発表

3C-008

正座および椅坐位に対する印象の違い

[責任発表者] 福市 彩乃:1
[連名発表者・登壇者] 菅村 玄二:1
1:関西大学

目 的 礼儀とは対人関係を良好なものにするための行為の規範であり(文沢・吉田,1970),そのため礼儀正しさにも言語的なものと非言語的なものが存在する。前者は敬語が代表的である。一方で,後者には目線の使い方や会釈などがあげられる。日本には礼儀正しい座り方として正座があり,改まった場面や芸道の場では正座が求められる。
 内装の西洋化に伴い,椅子に座ることが一般化した今日であるが,正座はなおも礼儀正しいという印象がもたれているのだろうか。これまでの姿勢の印象の研究では,前傾姿勢と後傾姿勢や(大西,2010),足を組んで胸をそった姿勢と足をそろえて背中を丸めた姿勢での検討はされてきたが(McGinley, 1975),正座を対象にしたものは見受けられない。そこで本研究では,正座と通常の椅坐位とを比較し,礼儀正しさやその他の印象に違いがあるか,調査を行った。
方 法 大学生79名を対象に質問紙調査を行った。質問紙は,ページの上部に,男性と女性が椅坐位か正座の姿勢をとった写真を載せ,その下に7件法(1:とても,2:わりと,3:やや,4どちらでもない,5:やや,6:わりと,7:とても)のSD項目を置いて,姿勢のイメージとして当てはまるものを尋ねた。もう片方の姿勢についても,次ページで同様に尋ねた。最後に年齢,性別などを尋ねた。写真は表情が判別できない程度に顔をぼかし,姿勢の順は参加者間でカウンターバランスされた。SD項目は「覚醒」「自信」「礼儀正しさ」「真面目さ」の4つのカテゴリを仮定し,それぞれ3項目以上になるよう鈴木・春木(1992)を参考に選定,もしくは自作した形容詞対16項目を用いた。
結 果 回答に不備があるものを除いた73名(平均年齢18.5歳,SD = 0.62)を分析対象とした。SDプロフィールはFigure 1のとおりである。各形容詞対をカテゴリごとに平均した値について1要因参加者内分散分析を行ったところ,正座のほうが覚醒カテゴリ(正座:M = 5.76, SD = 0.77;椅坐位:M = 5.52, SD = 0.80;p = .03),礼儀正しさカテゴリ(正座:M = 5.75, SD = 0.81;椅坐位:M = 5.06, SD = 1.01;p < .001)が高く,自信カテゴリ(正座:M = 3.66, SD = 0.75;椅坐位:M = 4.01, SD = 0.47;p < .001)が低かった。真面目さカテゴリについては,有意差が見られなかった(正座:M = 5.00, SD = 0.68;椅坐位:M = 4.87, SD = 0.70;p = .17)。
考 察 正座は覚醒しており,礼儀正しいが,自信はあまりないという印象をもつことが明らかになった。覚醒している印象については,正座をすると眠気が抑制されるという知見と関連するかもしれない(福市・山本・菅村,2019)。経験的に正座をすると目が覚めることから,覚醒的な印象が紐づいた可能性があるだろう。
 礼儀正しい印象については予測された通りであった。正座は「かしこまる」態度を表明する座り方である跪拝に由来することから(矢田部,2018),伝統的に礼儀正しい座り方とされており,その感性が今日にも引き継がれていると考えられる。自信がない印象については,椅子の上に腰かける椅坐位と比較して,床に直接座る正座の方が頭部の位置が低くなるために,相手より下の立場にあると解釈されることが理由かもしれない。春木(2016)は,動物が体を低くして相手の怒りをなだめ,攻撃行動をやめさせるリリーザーと,人間が挨拶として身を低くすることの類似点を指摘している。頭部の位置の低さが劣勢を表すというプリミティブな意味合いが今日の人間にも引き継がれていたために,今回のような結果となった可能性がある。
 本研究では質問紙を用いて顕在的なイメージについて調査を行ったが,今後,潜在連合テストなどを用いて潜在的なイメージを探ることも可能であろう。また,参加者自身が正座の姿勢をとっているときに自己評価を行ったり,同様の,または異なる姿勢の相手への評価を行ったりすることで,新たな知見が得られるかもしれない。
引用文献福市彩乃・山本佑実・菅村玄二(2019).授業場面での正座が眠気,疲労,認知機能に及ぼす効果――あぐらと椅坐位との比較―― 日本教育工学会論文誌,42,369-377.

キーワード
座位姿勢/印象形成/日本文化


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