発表

3C-011

「将来の暮らしの志向性」測定指標作成の試み
地方中心都市圏における若者の定住・就業促進に向けたニーズ等の抽出のために

[責任発表者] 遠藤 忠:1
[連名発表者・登壇者] 禹 在勇#:1
1:長野大学

 目 的
 長期的な人口減少が予測されている地方中心都市圏(ここでは長野県上田地域)において,若者の地域定着を促すための方策を見出すことが喫緊の課題となっている。そこで本研究では,若者の移住・就業ニーズ等を抽出するための「将来の暮らしの志向性」測定指標を開発することを目的とした。

 方 法
 調査対象者 上田地域に所在する高等教育機関(4大学)の在籍学生(総数2,961名)を調査対象であった。このうち1,294票が回収され(回収率43.7%),基本属性および主要な分析項目において未回答等のあった111票を除いた1,183票を分析対象(有効回答率91.4%)とした。分析対象者の平均年齢は19.9歳(SD=1.4),性別構成は女性693名,男性490名であった。
 調査内容 (1) 性別,年齢,所属大学,出身地等の基本属性を問う項目,理想の就業職種,(2) 当該地域への定住・移住意向を問う1項目(「1 : 1年次と現在も,「上田地域へ定住(移住)したい」と思っている。」,「2 : 1年次は上田地域へ定住(移住)したいと思わなかったが,現在は上田地域へ定住(移住)したいと思っている。」,「3 : 1年次は上田地域へ定住(移住)したいと思っていたが,現在は上田地域へ定住(移住)したいと思わない。」,「4 : 1年次も現在も,上田地域へ定住(移住)したいと思わない。」の4つの選択肢から,最も当てはまるものを1つ選ぶように求めた。)(3) 将来の暮らしの志向性に関する23項目を新たに作成した(5件法「1 : そう思わない」~「5 : そう思う」)。
 手 続 き 各大学において,主に講義等の授業時に留め置き法による調査を実施した。具体的には,封入されたアンケート調査票を一人ずつ配布するとともに十分な説明を行った後,各自のペースで回答した。回答が終了したらすみやかに厳封し事務局担当者に返却するように求めた。アンケート調査の所要時間は約30分であった。
 分析方法 (1) 全ての回答について単純集計を行った。(2) 将来の暮らしの志向性に関する23項目についてG-P分析を用い項目の選択を行うとともに,信頼性と妥当性の検討を行った。
 倫理的配慮 本研究を遂行するにあたって長野大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:2018-009K)。調査票において,本調査は無名式であること,データの管理を厳重に取り扱うことを調査票に明記するとともに調査実施時に口頭で説明し,回答と提出をもって研究への同意とみなした。

 結 果
 1. 単純集計結果 (1) 出身地域の内訳は,長野県内730名(61.8%),長野県外451名(38.2%),さらに長野県内出身において上田地域206名(全体比17.4%),上田地域以外524名(同44.4%)であった。(2) 理想の就業職種の上位5業種は,医療・保健・福祉業282名(23.9%),公務194名(16.4%),教育・学習支援業116名(10.0%),製造業114名(9.7%),卸売・小売業67名(5.7%)であった。(3) 当該地域への定住・移住意向は,825名(71.6%)が入学時から一貫して当該地域へ定住(移住)の意思をもっていなかったが,一方で175名(15.2%)が一貫して定住(移住)の意思をもっていた。また,153名(13.2%)がいずれかに意思変更していた。
 2. G-P分析等の結果 将来の暮らしの志向性に関する23項目についてGP分析を行った結果,t検定において,23項目全てにおいて合計点高群は低群に比べて有意に得点が高かった。この23項目についてα係数を算出した結果,α=.777であった。さらに妥当性の検討について,当該地域への定住・移住意向の回答(4選択肢)を「上田地域へ定住(移住したい)」「上田地域へ定住(移住)したいと思わない」に改変し,これを独立変数,将来の暮らしの志向性23項目合計得点を従属変数としてt検定を行った結果,有意差が認められた(t(496)=11.482, p < .01)。

 考 察
 GP分析において見いだされた「将来の暮らしの志向性」に関する23項目の信頼性係数の結果(α=.777)から,内的妥当性の高さが確認され,当該地域への定住・移住意向が「将来の暮らしの志向性」を予測する可能性が示唆されたことから,若者の移住・就業ニーズ等を抽出するための測定指標として有用である可能性が推察された。今後は,「将来の暮らしの志向性」測定指標23項目について,因子構造についてさらに検討していく必要があると考えられた。

 本研究は,平成30年度長野県地域振興推進費事業「若者の定住・就業促進策の研究」(長野県上田地域振興局;委託研究推進グループリーダー:禹 在勇)の成果の一部である。

キーワード
若者の移住・就業/将来の暮らしの志向性/地方中心都市圏


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