発表

3B-012

心理学に対して抱かれているイメージと期待(5)
イメージ・期待・評価が学習場面での意識に与える影響

[責任発表者] 小浜 駿:1
[連名発表者・登壇者] 高田 治樹:2
1:宇都宮共和大学, 2:目白大学

目 的
心理学は,学問において実際に追求されている内容と一般的,通俗的なイメージが乖離した学問であると多くの研究で指摘されている(e.g. 松井, 2000)。
小浜・高田は(2018)は,こうした乖離が大学入学後の心理学学修に影響を与えると考え,心理学に対するイメージと実際に学べる専門的な心理学とのずれを測定する心理尺度を作成した。本研究では,ずれが実際に学習行動に与える影響を検討することを目的とし,学習を先延ばししている場面について検討を試みることとした。

方 法
調査対象
関東圏内の1つの国立大学と4つの私立大学の大学生374名(男性125名,女性240名,その他3名,無回答6名。平均年齢は19.66歳±2.73)を対象とした。
調査時期・調査方法
2018年6月から7月に集合形式で自記入式の質問紙調査が行われた。
調査内容
心理学に対するイメージ,期待,評価 小浜・高田(2018a)の尺度を用いた。この尺度は,a)大学入学以前に抱いていた心理学に対するイメージ(以下「イメージ」),b)大学入学時に心理学に期待していたこと(以下「期待」),c)実際に心理学を学んだときの評価(以下「現実」)の3種類について,5領域を26項目で測定を求めるものである。“1.あてはまらない”から“5.あてはまる”の5件法で測定を行った。
先延ばし 小浜・高田(2018b)の先延ばし意識特性尺度短縮版9項目を用いた。状況の楽観視,先延ばし中の肯定的感情,先延ばし後の否定的感情の3側面が測定される。
その他の測定変数 性別や年齢などに加え,心理学を専攻とする学部に所属するか否かについて尋ねた。

結 果 と 考 察
小浜・高田は(2018a)の探索的因子分析結果(「カウンセリング」因子,「オカルト」因子など5因子)に従って確証的因子分析を行った。イメージ,期待,評価のそれぞれで探索的因子分析と同じ因子構造を仮定して分析を行ったところ,適合度指標は,イメージ(CFI=.796,TLI=.763,RMSEA=.091),期待(CFI=.820,TLI=.791,RMSEA=.088),現実(CFI=.830,TLI=.803,RMSEA=.086)と,適合度に少し問題のある結果ではあったが,各因子の因子得点を尺度得点として分析を進めることとした。
心理学に対するイメージ等が先延ばしをしている際の意識に与える影響を検討するため,各因子におけるイメージ,期待,現実およびそれぞれの交互作用項と,専攻(0=心理学専攻,1=非専攻)を独立変数とした重回帰分析を実施した。分析の結果,カウンセリング因子におけるイメージ,期待,現実を投入し,先延ばし後の否定的感情を従属変数とした分析で多重共線性が疑われる(VIF最大値=23.68)など,複数の分析で多重共線性の問題が生じた。各因子におけるイメージと期待の相関が非常に高かったため(rs=.76-.84),イメージを除外し,期待,現実,専攻ならびにそれぞれの交互作用項を独立変数として分析を実施することとした。
「カウンセリング」因子における期待と現実を投入し,先延ばし後の否定的感情を従属変数とした分析では標準偏回帰係数に有意な項が見られたものの,有意な決定係数が見られた分析はなかった。他の因子においても同様に,先延ばし後の否定的感情および状況の楽観視を従属変数では,決定係数が有意となり,かつ標準偏回帰係数でも有意な結果は得られなかった。
先延ばし中の肯定的感情を従属変数とした分析では有意な結果が見られた。まず,「科学アプローチ」因子における期待と現実や交互作用項等を投入した分析では(R2=.045, p<.05),期待が高いほど先延ばし中の肯定的感情が高まることが示された(β=.234, p<.05)。「社会的技能」因子における期待や現実などを投入した分析(R2=.43, p<.05)でも同様に,期待が高いほど肯定的感情が高まることが示された(β=.248, p<.01)。さらに,期待と専攻の交互作用項(β=.-174, p<.10)において有意な傾向が見られた。
交互作用項の単純傾斜について検定した結果,心理学専攻では社会的技能に対する期待が高いほど先延ばしが高まる一方で,非専攻では傾斜は有意ではなかった。(Figure1)。すなわち,心理学専攻では,大学入学後に期待通り社会的技能(恋愛や子育て)に関する心理学を学べるほど,学習していないときに肯定的感情が高まりやすいことが示された。

引用文献
松井三枝(2000). 富山医科薬科大学一般教育 23, 63-68.
小浜駿・高田治樹(2018a). 日本心理学会第83回大会
小浜駿・高田治樹(2018b). 日本教育心理学会第60回総会

キーワード
心理学イメージ/心理学への期待/現実の心理学評価


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