整っているところも少ない。このような状況のままで,災害時の避難率を高めることは困難であろう。元吉(2018)は,避難行動のコストをどう減らすかという社会的な工夫が必要であると指摘している。
 そこで本研究では,避難所の快適性に関するメッセージを提示した場合に,人々の避難行動意図が高まるかどうかを実証的に検証する。

方 法
調査時期および調査協力者
 2019年11月にインターネット調査会社にモニター登録している成人(N =55,241)に回答を求めた。本調査の前に,スクリーニング条件として,(1)自宅が台風や集中豪雨により浸水することがあると思う,(2)自宅が浸水する可能性がある際に安全な避難場所を決めている,という二つの質問に対して「はい」と回答した者を本調査の対象とした。また,災害が発生したときに,一人で避難することが困難で支援が必要な幼い子ども,高齢者か障がい者と同居していると回答した者を対象とした。スクリーニング条件にあてはまる回答者に対して,後日あらためて電子メールを送信して本調査への参加を求めた。なお,提示された情報をきちんと読んでいたことを確認する問題を調査の最後に実施し,その問題に正解した者のみを分析の対象とした。最終的に563名(20歳から86歳,M = 51.5 ( SD = 12.06))からデータが得られた。

手続き
 調査協力者は,性別2(男・女)×リスク情報2(高・低)×避難情報3(統制・要支援者と避難・快適な避難所)の12条件のいずれかの条件にランダムに割り当てた。実験では,まずリスク情報を文章で提示した。高リスク条件では「大雨特別警報が出ており重大な危険が差し迫った異常な状況であること」などを,低リスク条件では「大雨警報が出ており河川の増水や氾濫による重大な災害が起こる恐れがあること」などを伝えた。次に,スマートフォンの画面のイラストによって避難情報を提示した。統制条件では「避難指示」というメッセージのみを,自己スキーマに一致する情報としては,「避難指示」に加えて「高齢者や障がい者と一緒にお住まいの方は,速やかに避難を開始してください」というメッセージ(要支援者と避難条件)を,また避難所の快適性に関する情報としては,「新しく整備された避難所では,プライバシーも確保され,高齢者や障がい者の方も,安心して快適に過ごすことができます。速やかに避難を開始してください。」というメッセージ(快適性条件)を提示した。メッセージの提示の後,このような状況における避難行動意図,および状況の認知や実験操作の確認のための項目などへの回答を7件法で求めた。

結果と考察
 分散分析の結果,性別の主効果(F (1,551) = 5.26, p<.05, η2=.009),および性別×避難情報の交互作用(F (2,551) = 4.56, p<.01,η2=.016)が有意であった。男性は「要支援者と避難」というメッセージや「新しい避難所が快適である」というメッセージによって避難意図が高まるが(Figure 1),女性では高まらなかった。男性では自己スキーマや避難所の快適性に関する情報が避難行動意図を高めるが,女性ではそのような影響がないという結果は,元吉(2017)と一致していた。これは避難行動に対するコスト認知の影響によるものであることが示唆された。

謝辞 本研究は,2018年度関西大学若手研究者育成経費において,研究課題「避難情報の表現の違いが避難行動意図に与える影響」として研究費を受け,その成果を公表するものである。

キーワード
災害/避難/説得メッセージ


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