発表

3C-009

ヘルシー・ディペンデンシーと援助要請風土認知が援助要請におよぼす影響

[責任発表者] 池田 亜紗:1
[連名発表者・登壇者] 磯崎 三喜年:1
1:国際基督教大学

目 的
 自立欲求,すなわち問題を自分で解決したい,もしくはすべきだという信念が,援助要請を抑制する要因として強い影響力を持つことが明らかにされている(Wilson & Deane, 2012)。そこで池田(2018)は自立と依存のバランスと,援助要請の関連を検討し,自立と依存のバランスがとれているヘルシー・ディペンデンシー(Bornstein, 1992)が援助要請を促進する要因であることがわかった。
ヘルシー・ディペンデンシーと援助要請の関連には,「周囲の人々が援助要請を許容的にとらえていると思うか」という,集団における援助要請風土認知が影響すると考えられる。そこで本研究は,ヘルシー・ディペンデンシーと援助要請風土認知が援助要請におよぼす影響について検討した。援助要請の促進には,ヘルシー・ディペンデンシーが高いかどうかという個人内要因だけではなく,援助要請が受入れられやすい環境があるかどうかという環境要因の両方が関連していることが予測される。
方法
 大学生71名(男性21名,女性48名,その他2名,Mag e =19.77 , SD = 0.91)のデータを分析した。質問紙の構成は以下の通りであった。
(a)自立と依存のバランス:The Relationship Profile Test(Bornstein &Languirand, 2003)日本語版を用いた。過剰依存,過剰自立,ヘルシー・ディペンデンシーの3つの下位尺度から成る。日本語訳は専門家にバックトランスレーションを依頼し,原文と相違ないことを原著者に確認済みである。
(b)援助要請風土認知尺度:本田・新井・石隈(2011)の被援助志向性尺度をもとに作成した。大学における援助要請に対する肯定的風土認知6項目,否定的風土認知7項目から成る。
(c)援助要請意図:永井(2010)の援助要請意図尺度を用いた。「対人関係」「恋愛・異性」「性格・外見」「健康」「進路・将来」「学力・能力」という6種類の悩みについて,もしそのことで悩み,一人で解決できないとしたら,家族,友人,学生相談やカウンセラーなどの専門家のそれぞれに対して,どの程度相談すると思うかを尋ねるものである。教員も学生の支援において重要な役割を担っていると考え,本研究では教員を含めた4つのサポート源を提示した。
結 果
 The Relationship Profile Testの下位尺度および援助要請風土認知を独立変数,援助要請意図を従属変数とした重回帰分析を行った(Table 1)。ここでは,サポート源別の分析結果を示す。家族に対する援助要請意図では,ヘルシー・ディペンデンシーと援助要請風土認知ともに正の関連を示し,友人に対する援助要請意図では,ヘルシー・ディペンデンシーのみが正の関連を示した。過剰依存と過剰自立については,いずれのサポート源においても関連を示さなかった。専門家と教員に対する援助要請では,重回帰分析の説明率は有意ではなかったが,援助要請風土認知がそれぞれ正の関連を示した。したがって,援助要請にはヘルシー・ディペンデンシーと援助要請風土認知の両方が関連しているという仮説は一部支持された。
考 察
 友人には,援助要請風土認知ではなくヘルシー・ディペンデンシーが援助要請を促進することが示された。インフォーマルで親密なサポート源に対しては,環境要因よりも個人内の要因の影響が強いことが考えられる。逆に,カウンセラーなど専門家や教員に対しては,ヘルシー・ディペンデンシーではなく援助要請風土認知が援助要請を促進することが示された。専門家や教員への援助要請は,家族や友人への援助要請より少ないものの,援助要請に許容的な環境作りや声がけをすることで,サポート源として利用されやすくなる可能性がある。家族に対する援助要請は,援助要請風土認知が「学校の人々がどう思うか」を尋ねているものであるにもかかわらず,ヘルシー・ディペンデンシーと援助要請風土認知の両方が正の関連を示した。その背景には,幼少期におけるヘルシー・ディペンデンシーの形成に養育者の影響があることが関係している可能性がある(Bornstein et al., 2003)。
本研究の限界として,サンプル数が少ないことや,援助要請風土認知の得点分布が正の方向に偏っていることがあげられる。今後さらなる検討が必要である。
引用文献
Bornstein,R.F.,& Languirand,M.A.(2003). Healthy dependency. New York: Newmarket.
Wilson, C. J., & Deane, F. P. (2012). Brief report: Need for autonomy and other perceived barriers relating to adolescents’ intentions to seek professional mental healthy care. Journal of Adolescence, 35, 233-237.
池田 亜紗(2018).青年期における依存-自立のバランスと援助要請が学業成績および適応感に及ぼす影響,日本心理学会第82回大会発表論文集

キーワード
援助要請/援助要請風土/ヘルシー・ディペンデンシー


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