発表

3A-021

対応に苦慮する保護者の特徴 2
〜その園児の特徴と親子関係〜

[責任発表者] 田村 和子:1
[連名発表者・登壇者] 井上 果子:1
1:横浜国立大学


【問題と目的】
 保育園の利用者の中には,様々な理由や事情により,十分に親機能を果たすことが難しい親が存在する。社会情勢や法制度の変化により,保育士にはより専門性を生かした心理的な支援・ソーシャルワーカー的対応が求められる一方で,多くの保育士が保護者への対応に苦慮する例が見られる。また,こうした親を保護者にもつ園児の日常の様子について,保育の現場では気になる点が多いことが共有されつつあるが,客観的な評価基準も具体的な行動指針も示されていないため,現状では個々の保育士に対応が一任されている。保育園で対応に苦慮する保護者の特徴や行動を把握し,親子関係を査定することができれば,保育士の困惑が減少し,より有用な保育サービスの改善と提供につながると思われる。
 本研究では,井上ら(2017)の「対応に苦慮する保護者を保育士が評定するチェックリスト」に基づき,「対応に苦慮する保護者の特徴」「対応に苦慮する保護者を親にもつ園児の特徴」を明らかにし,相互の関係を検討することを目的とする。
【方法】
質問紙の作成:井上・清水他(2017)をもとに,「対応に苦慮する保護者の園児の様子(27項目,自由回答1項目)」を尋ね「1.あてはまらない」〜「5.あてはまる」の5件法で回答を求めた。質問紙調査実施方法については,「対応に苦慮する保護者の特徴 1(井上・田村)」と同様である。
【結果と考察】
回答者の属性:男性27名,女性386名,不明1名。41〜55歳までの保育士が57.4%を占め,平均経験年数は,21.7年であった。
因子分析の結果:各質問群からフロア効果・天井効果が認められた項目を除外し,因子分析を行った。主因子法・プロマックス回転により3因子構造を採用することとした(表1)。フロア効果が認められた質問項目は「園児の食が細く,食べることに意欲や関心が薄かった」「園や他の園児の物を盗んだり,隠したりしていた」であった。天井効果が認められた項目はなかった。フロア効果が認められた項目は本研究における尺度構成には含めなかったが,保護者と同様,反社会的な要素が含まれている項目が認められる。実際にこのエピソードに気づいた場合には,特に留意すべき項目であると思われる。
園児の特性:第一因子は粗暴さ・落ち着きの無さ・不安定な気分を持つ様子から構成され,第二因子は表現力や意欲に乏しい様子が示され,第三因子は生活面で必要なケアが不足している様子が伺われる記述となっている。そこで各因子を「衝動的」「抑制的」「ネグレクト的」と命名した。各因子は中程度の相関関係にあることが示された。
下位尺度得点の算出と相関係数:「対応に苦慮する保護者の

特徴」「対応に苦慮する保護者の園児の特徴」に関する因子分析の結果から,各因子を下位尺度と見なし回答を単純加算して尺度得点を算出した。算出した尺度得点を用いて相関係数を求めた(表2)。各尺度はいずれも中程度の相関を示しており,相互に関連していると考えられる。園児の特徴のうち,「衝動的」得点と「抑制的」得点の相関係数は.709と高い。ネガティブな気持ちを言語で表現することができず,活動や遊びを楽しめない姿が示されていると推測される。保護者が否定的養育態度だけでなく,園を含めた外界への被害感や怒りに基づく態度を示すと,園児は自らの気持ちを安全に表現することが不得手になり,結果的に子どもの心の発達が阻害される可能性がうかがえる。
【引用・参考文献】
井上・清水他 2017 対応に苦慮する保護者を保育士が評定するチェックリストの作成の試み 横浜国立大学大学院教育学研究科教育相談・支援総合センター研究論集第17号
厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課 2017 平成30年度保育所保育指針 厚生労働省サイト
【謝辞】本研究は平成30年度横浜国立大学教育学部後援会研究助成金の助成ならびに,2019年度精神分析武田こころの健康財団の助成を受けた。

キーワード
対応に苦慮する保護者/保育士/親子関係


詳細検索